14/35
バリア13
このメールを送信すると、執筆中小説にこの内容が追加されます。
午前8時15分。
『あったかホーム』の扉を開けると、栗林が玄関入口で待ち構えていた。
「あら?」
とぼけた表情と、よそよそしい態度で、栗林は対応した。
「おはようございます」
「お早う」
目深にかぶっていた帽子を取り、頭を下げると、いつも通り外履から内履に履き替え、中へ入ろうとした。その途端、
「ちょっといい?」
と、栗林が私の腕を掴んだ。
「ちょっといい?社長をお呼びしますので、仕事はいいから、待っててもらえる?」
昨日と同じ、個室で待つよう指示された。
暖房も電気もない薄暗い個室で、寒さに震えながら椅子に腰掛けていた。
昨日は取らなかったが、今日は、テーブルの上にノートと鉛筆を用意した。
純氏からの助言で、鬼頭との会話を逐一、メモすることにしたのだ。
30分待っても、鬼頭は現れなかった。その間、同僚たちは居間で日課の掃除をしているようだった。
「桃ちゃん、一体何をしたの?」
「さあ」