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クラマ ユーリス様とアイシス様をデートさせる

ユーリス様は、自身でおっしゃった通りその日のうちに戻ってきた。


私はいつまでもユーリス様の部屋を占領するのも申し訳ないので、自分の部屋に戻って休養することにしたが、ユーリス様をはじめ、ほかの騎士様方もぞくぞくと見舞いに訪れてくれて、部屋はお見舞いの花とお菓子と果物であふれかえった。


なぜか、というか当然アイシス様は、その間四六時中私の傍を治療と称して離れなかった。

女王様は大勢の騎士様とお話ができて、ご機嫌だった。


怪我は日が経つにつれよくなってきたので、仕事に復帰したかったのだが、アイシス様がそれを許さなかった。


「あなたが回復したら、騎士様が見舞いに来てくれなくなるじゃない」


それが理由なのか!下僕の立場である私がアイシス様の意見に逆らえるはずもなく、おとなしく体力が有り余っている体を、無理やりベットに横たえる。


「そんなんじゃ、アイシス様が誰かと恋仲になるまで僕、ずっとこのままなんですか?そんなの耐えられません」


小さな声で、抗議する。


「あら、そうねえ。ずっとこのままっていうのも、わたくしの医療技術を疑われそうで本意ではないわ。そうだわ、あなたユーリス様とわたくしのデエトを企画なさい。そうすれば、仕事に復帰させてあげてもいいわよ」


あいかわらず高飛車だ。さすが女王様。でもこのままアイシス様に弱みを握られたまま付きまとわれるというのは、勘弁だ。

この際早く恋人を作ってもらって、下僕を解消してくれれば私も気楽に自分の夢に向かって万進できるというものだ。


そのためにはユーリス様とアイシス様に、くっついてもらわなければいけない。聞けばユーリス様は、成人してからもずっと騎士修行に明け暮れて、女の人と付き合った経験は皆無だと聞いた。

21才の男性としては、少々いや多分にもったいない。


ここは弟分として、私が一肌脱ごうではないか。


そう決意した私は、ユーリス様にどんなタイプの女の人が好きなのかを、アイリス様のいないときを狙って聞いてみた。

そうすると、しばらく思案したあとこうかえってきた。


「女の人を好ましいと思ったことが無いので、よく分からない。だけどクラマみたいな子は好きだよ。だからクラマのように前向きで単純で、素直なタイプがいいかな」


すっげーフラグきました。あんた弟どんだけ好きなんですか!!

いや本当の弟じゃないですからね、そこ間違いですから!!


でも、ふと思う。

これは後から聞いたことだが、私があのときユーリス様と連れ立って訓練場の洗濯場に行ったのが、使用人の間で噂になっていたらしい。

それをドルミグ副隊長が聞きつけて、あの事件が起こった。


ユーリス様は、ダイクレール公爵家という王国一番の貴族の出で、その血には王族の血も混じっている。

本来なら平民のクラマでは、一目見ることも許されないくらいの高位な方で、しかも騎士団隊長職とも相成って、雲の上の人といった位置づけらしい。

そのお方を伴ってクラマは洗濯場に現れたわけだ、そりゃあなんて不敬な行為だと責められてもおかしくは無い。


ユーリス様を狙っているアイシス様だって、下位ではあるけれども貴族なのだ。

しかも、ほかの騎士様方の噂で知ったが、事件後キースさんや私に何のおとがめもなかったのは、ユーリス様が影で手を回してくれたおかげらしい。

普通は貴族を害した平民には、いかなる理由があろうとも罰が科せられる。

騎士対騎士の対決なら許されるが、今回は騎士ではないクラマが原因なのだ。

極刑は免れないと皆が思っていて、騎士様達で嘆願書を作成しようという案が出ていたさなか、ユーリス様のおかげで、あっさり法廷も開かれないまま無罪がいいわたされた。


ユーリス様は、平民の私を溺愛しすぎている。


それは今では周囲の者にも認知されていて、今では平民のクラマに冷たく当る人は皆無だ。

どこが気に入ったのか分からないけど、弟しての粋を出ているのではないかと思うほどに、甘甘に甘やかしてくる。事件後はそれが顕著になった。


少しでも時間があれば、クラマにさまざまなお土産を持って会いにくる。

これはもしかして、もしかするとBLってやつなのか。

今まで女っけが無かった理由って、そうなのか?



あまりに熟考しすぎて、自分だけの世界にどっぷりはまっていた私を、ユーリス様が現実に引き戻す。


「私は、いっておくけど男が好きなわけではないからね」


ああ、ばれてましたか。私が考えていること。


「だけど、クラマだったらいいかなとも、思っているよ」


私はぎょっとして、大きな声で言い返した。


「そんな馬鹿なことを冗談でもおっしゃらないでください。僕は平民で魔力すらないし、しかも男ですから・・・。ユーリス様は私にとって、おこがましいですが兄のような存在です。

私はできればアイシス様のような、お美しくて頭の良いかたと一緒になってくれればいいなと、思っています!!」


ユーリス様は一瞬固まって、悲しい顔をして眼を伏せ気味に言った。


「じゃあ、クラマはどんな人が好みなの?」


「僕ですか、僕は・・・・」


じっくり考える。私はお金をためたら、この国を出て、いい男の人を見つけて結婚して、早く家族が欲しい。ってことは・・・。



「真面目で浮気しない実直な人ですね。困ったときはお互い助け合って、支えていきたいです。あと、子供がいっぱいるほうがいいって言ってくれる人かな。僕、たくさん家族が欲しいんです。そのためにも、いざというとき家族を守れるように、強い人になります」


この言葉に嘘は無かった。たくさん子供が欲しいというくだりで、万が一のBL展開のフラグも折れただろう。我ながらうまいこと言った。


ユーリス様をちらっと盗み見ると、顔を赤くして眼を見開いて感動しているようだ。


「一緒に支えあえる仲っていうのが、いいね。私もそういう人なら、愛せそうだ」


はて、どこを間違ったんだろうか。


アイリス様とデート、了承してくれたってことでいいんでしょうか?


その後、免許皆伝の潤んだ眼で見上げる子猫の技で、ユーリス様にアイリス様とのデートを無理やり約束させて、やっとベットの住民から解放された。


ユーリス様は、かなり渋って抵抗していたが、その後すごく悲しく傷ついたような顔をしたあと、一回だけならとデートを了承してくれた。


私のなけなしの良心がかなり痛んだが、そこは心を鬼にして、お世話になった天使のようなアイリス様のお願いを聞いてあげたいと、かなりごり押しした。


アイリス様はそれを聞いて、小躍りして喜んだ。

一度だけでもデートに持ち込めば、その後はなし崩しに既成事実を作って自分の魅力で結婚に持ち込むのだと、意気揚々に語ってくれた。

そのために使う自分で開発したという媚薬まで披露してくれ、なんだかユーリス様を生贄に差し出したかのような、罪悪感に再びみまわれた。




うう。ごめんさい。ユーリス様。あなたの犠牲は、無駄にはしませんので勘弁してください。




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