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「はあ、今日からか」
今日までに総てのバイトを断り、学校に研修生になる為の書類を出したりして凝った肩をぐるぐる回す。
守賀屋県立探索者学校から電車で2駅。そこからビル街に入り今日から研修先となる会社に帰る。そして社員寮と言い張るどう見ても仮眠室にしか見えない一室に鞄と制服を置いてつなぎの作業服に着替えて社長室に入る。
「うむ、良く来た」
社長室には、重厚な黒い机の先で偉そうに椅子に座る少女とその隣に立つ眼鏡の美女が待っていた。
「よし、トランプを混ぜろ」
「何する気だ?」
「ババ抜きだが?」
「迷宮に行くんだろ!」
「静樹の書類の確認作業があるからまだ時間がある。ほれ、さっさとしろ」
眼鏡の美女月影が、未開封のトランプを渡してきたので開くと、
「なんだこれ普通のトランプじゃないよな?」
「系列別社長、重役の名前を覚えてもらうためのトランプだ」
「静樹さんの為にお嬢様が急いで作って貰ったんですよ」
「そう言う建前で私が覚えるためにな!」
「お前がかよ!」
そして約1時間3人で遊んでいると、
「社長、確認できたんで今からいいそうですよ」
そう言って強面の借金取りの西崎が入ってきた。
「わかった。車を回せ」
西崎は一礼して退出した。
「西崎さんて取り立てする人だよね?」
「いや、取り立て兼運転手兼警備員だ」
「他のやつらにもやらせろよ!」
「いないんだからしょうがないだろ? 社員はお前も入れて3人なんだから」
「静樹さんがいるから警備は少しは楽になると西崎は言ってました」
「あの仮眠室に住んでるから何にも言えないけどさ」
制服を置いた仮眠室はあの日から静樹の部屋として使われている。簡易な机と椅子も運び込まれて狭い部屋と変わらなくなっている。
「夜中のトイレは我慢するなよ」
「……社長のようにお手手繋いで連れていってもらうことは無いです」
「何だってーー!」
「何で驚くんだよ!」
下に降りると高級な車の前で西崎さんが待っていた。皆で乗り込み走り出す。
「で、直ぐに迷宮に行くのか?」
「その前に実力を計る為のテストをします」
「疑似迷宮を空けて貰ってある。そこでどれだけ出来るか見せてほしい」
「初心者用のレベル1ですのでそう気負うことはないでしょう」
「悪ければオカマバーにトラバーユだな」
「何でだよ!」
「ホスト系は全滅だった」
「マジで!? そんなに顔がまずいの!?」
「いえ、単に年令が引っ掛かっただけです」
「お喋り中すいませんが着きました」
車が止まり外に出るとそこは神社だった。