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神社の地下にある迷宮にテストを受ける為に来たのだが、そこに見知った顔があった。
「田中先輩? 何でここに?」
「ここは私の実家だから。それに名字はこの神社の名を文字って本当は守建って言うのよ」
そう言ってふんわり笑った。腰まである黒髪と日本人形のような顔立ちに上も下もなくファンが多い。そんな彼女が巫女服で立っていた。
「学校でも聞いたけど、企業の研修生として働くんだってね」
「その話は学校じゃ話してなかったですよね」
「校長が言ってたわ。それにこの施設を利用するって話だったし」
彼女が立っているのは石造りの門の前である。奥は見通せないような闇。こちらとは違う空気が漏れている。門の横にはノート型パソコンが置かれた机があった。
「はい、それじゃスマホ出してね」
白く細い手が差し出される。その手にスマホを渡す。パソコンの端子を繋げて読みとる。
「はい、これでいいわ。頑張ってね」
そう言いながら近寄ってきて耳元で囁く。
「中にはゴブリンが20匹いるから。それと奥の方もゴブリンナイトだから」
「いいんですか?」
テストの内容を教えて後で何か言われないか心配したのだが……。
「もっと強いのでもいいって言ったんだけど、学生ならこれでもきついだろってバカにしてるよね? 静樹ちゃんなら簡単でしょ?」
パーティーを組んだことのある人に言われて苦笑する。
「僕は田中さんの薙刀に何度も助けられてるんですけど……」
「守建でいいわ……いえ、夏深でいいわ。学校でもそう呼んでね」
いえ、そう呼ぶと闇討ちに合いそうで怖いんですけど……。
「とりあえず行ってきます」
石造りの門に向かおうとすると目の前に彼女の顔があった。
「帰ってきたら、パーティー組みましょう。それで手を打ちます」
「えーと……」
「組ましょうね」
笑顔の彼女に気圧された。
「……はい」
「それじゃ、頑張ってね」
笑顔の彼女に見送られて僕は石造りの門をくぐった。
◆
「もぐっていったな」
添えつけられた椅子に座り、迷宮の入り口を映し出された画面を見るチビッ子社長。
「で、彼女は何だ? ずいぶんと親しそうだったが……」
「神社の娘で今年卒業予定です。そしてこちらの探索者部署に採用予定です」
「そんなのしてたっけ?」
「静樹さんの合否でどうするか決めるそうです」
「静樹が合格すれば、こことの繋がりが出来るか……合格しろよ」
静樹が入っていった黒い穴を期待を込めた目で見ていた。
「ちなみに迷宮内もこれで見れますよ」
「はよ言え! チャンネル変えるのだ!」
「はいはい、守建さんが来てからね」
「嫌だ~! すぐ見るの!」
社長が駄々をこねているうちに守建深夏が来て迷宮内部の映像に切り替えた。