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寝室に現れたアルフリード

夜中、ふと何の気なしに目を開けると、そこに見知った顔が覗きこんでいた。


え?アル?どうしてここにいるの?!!

起き上がって声を出そうとしたら口に手を当てられて、反対側の手の指でしぃっというポーズをした。

私は意図を理解して、無言のまま頷く。

アルフリード王子が囁くような小さな声でいう。


「すまない。こんな夜中に・・・。ただサクラ、お前に話しておきたいことがある」


アルフリード王子は転移魔法を使って、アイシス様の屋敷にこっそり転移してきたらしい。


「なんですか?アルフリード王子」


私が神妙な面持ちでこう答えると、彼は辛そうな顔をしていった。


「アルフリード王子と呼ばないでくれ、二人きりのときはアルでいい。いつもそう呼んでいたろう。格式ばった話し方もやめてくれ」


とはいっても、王子様だよ!?平民の私がおいそれと見る事だって叶わないかもしれない偉い人だよ!それは無理かも・・・

困ったような顔をした私に、相変わらずの無表情で続ける。


「サクラはオレの本来の姿を見たことはないのだろう?」


「はい」


本来の姿って・・・どういうことだろう。

今の姿だって相当違和感がある。いつもの黒髪黒目のアルが、王子然としたかっちりした衣装を着ているからだ。


実はものすごく不細工なでっぷりしたおじさんなのか?!!

アルフリード王子が何か呪文を唱えたかと思うと、一瞬でその漆黒の髪が光り輝く金髪に、暗闇より黒い目が、空や海よりも深い青色に変わった。

こんなに美しい人を私は見たことが無い。しかも王子の白っぽい衣装と相成って、まるで映画の中から抜け出てきた人のようだ。

なんだか顔も鋭い眼光から、柔和な瞳に変わった気がする。もちろんその瞳の奥からは、抜け目の無い、上に立つ者独特の強い光が見え隠れしている。


「これが・・・アルフリー・・アルなのね」


私はまたアルフリード王子と言いそうになったのを、訂正した。


「ああ・・・」


「ぷっ、あははは」


私は思わずふきだした。


「ふふっ。本当のオレって言うからすごいのを想像したけど、全然変わらないよ。その無表情なところも、優しいところも。あ・・・でも、あの針金を抜かれたときは、悪魔だって思ったけどね。いっておくけどあれはアクセサリーだから!!」と、嫌味の一つもかませておく。

いやホント。あれは史上最強に痛かった。


「でもアルが王子でよかった。この国はこれからもっと良くなっていくよ。あ・・私のいた世界での情報が役に立つなら言ってね。勉強はおじいちゃんにみっちり仕込まれたから、結構成績も良かったんだよ」


胸を張っていった。

アルはいつもの無表情を返上したかのような、一度も見たことの無い笑顔で私を見つめた。

ベットの上で見つめあう状態になる。今、気がついたけど、距離。すごく近い。


「いや・・あの・・話ってこれのこと?」


雰囲気に耐えられなくなって、早く帰れとばかりに聞いた。


「そうだな。もっとあったような気がするが、どうでも良くなった」


「そう・・・」


アルが私の髪を、耳のほうから撫でるように手に取ると、自身の唇に押し当てた。


「この黒髪がサクラ本来の色なんだな。美容魔法には気がついていたが、まさかこんなに綺麗な黒色だとは思ってなかった」


すっごいキザな台詞だけど、似合いすぎて突っ込みどころが無い!?


「あ・・ありがとう。アルのほうこそすごく綺麗な金髪だよね」


私は動揺を隠すように、早口で言い切った。

しばらくそのままの状態でいた後、ゆっくりとアルがベットから離れた。

転移魔法の為の魔力を練るために、両手を持ち上げて術式を展開させる。


「眠りの邪魔をしてすまない。それとあのアクセサリーはちゃんと、取っておいてあるから今度持って来る」


「・・・・・・・!!!!」


そういって、にやっといたずらっ子のような笑みを浮かべてから、私が反論する暇も与えずに消えた。


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