春の女王様
無事に 冬の女王様と入れ替わった春の女王様でしたが
今度は春の女王様が塔に入ったままなのです。
これでは梅雨が長引いてしまい、このままではいずれ食べる物も尽きてしまいます。
困った王様はお触れを出しました。
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春の女王を夏の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。
ただし、春の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。
季節を廻らせることを妨げてはならない。
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勿論 お触れはその日の内に祈りの塔の番人である 塔の猫にも届けられました。
春の女王様がそっと外を覗きました。
「まあ大変これでは また たくさんの人が来てしまうわ」
それは
冬の女王様を連れ帰った王子様が 北の国の新しい王様になり 不思議な力を持つ氷狼も
また氷犬達の王になったことで 同じように王様になりたい者たちや不思議な力が欲しい者たちが恐ろしいほどの求婚者として春の女王様のいる塔に現れたのでからでした。
番人である 塔の猫が 言いました。
「春の女王様 最初はあんなに喜んでいたではありませんか
あの者たちがまた ここに着くのは時間の問題です」
春の女王様は悲しくなってシクシクと泣き出しました。
塔の見える丘の近くに住んでいた者たちは ため息をつきました。
それほどまでに雨は続き あらゆるものを飲み込むように広がっていたからでした。
船に乗り一番に春の女王様のもとに窓から迎えにきたのは夏の女王様でした。
涙に荒れる河を。夏の女王様は荒波も楽し気に乗り越えてきたのです。
けれど春の女王様はここを出るわけにはいきません。
ギュッとドレスを握りしめ言いました。
「ここを出たら恐ろしい男たちに囲まれてしまいます。」
夏の女王様は春の女王様に問いました。
あなたは王様が怖いかと兄弟や従兄弟が恐ろしいかと愚かしいかと
春の女王様は頼もしい家族を思い出しフルフルと首を振りました。
「わかりました。私が守ります。あなたの願いを叶えましょう。季節は廻るのです。必ずや無事に城に送って見せましょう。」
春の女王様がふと顔を上げると 夏の女王様は 微笑みながら返事を待っていました。
春の女王様を乗せた船の帆は風を受け 滑るように色んなものをかわしながら
お城に着くことが出来ました。
無事に春の女王様との夏の女王様の交代を遂げた夏の女王様は
その褒美に世界を巡る自由を望みました。
一年に一度この国に戻ることを条件に王は許しました。
ぶじ 夏は廻ってきたのでした。