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洞窟には似つかわしくない鉄の扉の前で一休みする。ここを開ければボスとの戦闘が始まる。その為に体調や道具のチェックをする。
『ダーリンの肉体……ハアハア』
変態の声がするが無視しよう。何故、たかが魔力波による検査だけなのにこうなるのか……ただの機械なのに。
『乙女は突然に爆誕するのよ』
心を読むなよ!
『以上なし! 誰の毒牙にもかかっていない綺麗な体です』
それを人はドーテーと言う。ウッセエ!
「よし、行くぞ」
『もう、デートは終わりなのね……』
デートじゃないから! これは僕が借金返済の為の足掛かりだからな!
重そうな扉を押すと簡単に開いた。先制攻撃を避けるために扉に張り付くようにして中に転がり込み、ハンドガンを構える。
ハンドガンの照準の先に鎧を付けたゴブリンを頭から飲み込んでいる緑の体に青いラインが入ったトカゲがいた。
『種族不明のトカゲ。魔力量500』
ラランの声に目を見開く。
「なんじゃ! あのトカゲは!?」
画面の前で社長は叫んだ。画面の中のトカゲを見て、見ていた皆も慌てふためく。
「そんな……あんな魔物はここには発生しないのに……」
中でも深夏は顔を青ざめさせている。全長5Mを越えるトカゲが今の静樹に向かっていったら直ぐに殺されてしまうだろう。
「おい、守建の。博仁は何しに来てた?」
「はい。装備のテストだとかでボスを相手に……ああっ!」
「やっぱりか。アイツはろくなことはせん」
「しかし、あのトカゲはどうやって?」
「おそらく、魔獣の卵でしょう」
「魔獣の卵?」
「まれに迷宮の片隅で見つかる卵状の物質で、迷宮の外では何の反応もありませんが、迷宮内で放っておくと魔獣に変わるんです」
「それがあれか……」
「しかも、他の迷宮で魔獣になると凶暴化するって」
「おい、どうにかしろ! 静樹に何かあったらどうするんだ!」
「待ってください。今、増援を呼んで裏口から直接ボス部屋へ入れるようにします」
「早くしろ! もう、食べ終わるぞ」
「わかってます!」
深夏はスマホで何処かへ連絡しながら部屋を出ていった。
「社長、俺は?」
「どうもできんから、見ていろ。……それしかできんからな」
顔色を悪くして画面を見つめる目は片時も目を離さないように見開かれていた。
「あいつの息子なら、無事帰ってこいよ」
西崎はそう呟き、すぐ動けるようにドアの側に待機した。