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腕輪の秘密

体が重い。今何をしているんだっけ?

そうだ、日本高校剣道都大会の決勝戦の最中だ。私は体育館の中にいて、周りにはたくさんの見物客や応援客で埋め尽くされている。何百という目が、私の一挙手一投足を見守っている。

でもどうしよう。剣道の試合中なのに、両腕が上がらない。

このままでは負けてしまう。近くに陣取っている部員達の、祈るような顔が目に入ってくる。

だめだ、このままじゃ負けてしまう。


「・・・ちょっと待って、審判員さん試合中止にしないで!!」


自分の声で目が覚める。あ・・・これ夢だ。あれ?私ベットで寝てるの?


これ誰のベットだっけ。


私は見知らぬ天井を見つめ、記憶を引き寄せる。


「「サクラ気がついたのか(ですか?)?」」


すると突然目の前に現れた二つの顔に、自分の今の状況をすべて理解した。

また、見事にハモってる。


「私、どのくらいの時間、気を失ってたの?」


「「大体1刻くらいだ(です)」」


体が重くて、動かせないので顔だけ向きを変えて聞く。

私は誰かの家のベットに寝かされ、その傍らにはアルフリード王子とユーリス様が椅子にこしかけている。あろう事かそれぞれ私の手を握っているのに気がつく。


道理で両腕が重いと思ったよ。


「ごめんなさい、迷惑をかけて。・・・あの・・・私、体を起こしたいのだけれど・・・」


その手を離さないと、起き上がれないでしょ!!左腕の様子も気になるし・・・。

すると一番近くに座っていたアルフリード王子が、私の肩に手をかけ上体を起こしてくれようとした。

うひゃー。王子様にそんなことされると、もったいなさ過ぎていたたまれない。

なんとか目で制して、お断りする。そして自力で起き上がる。

よし、何とか大丈夫そうだ。左腕には包帯が巻かれていて、痛みはあまり感じない。

二人は無言で私を見つめたままだ。

そして私の手は未だに彼らに握られたまま。


あーー。きっと、呆れてるんだ。時が止まっているのに怪我するなんて、あんなに剣には自信があるような事を言ってたくせに、実は運動音痴かって思ってるんだ。


いたたまれなくなって、目をそらした部分にアルフリード王子の左手があって、その腕輪に刻まれた文字に目を奪われた。


日本語だ!!これ日本語で書いてある。


「ちょっとアルフリード王子!!その腕輪を見せてくれませんか?そこに書かれているのは、私の国の言葉なんです!!」


突然手をつかまれて、アルフリード王子とユーリス様は驚いた様子だったが、すぐに気を取り直して教えてくれた。


「これは、国王陛下がオレが成人した日に贈ってくれた祝いの品だ。これは文字ではなく模様だと思っていたが、お前の国の文字だったなんてな。なんと書いてあるのか読んでくれないか?」


私はそっこうで頷いた。これ日本語だよ!!でも彼らには模様に見えるんだ。

彼がその手から腕輪を抜いた、その瞬間に信じられないことが起きた。

え?


私は一瞬わけが分からず、瞬きも忘れてその光景を眺めていた。

左手首からその腕輪を抜いたとたん、腕輪を右手で持ったままアルフリード王子が固まった。

彼の時間が止まったのだ。



「これは・・・どういうことなんだ?」


ユーリス様が動揺を隠し切れないまま、動かなくなったアルフリード王子の状態を確認する。


「時間が止まってしまったようだ。サクラ。その腕輪を、王子にまた戻してみてくれないか?」


私は何分か呆然とした後、ユーリス様の言葉に頷いてその腕輪をアルフリード王子の手から取って左手に戻す。


するとアルフリード王子が動き出し、唖然としながら手を見つめている。


「あれ?オレ今この腕輪をはずしたはずだが、どうしてまたこの腕に戻っているんだ?」


ユーリス様が今起こったことを、話した。

その後、数回実験してみたが、結果は同じだった。

・・ということは、アルフリード王子が私の能力に巻き込まれないのは、この腕輪のせいだってこと?

その腕輪は銀で作られたアンティークもので、日本語でこう刻まれていた。


過ぎ去りし時の深淵を覗くもの、その輝きを照らす天となる。


なんのこっちゃ、さっぱり分からん。誰が考えたかわからないけど、抽象的過ぎる。

アルフリード王子とユーリス様も同じ意見だった。


「国王陛下は、どこでこの腕輪を手に入れたのかおっしゃっていたの?」


「・・・分からない。だが・・これと同じような模様のものを、どこかで見たことがある」と考え込むように言ったと思ったら、突然立ち上がった。


「オレは今すぐ王城に戻る。ユーリス。とにかく時間が動いたら魔獣の後始末をして、王城に来い。話がある。サクラはアイシスとかいう者の家に泊まるといっていたな。どこの者だ?」


ユーリス様は王子に敬意を示しながら、答える。


「ルベージュ子爵家の令嬢です。中立派のものですし、アイシスは転移魔法も操れるほどに優秀で、かつ魔法医療班に勤務していますので、安全だと思います」


「わかった。今夜はそのようにして、その後サクラは訓練場から一歩も出すな。ユーリス。お前がサクラを護衛しろ」


「了解しました。サクラのことは、私の命に代えても守ります」


いや、全部私のことだよね。どうしてこの人たちは私の意見そっちのけで勝手に話を進めるの?

アイシス様といい、最近そういった人たちばかりが傍にいるような気がする。

でも私も馬鹿ではない。反抗、意見しても労力の無駄だというこということを学んだ。えっへん。ということで、従順に見せかけておいて、隙があったら逃げ出して好き勝手やってやる!


・・・でもやっぱり私のこの能力、日本人だってことも関係あるのかな?

アルフリード王子は、同じ模様をどこかで見たことがあるっていっていた。

もしこの腕輪みたいなものがたくさんあるとしたら、時を止められない人がたくさん居るっていうことになる。それって私ものすごいピンチなんじゃないだろうか?


大丈夫なのかな?


不安で固くした肩を、アルフリード王子が安心させるように大事そうに抱く。


「心配するなサクラ、オレに任せておけばいい。私は王子だ。持てる権力と能力全てを使って、時を止める能力の秘密を探ってやる」


ユーリス様もその言葉に頷く。

ありがとう。二人とも。私、異世界にやってきて不安でたまらなかったけど、今は違う。

お二人や、アイシス様、ほかの騎士達様。

たくさんの優しい人に出会えて、本当に私は幸せだよ。


私の今の持ち札。 チート能力。 少年の容姿。 住む家と仕事。 下僕の地位。 


そこに二人の男の愛が加わることに気づくには、桜はまだ恋に幼すぎたのかもしれない。


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