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『ラピュス』 The biography of Grey  作者: IA
第一章 グレイ幼少期編
6/12

6決闘!?

 「じゃあ、行くわよ。準備はいい?」

 「ほんとにやるの?……いいよ」

 「よーい、スタート!!」


 エリーのかけ声を合図に、二人同時に魔力生成を開始する。


 この隙に、魔法学的観点から魔法についておさらいしておこう。

 

 魔法については未だわかっていることは少ないが、一般的に魔力の源泉は精神にあると言われている。総魔力量はつまり精神力の強さである。魔力生成とは精神力を魔力に変換するということだ。

 生成された魔力は、初心者だとコントロールできずに垂れ流し状態になるが、鍛錬を積めば自在にコントロールできるようになる。例えば、一点に集中させたり、広範囲に広げたり。

 魔力にはそれ自体に免疫力を高めたり運動能力を上昇させたりする性質があるが、形状転換によって、水や雷など別の物質に形を変えることができる。そのメカニズムは未だ明らかにはなっていないが、精神力を想像力で内発的に活性化させることで形状転換が実現しているというのが定説だ。つまり、イメージが大きな鍵を握っているのだ。

 しかし、どれだけ想像力が豊かであっても、それを具現化するには地道な魔鍛錬による地盤が不可欠である。魔法は精神力により発動し、想像力によってその効力を高めているからだ。


 「いっくわよ!!」

 「いつでもどうぞ」


 エリーが魔力生成を終えたようだ。僕は少しだけエリーよりも早く魔力生成を終えていた。

 やはり、魔法学に関しては僕の方がエリーよりも得意なのかも。


 「私は風属性魔法にずば抜けて適正があるの。中級魔法で一気にカタをつける!!出でよ、『風の八連刃』」

 「流石エリー。もう中級魔法が使えるなんてね」


 中級魔法は多くの魔力を必要とし、具現化するのにも高度な想像力が要求される。若干10歳で発動できる魔法ではない。

 きっとずば抜けた適性がそれを可能にしているのだろう。

 瞬時に巨大な8つの風の刃が形成され、一斉に動き出した。

 空気を切り裂く音がグレイの恐怖心を煽る。

 

 「でもね、エリー。その渾身の一撃は当たらなければ意味ないんだよ。『身体強化』!!」


 僕は魔力を下半身の筋肉と神経系に行き渡らせる。瞬発力の特化だ。


 高位魔法を使えなくても、総魔力量や魔力コントロールによりカバーできる。瞬間的にではあるが、僕の移動速度は音速に達した。

 高速で迫り来る巨大な8つの風の刃を全て躱す。


 「……そんな?!」

 「がら空きだよ」

 「……ッツ」


 エリーの中級魔法を躱した直後、僕は身体強化を維持したままエリーの背後に回り込み、呆然とするエリーの手首を押さえつけて拘束した。


 「まさか身体強化だけで私の中級魔法を凌ぐとはね。どんな魔力の使い方をしたらそうなるのよ」

 「地道な鍛錬の賜物だよ。エリーこそもう中級魔法を使えるなんて、凄いよ」

 「……グレイに言われても嬉しくない」


 エリーは頬をぷくーっと膨らませていじけている。

 でもねエリー。君は大事なことを忘れているよ。


 「ちょっと、痛い。そろそろ離してよ」

 「ごめん、筋肉痛で動けない」

 「ええええええええええ!!!!!」

 「僕は引きこもりだよ?運動なんかほとんどしない。瞬間的とはいえ、音速に達するほどに体を酷使したんだ。当然の結果さ」

 「涼しい顔してなんてこと暴露してんのよぉおおおおおお!!」


 エリーの絶叫の後、それを聞きつけたアリアが駆けつけてくれたおかげでその状況を脱し、僕は身体強化したアリアに抱えられて自室のベッドに搬送された。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


 「あなた何者なの?」

 「……ただの引きこもりだよ」


 ベッドに寝かされたまま動けない僕は、エリーに上から覗き込まれる形で尋ねられる。

 ち、近い……。

 照れた僕はそっぽを向いて常套句を唱えた。

 エリーはその後ベッドの反対側に回り込んで凄まじい勢いで身体強化だけでどうやって中級魔法を凌いだのかについて詰問してきたため、観念して種を明かすことにした。


 「……なるほど。でもそんなの普通じゃない。たぶん王国魔法騎士団の人たちでもできる人は少ないと思う」

 「最近は高位魔法にものを聞かせて、基礎魔法を疎かにしがちな傾向があるよ。論文だって『想像力と総魔力量による効率的な高位魔法の発動』や『特殊魔法』についてばかり言及しているしね」

 「論文って……。私は学校の教科書で精一杯なのに。でも確かに、学校の授業でもグレイのような精密な魔力コントロールはやらない。どちらかというと適正に合った高位魔法の会得に力を入れている気がする」

 「僕は魔法鍛錬にばかり励んできたから基礎魔法しかまだ使えないけど、それでもやっぱり魔法学は基本が第一だと思うんだ」

 「そうかもね」


 エリーは謎が解けてすっきりしたのか、晴れ晴れとした表情をしている。

 僕はいつも父やセドリ―に教えて貰う側だから、こうして誰かに魔法を教えるのは初めてだ。エリーは理解してくれたようだし、とても新鮮な気分。


 「そういえば、グレイの適正って無属性魔法なの?」

 「え、違うけど」

 「嘘、あれだけ使いこなせてるのに?!」

 「無属性魔法は適正がなくても比較的使いやすい魔法だからね」


 無属性魔法とは治癒系や身体強化系、障壁系などの魔法だ。汎用性が高く、戦闘だけでなく日常生活でも多く活躍している。


 「じゃ、じゃあ、グレイの適正って……」

 「残念だけど、僕はどの魔法にも適正がないんだ。全部平均以下だよ」

 「えぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


 やっぱり驚かれるよね。 


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