冬の女王様
あるところに、春・夏・秋・冬、それぞれの季節を司る女王様がおりました。
女王様たちは決められた期間、交替で塔に住むことになっています。
そうすることで、その国にその女王様の季節が訪れるのです。
ところがある時、いつまで経っても冬が終わらなくなりました。
冬の女王様が塔に入ったままなのです。
辺り一面雪に覆われ、このままではいずれ食べる物も尽きてしまいます。
困った王様はお触れを出しました。
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冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。
ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。
季節を廻らせることを妨げてはならない。
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勿論 お触れはその日の内に祈りの塔の番人である 塔の猫にも届けられました。
冬の女王様がそっと外を覗きました。
「まあ大変これではたくさんの人が来てしまうわ」
塔のある島の周りには大きな川がありました。
遠くに色んな船が見えました。
「そうだ凍らせてしまえばいいわ」
だけれども今度は船を下りてきた人々が転びながらも
よたたよたたと近づいてきます。
先頭の騎士などは靴を変えると船が進むより早く近づいてくるのです。
あわてて 今度は雪を降らせました。
他の者たちは更に後れを取りましたが
先頭の騎士はまた靴を変えてサクサクと進んでくるのです。
「ああこれ以上 吹雪にすればケガ人や迷子が出てしまうかもしれないのに
ああ 本当に どうしましょう」
番人である 塔の猫が 言いました。
「冬の女王様 あの様子ではすでにケガ人は出でおりますし
あの騎士が ここに着くのは時間の問題です」
冬の女王様は悲しくなってシクシクと泣き出しました。
塔の見える丘の近くに住んでいた者たちは ため息をつきました。
それほどまでに雪は深く あらゆるものを凍らせるかのように広がっていたからでした。
泣き続ける顔をぺろりと
氷狼と名付けた氷犬がなめました。
トントン トントントン
高い塔の窓を誰かがたたきます。
「鳥かしら」
どうやら違います。
なのに塔の猫が窓を開けようとしています。
あわてて止めようとしましたが
何故だか氷狼がドレスの裾を引っ張ります。
とうとう窓は開け放たれ
先頭の騎士が入ってきました。
「初めまして冬の女王様 私は北の国の王子です
あなたを迎えに参りました。季節は廻るのです。どうぞ この手をお取りください」
勿論 断った女王様はどうやってあの高い壁を上ったのかを聞きました。
「あなたの深い涙が降り積もり私をここに導いてくれたのです。」
冬の女王様がそっと外を覗きました。
なるほど雪が天高いはずの塔を包んでいました。
他の者たちは雪で滑って到底ここまで来れる様子はありません
けれど冬の女王様はここを出るわけにはいきません。
ギュッと氷狼を抱きしめ言いました。
「この子はきっとここを出たら生きてはいけません。」
女王様は 氷狼が育つのを見てもう春にならなければいけない時間なのだと
本当は気づいていました。
だけれども氷犬がこの後の季節を生きていけないことも気づいていました。
この塔の中ですら女王様以外のものが触ることが出来なかったのですから。
「わかりました。私が守ります。あなたの願いを叶えましょう。代わりに私のきさき になってください。」
冬の女王様がふと顔を上げると 北の国の王子様は ひざまづいて返事を待っていました。
冬の女王様は氷狼を北の国に連れていく事を条件に婚姻を受け入れました。
無事に冬の女王様と春の女王様の交代を遂げた北の国の王子様は
その褒美に冬の女王様を望みました。
一年に一度この国に戻ることを条件に王は許しました。
ぶじ 春は廻ってきたのでした。