悲劇の村
大剣で斬りかかった俺の攻撃を、悪魔は紙一重で避け、俺から距離をとり、喋りかけてきたのだった。
「誰かと思えば、魔方陣を何度も潰してくれた忌々しいオーガではないか」
「お前がゴブリンを率いて、ライフドレインの魔方陣を書いてたレッサーデーモンか」
「なんだ、気づいたのか、それならば邪魔しないで頂きたい。君のせいで随分発動が遅くなってしまったからね、今すぐ魔法を再開したいんだよ」
「ふざけるな、俺はそれを止めに来たんだよ」
「やれやれ、どこまでも邪魔をしてくれるオーガだね、私が欠ければライフドレインの効果が十分発揮されないからね、すぐに君を倒して作業に戻らしてもらうよ」
「させるか!」
俺はベルナールさんから教わった剣術を忠実におこなって、レッサーデーモンに斬りかかった。
「おっと、あぶない、さすがオーガ速いねー、だが、遠距離からの攻撃にはなれていまい」
そういいながらレッサーデーモンは両手に火の玉を作り出し俺に向かって飛ばしてきた、しかし俺はその火の玉を無視し、そのままレッサーデーモンに向かって駆けた。
「馬鹿が、ろくな知能も持ち合わせていないのか」
そんな言葉を無視して俺は迫り来る火の玉が射程内に入ったときその火の玉を´喰らった´。
「な、なに、バカなファイアーボールが消えただと!?」
俺はレッサーデーモンが一瞬硬直したときに、駆けた勢いにのって大剣を降り下ろした。
「な、ま、待ってく─」
悪魔の言葉に耳を貸さず、そのままの勢いで大剣を降り下ろし、右肩から入った剣は有無を言わさず、レッサーデーモンを切り裂いた。
そのままレッサーデーモンを喰らい、魔方陣のある地面も喰らい、魔方陣を復元できないよう、俺の内で作ったコンクートのようなものを地面に流し、固めておいた。
その時完璧にライフドレインが消えたのを確認して、他の魔方陣にもレッサーデーモンがいるだろうと思い駆け出そうとしたとき、俺は妙な胸騒ぎを覚えた、ライフドレインが消えるのがあまりにも早すぎたのだ。
まさか!俺は急いで村に向かって全力で駆けた。
すると村の方から焦げ臭い臭いと鉄のような臭いが漂ってきて、村の方から火の手が上がっていることに気づいた。
俺が村についたときそこは地獄のようだった。
村全体が燃えて、村人達が血を流して倒れていた、そこに大人や子供など関係なく、見るからに致死量の血が流れていた。
俺は村のなかで暴れているゴブリン達を切り伏せながら村の中心に向かって走った。
そこには四体のレッサーデーモン達が村を焼き、村人をいたぶりながら、殺害している光景があった。
そして俺はいままさに殺害されたのがドルシアだと気づいた。
その時、俺の中で何かが切れる音がした。
´固有スキル[狂人化]が発動しました´
それから俺は文字通り´狂った´のだった。
「アヒャヒャヒャッヒャヒャ、アァハハッハハ」
そこで俺は叫び声をあげてレッサーデーモン達に突撃したのだった。
「む?おう、忌々しいオーガではないか、もう戻って来たということは、ラドムスは殺られたのか、ろくに時間稼ぎもできないのか。しかし、オーガはバーサーカーを使ったのか、狂ったやつなど我々の相手ではないわ」
俺は腰に差していた太刀を左手に持ち、大剣を右にもって、レッサーデーモン達に飛びかかった。
「馬鹿が、燃え尽きろ[ファイアーボール]」
俺はさっきと同様止まることなく突っ込み、火の玉を喰らい右手の大剣でファイアーボールを放ったレッサーデーモンに斬りかかったが、他のレッサーデーモンによる、横からの蹴りにより俺は吹き飛ばされた。
