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朝七時。
「このクズ野郎!」
という大声と共に腹を蹴り上げられたところで目が覚めた。
腹への衝撃にむせながら、酒場の床を転がる僕。
「奴隷の癖にいつまで寝てやがる! さっさと掃除をしろ!」
少しむせながら、顔を上げると腹を蹴った張本人がそこに立っている。
スキンヘッドに鉢巻、頬に切り傷、薄汚れたシャツに大柄な体。
ガランこと店長だ。
「ゲホッ……すいません、今すぐ準備します」
「まずトイレの掃除からだ! 早く行け!」
そう言われた後、右頬を平手で打たれた。
(また一日が始まる……か)
おぼろげにそんなことを考えながら酒場のトイレにある鏡を見る。
ちょっと日焼けしたような小麦色の肌の自分が写っている。
着ているのもボロボロのシャツにハーフパンツ。
今年で十四……いや、十五歳だったかな? 忘れた。
ともかく、それぐらいの年齢の少年が鏡の向こうにいる。
さっき店長に張られた右頬が少し腫れているが、そんなのいつものことだ。
仕方ない。僕は買われた奴隷だから。
それより、早く店内の掃除をしないと今度は鉄拳が飛んでくる。
僕は、異臭の放つトイレをタワシでこすり始めた。