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たいしたものじゃありませんが、読んでくださる方に感謝を❗
「おい、坊主大丈夫か?」
強面の金のネックレスと時計を着けた男が少し心配そうに声をかけた。それもそうだろう。僕の顔色は青を通り越して白くなり床におかれた紙を凝視しているからだ。
借用書 金額2億円。
強面の男が取り出したこの紙と何もない空っぽの部屋で僕は意味のない思考をぐるぐると回していた。
今朝まではここにタンス、テレビ、洗濯機、掃除機、机、テーブルその他生活に必要な物があったはずなんだ。それを全て持ち去られていた。親父が金を稼がないから自分でコツコツと揃えたのに……。多分今頃はリサイクルショップに二束三文で引き取られた後だろう。そう思うとせめて買い置いといたカップ麺だけでも置いとけよ! と叫びたかった。
「まあ、あれだ。ガンバレ」
「いや、お金取り来た人に言われても……」
「……そうだな。すまん」
強面なのは顔だけでそこまで悪い人じゃ無いらしい。そして彼の目は僕の胸に付いたバッジに気がついた。
「お前、探索学校か?」
探索学校とは迷宮探索者を育成する学校の事をさす。僕はいいかげんな親父には言わずに知り合いの叔父に保証人になってもらい、通っているのだが。
「息子がそうならそう言えよ。もっと貸し付けられたのに……」
僕が無言で睨むと誤魔化すように笑って、
「なら話が早い。どうだ? 兼用で俺んとこの迷宮潜るか?」
「学生の間は無断で潜ると処罰の対象になりますので……」
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと企業が押さえている迷宮だから。そこの研修生って事にすればいいんじゃねえか? 借金も返せるし」
「ちょっと待ってくださいよ! そういう迷宮押さえる企業ってデカイ所でしょ? 金貸しがそんな所と……」
男は無言で借用書の一部を指差す。そこにはとある企業の系列にはいる金融会社名が書いてあった。
「どうする? 宛もなく借金抱えて探索するのとお抱えって事で探索するのとどっちが有利だ?」
「……わかりました」
「よっしゃ! これで紹介料で金が入る!」
「はあぁ?」
「キャッチと同じだ。連れていった奴に金が入るんだ」
「おい、ちょっと待て……」
「ほら、行くぞ。ここも解約されてるって言ってたからな大家に鍵返せよ」
「マジでか! くそ親父ぃぃぃーー!」
こうして僕は金貸しにドナドナされて行ったのだった。