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「……ひどい顔」
「前にも、その言葉聞いたような気がするよ」
また腫れてしまった右頬に、水で濡らしたタオルを当てる僕。
「あれが、アナタの雇い主?」
「うん。ここの店長」
「……そう」
「でも分かったでしょ? 僕は奴隷でしかない。どうやっても奴隷以上にはなれないよ」
「私が聞きたいのはそんな言葉じゃない」
「え?」
「少なくともアナタより死んでいい人間は幾らでもいる。さっきの男も。それだけ」
そう言うと、彼女は出て行ってしまった。
「……いくじなし」
という言葉をすれ違いざまに残して。