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子供が四人になりまして。

作者: 七草せり

突然子供が二人増えた。小五と小ニ、女の子と男の子。

別に養子を迎えたとかでなく、ただ単にママ友の子供を学校の終わりに面倒を見るだけで……。


ママ友とは子供が幼稚園の頃からの仲で、昨年晴れて離婚をし、我が家の直ぐそこに越して来た。

離婚の際、色々と助言や手続きの同行などをした私。

部屋探しにおいても、同行し物件を見て回った。


そんなこんなで彼女が二人の子を引き連れ近所に越して来た。

仕事もさり気なく紹介し、いざ働き始めた彼女に代わり、子供達の面倒を引き受けた。


子供同士もまあ仲良く、上の小五の女の子はうちの小三女子の面倒を見、小ニの男の子はうちの小五男子に懐いている……。


お泊まりの際は二つの布団で騒がしく四人で寝るなど、兄妹の様である。


しかし私に新たな悩みが生じた。

人間に不可欠な"食"である。


うちの子の好みは当然ながら知っている。

しかし他所のお子様の食の好みは知らない。

ママ友曰く、食べず嫌いなお子様達で好き嫌いが激しいらしい。


まあ週一の割り合いで買い物ご飯を共にしていたので、大体は分かっていたが何を食べて何を食べないかは無論知る由もなく、初めてうちで食事をさせる時は頭を悩ませた。


好きな食べ物をリサーチし買い物へ行くが、うちの子供も好きで無ければならない。

肉が好きと聞いていたので取り敢えず肉コーナーを物色する。


「肉……。 何肉を食べるのだろうか」


無難に鶏肉をカゴに入れ、また考える。

……量的にはどうだろうか。


とにかく小五の女の子は食欲が旺盛なのだ。

うちの小五男子もまあ食べるが、それに匹敵、いやそれ以上かも知れない。

だからと言って無駄に太いとかでなく、縦に伸びるから羨ましい。その身長、うちの子に分けて頂きたい。


悩んだ結果普段より多めに肉を購入した。

自慢できない私の料理の腕を考え、親子丼のメニューを浮かべ、他のコーナーを回り帰路に着く。



子供達が学校から帰宅し、家が何時もより騒がしくなる。

宿題を済ませ一斉にリビングが静寂に包まれた。


……ああ、ゲームか……。


皆それぞれゲームと格闘。宿題の時は上の子が下の子を見てやり、サッサと終わらせた。

ゲームとなると素晴らしく集中力が増すらしい。

何とも言えぬ気持ちになりながら台所へ行き、夕飯の準備に取り掛かった。

さて米でも炊こうと思いまた悩んだ。


「米、何合にしよう……」


当然子供四人にママ友と私の分を考える。

「……五、五号炊きの炊飯器、取り敢えず五号で間に合うかな」


米を洗い炊飯器にセットし、ボタンを押す。

便利な世の中に感謝し鶏肉と玉ねぎを冷蔵庫から出し、玉ねぎを刻む。


玉ねぎを鍋に入れ軽く炒め鶏肉を投入。

大きな鍋に沢山の鶏肉達が炒められていく。


私に何かを求めてはならない。料理程苦手な物は裁縫くらいだ。

味付けなどをしている内に子供がまた騒がしくなり始めた。


ああ、お腹が空いてきたのだろう。我が家の女子が様子を見に来た。

「今日は何作るの?」

鍋を除きながら聞いてきた。そして問いの答えを丸ごと無視し、 「シチュー?」などと検討違いな事を言った。


何処をどう見たらシチューなのか、いや、見方によってはルーを入れる前のシチューに見えるのかも知れないが、醤油で味付けをしてあるし、明らかに色が違うだろうと言う突っ込みを呑み込み 「今日は親子丼だよ」と再度教えた。


気に入らないのか満足したのか、答えに対する返答はなく彼女は台所を後にした……。



味噌汁と簡単なほうれん草のサラダを作りテーブルに並べる様子供達に指示をし、炊き上がったご飯を茶碗によそった所で考えた。

今更だが親子丼で良かったのか。いやもう遅いが……。


私は丼にするのをやめ、深皿に具材をよそり大きめのスプーンを用意した。


子供達それぞれ好きな量を取れる様に。


さて、いただきます。の合図と共に皆が食べ始める。

一人一人が具材をご飯に乗せていくのは良かったのだが……。


「肉が足りない……」


明らかに肉が足りなかった。


メインは親子丼。他のおかずなど考えもしなかったし、足りると思っていた。

あっという間にメインが無くなり、誰々が多く取ったなどの喧嘩が始まりそうになる。


やはり丼にしておくべきだった……。

変に気など回さずとも良かったのだが致し方ない。均等によそり直し食べさせた。


味噌汁があるし味噌汁ご飯にでも何でもして欲しい。

何時もより多めの食材を相手にし、私は疲れた……。


案の定味噌汁もご飯も空になり、母達の夕飯が無くなった。

ママ友に『夕飯無し』とLINEし、弁当を会社の帰りに買って来てもらう事になり。

明日の夕飯のメニューを考え頭を抱えた。


食べる時は四人で五号のご飯をたいらげる。

足りる時は四号で大丈夫。


いつの間にか私の頭の中にそんな事をメモした。


こんな生活がいつまで続くのか。私の作れる物など限られているのだ。

まあ量がある物なら大体いけるか。など一人考え、今日も夕飯のメニューを考えた。



一カ月程そんな生活を続けていたが、ママ友が仕事を辞め、一緒に夕飯を共にする事はあったものの、やっと元の生活に戻りつつある。


その間、小ニの男の子が体調を崩し面倒を見たりなどしたが、私のバタバタは落ち着きつつある。

しかし彼女がまたパートなど仕事を始めたら……。またバタバタとするのだろうか。


束の間の休息だろうが、平和な夕飯を切に願う。

賑やかなのはいいけれど、四人の母は流石にキツイ。

世の中子沢山の家は多々あるが、やはり二人で良かったと思ってしまう。


しかし働かずとも毎月の養育費をガッツリ貰い、慰謝料をもぎ取ったママ友は働く気があるのだろうか……。

余計なお世話かと思うけれど少し羨ましいなと思う。

けれど母子家庭は色々つらい。貯金はしっかりしなければと、自分もそうだったと改めて思い直した平日の昼下がり。


体調を崩した小五男子の世話をしつつ、夕飯どうしようかと頭をひねった。

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