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『ラピュス』 The biography of Grey  作者: IA
第一章 グレイ幼少期編
8/12

8日常

 「……うーん。まだ疲れが残ってるなぁ」


 エリーの来訪の翌日、グレイは珍しく二度寝をしていた。

時刻は10時半。

昼食後はセドリ―と一緒に魔法鍛錬をする予定だけど、まだ少し時間がある。

 

 「そういえば、通信教育の課題をやらなきゃ」


 いつも課題は寝る前に片付けてしまうのだが、昨日は思いの外疲れてしまっていたので、課題を終わらせことができなかったのだ。

量はそんなに多くないのですぐに終わるだろう。


 「昨日はいろいろあったな。あんなに楽しかったのは久しぶりだ。今日は平日だから、エリーは学校に行ってるのかな」


 ペンは動かしつつも上の空で、エリーのことを考えてしまう。初めての友達だからな……。

 ――いかんいかん。集中集中。


 充電していた携帯端末を充電器から外し、ヘッドホンを装着して勉強用の音楽を小さめの音量で流す。

いつも聴くのは軽快なピアノの独奏曲だ。曲名は覚えてない。

 

 「今日は兵法学と薬草学の課題だ。どちらも本で読んだことがある内容だから余裕だな」

 

 グレイにとって通信教育の内容は日々の読書の復習でしかない。たまに忘れてしまっている内容が出るが、それに当たる箇所を読み直せばいいだけだ。

 年齢的に初等教育を受けるべきところであるが、グレイにとっては余りにも簡単であるため、今は中等教育の内容を通信教育で受講している。

 しかし、最近は特に、暇つぶしにしかならない程に、日々の読書でグレイの学力は上昇していた。


 ドラグレイ王国における教育は、初等教育、中等教育、高等教育の三つの段階からなる。

 初等教育と中等教育の学校は王国各所に散在しているが、高等教育の学校は、『ドラグレイ王国国立高等学校』しか存在しない。

 この国では15歳で成人とされていて、多くの者は中等教育までで学びを終了する。

 高等教育は王国魔法騎士団の育成や研究機関としての色が強く、中等教育までの課程とは全く異なる次元の内容なのだ。

 グレイは10歳にして中等教育の内容でさえ難なくこなすが、高等教育内容となると話は全く別であった。今の学力では入学は無理だろう。

 魔法学書はあらかた読み漁ったが、他の分野はまだまだである。ほぼ独学であるためこれまで好きなことを勉強してきたが、その分知識が偏ってしまっているのだ。


 「ふぅ、終わった」


 グレイは一息つくと大きく背伸びをして、時計を見る。

 11時27分。

 昼食は正午だからまだもう少し時間がある。


 「紅茶でも飲もうかな」


 アリアに紅茶を淹れて貰いたいところだが、窓の外を眺めるとアリアは忙しそうに花壇の手入れをしていた。

 今日は自分で淹れよう。


 去年の誕生日に買って貰った専用のサーバーで愛用のティーカップに紅茶を注ぐ。

 仄かな香りが部屋を満たし始める。

 ――いい香りだ。


 気分を変えるために携帯端末を手に取り、最近はやりのPOPミュージックに切り替える。女性歌手の伸びやかな歌声に耳を傾けつつ、紅茶を楽しんでいたとき、不意に重大な事が頭を過ぎる。


 「しまった!エリーの連絡先を聴くの忘れた!!!」


 今手にしている携帯端末。普段はミュージックプレイヤーとして活用しているが、本来は

メッセージのやりとりや通話もできる。

 科学技術の発達により数年前に誕生したハイテク機械であり、普及率は今や王国の総人口の8割を超えている。

 元は科学技術大国の『エイブラハム帝国』が開発したものであるが、協定を結んでいるドラグレイ王国にもその技術がもたらされたのだ。

 

 「ぼっちを拗らせすぎてその発想はなかったなぁ。友達になったのなら連絡先ぐらい知っておくのが当たり前だろうに」

 

 グレイは自身のぼっちへの慣れ具合に苦笑しつつも、ふとエリーの境遇を思い出す。


 「そういえば、エリーも友達いないって言ってたな。もしかして僕と同じで連絡先のことなんて思いつきもしなかったのかもしれない」


 似たもの同士であるかもしれないということに嬉しさを感じつつ、同時に一抹の不安がグレイの心に芽吹いた。


 「……本当に友達と思ってくれていればいいんだけどね」


 グレイに友達がいたことはない。学校にもいかずにずっと引きこもってきたのだ。

当然、友達とそうでない人の線引きなんてしたことはない。友だち付き合いの経験だって皆無だから適切な距離感がわからない。

 

 「こういうことで悩むのが嫌だから引きこもってきたんだよなぁ。あぁ、面倒くさい」


 グレイは人間関係で悩みを抱えやすい気質だった。その煩わしさから逃げ出すために引きこもったのだ。

 そんなグレイのことを両親もある程度は理解してくれている。しかし本心では二人ともグレイが学校に通うことを望んでいたし、グレイ自身も両親の気持ちはわかっているつもりだ。


 「エリーと仲良くなれればいいきっかけになると思ったんだけどな……。でも、エリーはまた来るといってくれたんだ。もし、もう一度王城から抜け出してでも来てくれたら、今度こそは連絡先をきこう!!」


 グレイは堅く決意し、残りの紅茶を一気に飲み干した。


 「グレイ様、昼食のお時間ですよぉおおお!!!」


 丁度そのタイミングで階下からアリアの昼食時を知らせる喧しい声が聞こえてきた。

わざわざ呼びにくるのが面倒くさかったに違いない。

 

 「わかった、今行くよ!!」


 グレイも大声で返事して、食堂へと向かった。


7話で買い物に行っていた母親がなぜかいるという矛盾と4話で休日の設定なのに父親が授業に行っていたという矛盾が発生していたので、母親は早めに買い物を終えて帰ってきてしまい、父親は休日だが補講のために出勤していたことに変更しました。


見切り発車で矛盾点が他にあるかもしれませんが、できるだけなくすように心掛けたいと思います><

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