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「おら、奴隷! 早く飲んだくれからオーダーとってこい、クズ野郎!」
「は、はい!」
夜になると酒場も賑やか……というより男たちの酔った叫び声で溢れる。
悪の吹き溜まりという言葉が非常に似合う環境だ。
多くの客の目当ては、客同士で勝手に開催する違法ギャンブル。
もちろん店側にとっても暗黙の了解である。
ちなみに、店で僕に与えられている役割は、雑用兼ホール係。
奴隷である僕が調理することは一切許されていない。
カーストの風習的に、料理を振舞って金儲けしていい職業は料理人のみらしい。
そもそも奴隷の作った料理なんか食えないという人間もいるらしく、
そんなことが客に知れたら店の信用問題に直接関わるのだという。
「奴隷くん、適当に羊の肉焼いて持ってきてくれや!」
「はい、かしこまりました」
「おい奴隷! とっとと酒もってこいボケ! ぶん殴るぞ!」
「は、はい。ただいま!」
という具合に、ギャンブルの調子によって客の態度もそれぞれ。
特にギャンブルのイライラを、浴びるよう酒を飲んでごまかす客は、タチが悪い。
「ちっ、おい奴隷! ちょっと一発殴らせろ!」
と言って僕を殴る客も結構いる。もう慣れたけど。