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「……まずい」
しかし、少女の口からは、思った以上に辛口の評価が返ってきた。
「あれ、そんなはずは……」
一口スプーンですくってみるが、味はそんなに悪くない。
「こんなもんじゃない?」
「……そうかしら」
しかし、彼女は不服らしい。
もう一口すすってみるが、間違いなくいつも通りの味……そう思った時に理解した。
僕が毎晩作って食べているものは、あくまで――奴隷の味なんだ、と。
限られたひどい材料で作る、調味料を水で溶かしただけのスープ。
それは、味というより生命を繋ぐことに意味を置く。
そもそも僕は料理人じゃない。
料理人に雇われている奴隷というだけ。
誰かに教わったわけでもないし、
普通の人が『美味しい』と感じるであろう食べ物なんて生まれてから食べていない。
毎晩一人で食べているのは、奴隷が食べる物の味だ。
そう思うと、急に悲しくなった。