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死んで初めてVIP待遇  作者: 米倉ブッシュ
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第三話

「じゃあ、今日からここに住んでね」


 シリウスに連れられやってきたのは、大きな一軒家だった。


「お、おう、、、」


 ちなみにシリウスはいろいろあって、もう元気だった。

 でも今の俺は、そんなことよりもっと大きな事実に頭を混乱させていた。


「な、なあシリウス。ここって、死後の世界なんだよなあ」


 シリウスがこてんと首をかしげる。


「そうだけど、どうかしたの?」


「うんまあ、大したことじゃないんだけど、ちょっとイメージが違ったっていうか、なんていうかな、、、」


「え、なにかおかしなことでもあったかしら?」


「おかしなことっていうかなんというかな、、、」


 うん、まあ、ほんとになんていうかね、、、


「なんで亜人が着物来て茶道教室から出てきたりコンビニの店員やってたりすんだよ!ってかここ普通に街じゃねえか!!」


「ああ、そのことか」


 長くなるのでまとめると、シリウスの話では地獄に堕ちたものは税金という形で賠償金を納め、稼いだ金で生活するらしい。

 大抵は親戚や友達などが一緒に住み、家族という形をとっているらしいが。

 で、天国に行ったものは特に何もせずとも生活でき、遊んで暮らせるらしい。

 ちなみに町並みは、思いっきり日本。別に寺があるとか人があるとかじゃないが、書いてある文字は日本語、言葉も日本語だった。

 だが、このことをシリウスに尋ねると、人は死んだ時点でこの世界の共通語を習得するが、それに気づく人はいないためすべてが母国語に翻訳されているように感じるんだとか。


「とまあ、今日からここが、君の家になるわ。シェアハウスって形で、職場の人たちが何人かで暮らしてるの。私も住んでいるから、よろしくね」


 ガチャリと鍵を開けながら、そう説明してくれる。

 扉を開けるとそこには少し広めの玄関があり、いくつか靴があった。

 廊下をまっすぐ行き、右に行った先に一つ扉があった。中は明かりがついている。


 引き戸の扉をガラガラッと音を立てて開けると、そこには広いリビングが広がっていた。


「お、お帰りシリウス。今日は遅かったねぇ」


 俺達の目の前には、ビール缶を持って冷蔵庫に向かう男性が一人。

 大きな金色の目に少しくるっとパーマがかったした同じく金色の髪。ほかにも説明したいけどボキャ貧の俺には無理です。

 とりあえず顔は抜群にいい、たいへん幼さの残るほほえみをシリウスに向ける人がいた。

 しかし今の俺は、顔の良さなんかよりよっぽど気になることがあった。


「ただいまアルフさん。お酒、飲みすぎちゃだめだよ?」


「わかってるよ。ボクはほろ酔いくらいが好きだからね。で、君の後ろにいるその子はさっき電話で言ってた子かい?どうやらボクを熱く見つめてるみたいだけど、ボクにはそっちの趣味はないんだ、ごめんね」


 話題の矛先が俺に向く。ふむ。気になることがあるが、とりあえず、言いたいことを一つ言わせてもらおうか。


「子供は酒なんて飲んじゃだめだ。これは没収する」


 そう。さっきからシリウスとしゃべりつつも冷蔵庫のなかに酒のつまみをごそごそ探し、やっと見つけたチーズを掲げて頬を綻ばせているのは、幼さが残っているどころかまんま小学生くらいの男の子だった。

 アルフと呼ばれた男の子からひょいとビールをとりあげると、男の子は「ああっ」と声を上げて悲しそうな顔をする。


「シリウスもどうしたんだよ。子供が目の前で酒飲んでるってのに止めないなんて」


 するとシリウスが、何言ってんだこいつといったような表情でこちらを見てくる。この顔腹立つな。

  しかししばらく考えた後、何かに納得したような顔になり、口を開いた。

 ちなみにシリウスが考えている間、アルフがぴょんぴょんとはねてビールを取り返そうとしていた。


「この人は小人族の、アルフさんよ。そっか、小人族に初めて会った人がみんなこうなるの、忘れてたわ。」


「は?小人族?」


 何言ってんだこいつ。今度は俺がそんな表情がしていると、今度はアルフが涙目で吠えかかってきた。


「そうだっ、ボクは25だぞっ!ボクのビール返せよ!」


「は!?25!?どう見ても子供だろ!」


「本当よ。この人の名はアルフ・バートン。私よりも年上なんだから。ちなみに私たちの上司よ」


 そこで、あっけにとられていた隙にビールを奪い返されてしまった。


「じょ、上司...?」


「ふんっ。ボクを子供扱いするなんて、いい度胸だっ。明日から散々こき使ってやるからなっ」


 ちっせぇ。いやもう見た目だけじゃなくて中身もまんま子供じゃん。

 とは言っても俺の上司にあたる人らしいし、日本人たる俺、織原空良はきちんと目上の人をうまく扱う...じゃなくて、うまく立てる術を知っているのだ。


「悪かったよ子供扱いして。今度何かお菓子買ってあげるから、許してくれ」


「お、お菓子っ?ふ、なかなかできたやつじゃないか。じゃあ、今日のところは許してやろう」


 『お菓子』というフレーズが出た瞬間、あからさまに機嫌がよくなった。やっぱり子供じゃないか。


「子供...」


 横からシリウスのつぶやきが聞こえたがめんどくさくなるのでスルー。


「俺は、織原空良っていうんだ。今日からここに住むことになった。俺のことは、ソラでいいから」


「了解、ソラ。ボクは、ここに住んでるアルフ・バートンって言うんだ。ボクのことも、アルフでいいよ。よろしく」


 アルフが手を差し出してくる。

 俺はその手をぎゅっと握り返した。


「ああ、よろしく」


 話が終わったのを確認して、シリウスが言う。


「じゃあ話もまとまったことだし、一度各部屋と、あなたの部屋に案内しましょうか」


 それを聞いて、俄然テンションが上がってきた。自分の部屋か。これからの俺の城となる場所だ。趣味で固めるか、オシャレな感じに整えるか。


 シリウスに案内され一旦リビングを出て廊下を進み、各部屋を確認して回る。

風呂にはリビングから直接いけるようだ。その横にトイレ。キッチンはリビングとつながっている。

 設備はきれいだし、家も大きい。部屋は広いし、なかなか住みやすそうだ。

 玄関正面にある階段を上っていくと、そこには四つ、住人の部屋があった。

 もう一人住んでるってことか?まあ、とりあえず今のところはその話題は放置して、一旦部屋で休もう。

 そう考え案内された部屋のドアを開けると、



部屋の中央に、鏡の前でポージングしている巨大なペンギンがいた。



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