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祈りの塔に降る雪は  作者: そらはしみのる
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秋の女王様

秋の女王様は塔の猫に問いました。

ここから出たいと思うことはないのかと

塔の猫は答えました。

「私は最上階の部屋から外を見る代わりに ここから出ることは許されないのです。」と

秋はアッという間に過ぎてしまいます。

「塔の猫よ。せめて おまえの名前を教えておくれ」

塔の猫は黙ったまま 首を横に振りました。

真実の名前を知らなければこの国では手紙は届きません。

届けたければ お触れのように皆にふれる形でしか言葉は届けられないのです。

名前を新たに付けてみようと思いましたが名前は「塔の猫」に変換されてしまいます。

秋の女王様は ただ一人 祈りの塔の本の森で お城の図書館で調べました。

ただ 愛しくおもう者の名前を呼びたくて 祈りの時間と塔の猫といる事のできる時間を除いて

 塔に囚われた (いにしえ)の物語を頭の中でいくつも紐解いていきます。

そして とうとうこの秋 塔の猫の名前を当ててしまいました。

すると 塔の猫の姿は その話にあった若者に姿を変えました。

物語はこうでした。

昔、空を飛ぼうとした若者がいました。うっかり高く舞い上がりすぎた若者は

神の怒りを買い、そんなに高い処が好きならと

高い塔の上に姿を変えて閉じ込められてしまいました。


とうとう名前を知り元の姿に戻った二人、今度は いつまで経っても秋が終わらなくなりました。

秋の女王様が塔に入ったままなのです。

収穫はとっくに過ぎてしまい、このままでは次の実りが出来ず いずれ食べる物も尽きてしまいます。


困った王様はお触れを出しました。


塔の猫の呪いを解く方法を知る王様は最後になるお触れを出しました。


:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

  次の年 秋の女王様と結婚した者をこの国の次の王としよう。

  次の年 塔の猫と一緒になった者に好きな褒美を取らせよう。

  ただし、秋の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。

  季節を廻らせることを妨げてはならない

   季節の一巡りする間に真実の愛をここに示せ

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


それを見た塔の見える丘の近くに住んでいた何もしらない者たちは ため息をつきました。

どうせなら もっと素直に許しを出してやればいいのにと。


名を知らないものには猫にしか見えない若者に

求婚者たちは いずれも魅力的に迫ったが どの女王たちにもかないはしなかった。

そして塔の外からの求婚者達は塔に押し寄せるだけで誰の許可なく入ることは出来なかった。

夫のいる女王様たちはいつも道理に接し 春の女王様も変わらずいつも猫にいつも道理に接した。


秋の女王様は季節を廻らせる為に 祈りの塔を離れなければならなかった。

しかし次期王座を巡り従兄弟たちさえ求婚者に名乗りをあげ 秋の女王は城に帰る事さえ難しかった。

そこに夏の女王様が現れた。

「あなたを迎えに参りました。季節は廻るのです。

次の王を決める権利は私たちにもあると思うのですよ。

どうぞ この手をお取りなさい。」

海の国では滑るように船をかけ色んなものをかわし、北の国では北の国の王と氷犬達にも助けられ  

それでも現れる求婚者たちをかわしながら

離れてくらす二人は 新たな求婚者が現れるたびにお互いを思い出し

 次の生活の為に色んなことを学びながら いろんな人の愛に支えられ成就しました。


季節を廻るのです。

 塔の外に出ても猫の姿に戻らないように完全に塔の呪いは解けたのです。


そして これからも

真実の愛を貫くことができるのか

一年に一度この国に戻ることを条件に

季節を廻る塔は閉める事を王は許しました。


 季節を廻るのです。


 女王たちの祈りとともに 祈りの塔の丘の近くに住んでいるもの達の祭りと共に


そして 祈りの塔を閉める頃

丘から 見える 祈りの塔に 降る雪は冬の訪れを静かに告げていました。


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