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裏口のドアが開いて調理場の光が漏れると、ゴミ箱に手をかける影が浮き彫りになった。
そこにいたのは猫では無い。
人間がゴミ箱を漁っている姿だった。
背が低いのだろうか?
上半身をスッポリと大容量のゴミ箱に突っ込んだまま、
下半身をパタパタと宙に浮かせている。
「あ、あの……」
とりあえず、ゴミ箱から出たままの下半身に向かって声をかけてみる。
すると、中から上半身を起こして人間がこちらを見た。
口に何かを加えたまま、
「……もぐ?」
と、よく分からない返事をした。
僕は目をこすって闇に慣れさせると、その正体が徐々に明らかになる。
僕と同じくらいの年齢だろうか。
旅人風のマントにスッポリと身を包んだ、小さい女の子が姿を帯びてきた。
ロングヘアと、どことなく冷たく鋭い印象を持つ目が印象的だった。
「もふ、もぐ?」
どうやら残っていたソーセージを口にくわえながら、何か言っている。
「ん~と……美味しいですか?」
「……まずい」
「ですよね」
「でも……うっ……」
そう言うと、彼女はヘタヘタと倒れこんでしまった。
「ちょっ、大丈夫ですか!?」
「お腹すいた。一歩も動けない」
口調は冷静だったが、その姿は駄々をこねる子供と一緒だ。
とりあえず、女の子にゴミ箱を漁らせるわけにもいかないと思い、
「ええと、とりあえず中に入ります?」
「……うん」
僕は、彼女を厨房に招いた。