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『ラピュス』 The biography of Grey  作者: IA
第一章 グレイ幼少期編
9/12

9中級魔法に挑戦

今日は2本投稿です。まだ前話をお読みになっていない方はそちらからお読みください!!

 「今日はどのようなメニューにいたしますかな」

 「いつも通り最初は魔力生成と魔力コントロール、形状転換と形状維持の基礎メニューからやっていく。その後は……中級魔法に挑戦したいと思う」

 「中級魔法でございますか……!?なるほど、グレイ様であればもうそろそろ可能かもしれませんな」


 昼食後、魔法演習場で執事長のセドリーと魔法の鍛錬を始めた。

 今まではひたすら基礎メニューをこなしてセドリーにアドバイスを貰う、という形でやってきたが、今日からは本格的に高位魔法の習得を目指すことにした。

 昨日のエリーとの決闘でエリーが風属性の中級魔法を使用していたのを見て、感化されたのだ。

 

 いつもより足早に基礎メニューを消化していく。

 1時間程経った頃に全てのメニューを終えることができた。


 「今日は中級魔法に挑戦するということですのでこれ位にしておきましょう。しかしながらグレイ様、やはり光属性と闇属性はまだ苦戦しておりますな」

 「どうしても安定しないんだ。なんでだろう」

 「この二つはやはり適正がなければ扱いが難しい魔法でございますので」

 「セドリ―はどの属性も中級魔法までなら難なく使えるじゃないか。適性は土属性なのに」

 「私は長年欠かすことなく鍛錬を積んできておりますからな」

 「……僕も頑張るよ」


 セドリーは老年で今はデューラー家で執事長をしているが、昔は王国魔法騎士団に所属していたらしい。しかし、30年程前の大戦で片足をなくしてから退役し、今は義足を付けて生活している。

 セドリーは魔法に造詣が深く、多くのことを教えてくれるのでとても尊敬している。


 「さて、まずはどの属性から挑戦しようか」

 「それでしたら土属性はいかがでございますか?高位魔法には物質転換によるイメージの具現化の他に、既存の物質を用いて発動するものがございまして、土属性は比較的それがやりやすく汎用性も高いのでお薦めですよ」


 なるほど、土属性か……。セドリーは土属性に適性があるから細かいコツなんかも教えてくれるだろうし、最初だからできるだけ難易度の低いものから挑戦した方がいいだろう。


 「じゃあ、土属性にするよ。よろしくね」

 「承りました」


 いよいよ中級魔法に挑戦だ!ワクワクしてきたぞ!!


 「まずは、手本をお見せいたしましょう。『石壁の甲羅』」

 

 セドリーの唱術と共にセドリーを覆う甲羅型の石壁が現れた。

 これが物質転換によるイメージの具現化の中級魔法だろう。


 「この魔法は四方八方どこからの攻撃でも身を守ることがきます。更に、大量の魔力が必要な時にはこの中に隠れて魔力生成を行うことが可能です。乱戦の時には重宝します。しかし、これは物質転換ですので多くの魔力を消費してしまい、あまり効率がいいとは言えません。恐らく、グレイ様の総魔力量では一回使うのが限界でしょう」

 

 形状維持を解除して魔法を消した後、セドリーがわかりやすく説明してくれる。全く息切れをしていないことが、セドリーの魔力量の多さを示唆している。


 「でも、時間稼ぎに使うのにそれで魔力のほとんどを消費してしまったら意味ないよね」

 「その通りでございます!」


 セドリーが待ってましたとでも言わんばかりに答える。

 セドリーの考えを察した僕はすかさず続きを述べる。


 「まだ総魔力量が少ない僕でも使えるのが、既存の物質を用いて発動する中級魔法ってことだね。物質転換が必要ない分必要な魔力が少ないんだ」

 「流石でございます」


 セドリーに褒められると少し鼻が高く感じる。まぁ、前に読んだ魔法学書受け売りの知識であって、今考えついたわけじゃないんだけどね。


 「それでは実際に発動してみますね。『土の半球壁』」


 セドリーが地面に手をついて唱術すると。周囲の土が隆起してセドリーを覆う半球状の土壁へと姿を変えた。

 そして、セドリーが形状維持を解除したのか、半球状の土壁は揺らいで途端に形を失い土に還った。


 「こちらは『石壁の甲羅』とは違って地面の土に魔力を通すことで形状を操作して作り出したものです。素材が土ですから『石壁の甲羅』よりは脆いですが、消費魔力が少ないのでグレイ様でも何度か使用できると思います」

 「なるほど。これならできそうだよ。今の僕には最適だね」


 消費魔力もそうだが、引きこもりの僕にはぴったりの魔法だな。

 まさか外にいても引きこもれるようになるなんて……最高じゃないか!!


 「じゃあ、早速やってみるよ」

 「はい。私がサポートいたしますので」


 その後30分程セドリーに手取り足取り教わりながら練習した。

 やはり初級魔法に比べて消費魔力が多い分疲れるが、集中力を切らしてしまうと形状を維持できなくなるので真剣に取り組む。


 「一応形にはなったけど、まだまだ壁が薄いし実戦には使えないなぁ」

 「初日にしては上出来でございます。まさか一日で形にしてしまわれるとは、流石ですね」

 「セドリーがしっかり教えてくれたからだよ。それに、基礎的な鍛錬を地道に続けてきた成果でもあるね」

 「そう言っていただけるとは光栄でございます。高位魔法では基礎が何よりも重要ですから、基礎メニューはこれからも着実にこなしていきましょう」

 「うん!頑張るよ!!」

 「それでは今日はこれで終わりにしましょう。多くの魔力を使いましたのでしっかり体を休めて下さい」

 「わかった。今日はありがとうね、セドリー」

 

 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


 演習場から戻った後は決まって真っ先にお風呂に入る。汗はできるだけ早く洗い流したいし、湯船に浸かると疲れが一気に取れるからね。

 入浴剤のシトラスの香りが終始僕を癒やしてくれる。ずっと浸かっていたい気分だ。

 もうすぐ父上が帰ってきて夕食になるだろう。

 形だけだけど中級魔法が使えるようになったんだ。報告しておこうかな。きっと喜んでくれるはずだ。

 

 昨晩は母上と料理人が張り切って赤飯なんて炊いてたからなぁ。エリーのことを根掘り葉掘り聞かれて散々だった。

 セドリーはおしゃべりじゃないから中級魔法のことを母上に言いふらすようなことはないだろう。

 夕食まで絶対誰にも言わないぞ。

 グレイは堅く決意して静かにお風呂場を後にした。


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