「ありがとう、助かったよ、レイモン、しかしまさかファイアーボールを無効化するとはね、魔法が得意な我々デーモンには相性が悪いようだね、四人で一斉にいくしかないかな」
俺は吹き飛ばされたながらもそこらじゅうに転がってる、ゴブリンと人の死体を喰らっていった。
「あのオーガ、死体を吸収していってるだと!」
レッサーデーモンの驚愕など気にせず、俺はまたレッサーデーモン達に突撃した。
一番近いレッサーデーモンに右手の大剣で斬りかかり、避けられたが左手の太刀で次撃を放ち左腕を切り飛ばした。
その次に後ろから迫り来るレッサーデーモンを元々高かった身体能力がバーサーカーにより一段階上昇していたので、右手の大剣を手放し、そのまま右手で掴み、地面に叩きつけて左手の太刀で首を切り飛ばし、そのまま喰らった。
「なんだ!あの化け物は馬鹿げているぞ!」
「落ち着けジャック、まだ三人で力を合わせれば勝てない相手ではない」
「そうだな、レイモン、相手は冷静な思考を失っている、冷静に対処すればいけるはずだな」
「そうだ、いくぞ!」
レッサーデーモン二体は俺に向かって突撃し、左腕を切り飛ばされたレッサーデーモンは魔法を俺の射程外に放ち、砂煙を起こした。
砂煙の中から飛び出した二体のレッサーデーモンは、左右から俺に攻撃を放ってきたが、俺はそれを後ろに反って避けつつ、左のレッサーデーモンに右足で蹴りをはなった、しかしレッサーデーモンは体全体で俺の蹴りを受け止め、俺の足を掴んだ。
右からくるレッサーデーモンに対処すべく、俺は左足を地面から離し、空中で回転し足を掴んでいるレッサーデーモンに蹴りを叩き込んだ。
それから着地して、右のレッサーデーモンを太刀で切りつけようとしたとき、何かが飛んでくるのが見えたので喰らおうとしたが、それは生きたゴブリンだったので吸収できず、攻撃を中断して、後ろに飛び退いたが後ろにまわっていたレッサーデーモンに蹴りを叩き込まれたが今度は吹き飛ばされないよう踏ん張り、足を掴んで、飛んでくるゴブリンに叩きつけた。
そのまま足を離さず地面に叩きつけて、右足で頭部を粉砕して、レッサーデーモンを殺して、その死体も俺は喰らった。
残るはレッサーデーモン二体だ、そのうち一体は左腕を切り飛ばされていて、レッサーデーモンは絶望的な状況に置かれており、オーガより、身体能力の劣る自分達では、既に逃げることもできない状況まで追い込まれていたのだった。
「も、もうだめだ、あれには勝てん」
「だが、逃がしてくれそうにもないんだぞ!どうするんだ!」
「腰の抜けているゴブリンどもを生け贄に投げつければ逃走できるかもしれん」
「な、なるほど、それしかできそうなことはないな」
そして、レッサーデーモンはゴブリン達を掴もうとした時、オーガから目を離したのがいけなかった。
狂ったオーガは持っていた太刀を投擲してき、ゴブリンを掴もうとしたレッサーデーモンの頭に刺さり、それに驚愕してるうちに接近を許したレッサーデーモンは、オーガによって頭を握りつぶされた。
近くに転がってる死体を喰らっていき、新たなユニークスキルの[貪る者]を獲得したと、同時にアベルは進化を果たし、ハイ・オーガに進化した。
´種族進化したことにより[喰らう者]と[貪る者]を統合し、新たな能力、[貪食種]を獲得しました´
「アーッハハハハアヒャハハヒャヒャ」
そんな声など聞こえていない狂ったアベルはその場で笑いながら、
泣いていたのだった。
やっとちゃんと戦えた気がしますね。アベルはこれからどうするのだろうか!お楽しみに(^q^)




