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『ラピュス』 The biography of Grey  作者: IA
第一章 グレイ幼少期編
1/12

1引きこもり少年グレイ

書きためありません(><)

地道に投稿していこうと思います。

 「ふぅ。今日も紅茶が美味しい。アリアの淹れた紅茶は絶品だね。」


窓から差し込む陽光がレースのカーテンを透過して室内を照らしている。

厳冬を乗り越え、春の命の芽吹きを祝福しているのだろうか、小鳥たちの優しい賛美歌が心地よく響く。


 10歳になったばかりの少年、グレイ=デューラーは、歳不相応の風格の持ち主であった。

趣味は読書と魔法鍛錬。

SF、推理、歴史などのいろいろなジャンルの小説から、魔法書、兵法書などの学術書まで、とにかくありとあらゆる本に手を出してきた。

魔法鍛錬では、ドラグレイ王国国立中等学校で魔法学を教えている父、サイモン=デューラーや、魔法学に造詣の深い筆頭執事のセドリーに指南を受けつつ、魔力コントロールや形状転換などの基礎を地道に行っている。

 

一日の大半を自室で過ごし、外には滅多に出ない。

広大な庭一杯に広がる、花畑や菜園を眺めて愛でることは好きでも、実際に外に出て触れることはない。


「グレイ様、今日は快晴で気持ちの良い1日になりそうです。少し外を散歩してみてはどうですか?」


 召使いであるアリアはさりげなく引きこもり気味のグレイに外出を促す。


 「やだよ。疲れる」

 

 グレイは不躾に返答し、読みかけの魔法書に目を戻した。

 アリアとのこのやりとりは最早日課である。


 グレイが乳飲み子であったころから召使いとして面倒をみてきたアリアにとって、グレイは我が子同然であった。

 学校に通うことすら面倒くさがり、通信教育を受けているグレイであるが、勉強は同世代から抜きん出て優秀だ。しかしながら、引きこもりであるが故に運動不足気味であることをアリアは心配している。


 「グレイ様、そんなことばかりおっしゃっていると豚になりますよ?」

 「残念だったねアリア。野生の豚の体脂肪率は約13%らしいよ。見習いたいぐらいだ」

 「体脂肪率の話ではありません!見た目の話です!!」


 カッチーン。押さえろグレイ。君は寛大な心の持ち主のはずだ。

 少し間を置いて冷静さを取り戻す。

 なるほどそうきたか……。初めてのパターンかもしれない。


 「言うようになったじゃないかアリア。でも人間は外見じゃないはずだ。中身だよ、中身!」

 「確かにそうですね。しかし屁理屈ばかりこねているグレイ様の中身がしっかりしているとは到底思えませんわ」

 「ほ、ほほーう。相手の気持ちを考えないそのドストレートな口調を棚にあげて注意されても説得力に欠けるね」

 「私は召使いですから良いんです!しかしグレイ様は公爵家の御令息であり一人息子なんですから、デューラー家を背負っていく為にも健康な体と素晴らしい人間性を兼ね備えた立派なお人にならねばなりませんのよ?」

 「うぐぐぐぐ……」


 ぐうの音も出ない。

 まさかアリア、豚の流れからここまで完全にシュミレートしていたんじゃないだろうか。

アリアはしてやったり顔だ。少し鼻につくけど正論だから憎めない。


「そ、そ、そうだ!僕の肌が弱いのは知ってるだろ?直射日光を浴びると肌が真っ赤になるんだ」

「少々の散歩ぐらいは平気な事も知っていますわ」

 

 完敗だ。

 肌が弱いのは事実だが、アリアの言うとおりちょっとの散歩ぐらいは大丈夫なのもまた事実だ。

 ずっと面倒をみて貰っているんだからアリアが知らないはずはない。

 情けない姿を晒してしまった。


 「降参だよ。わかった。ちょっと庭を散歩してくるよ」


 グレイは遂に、2週間ぶりの外出を決意した。



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