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「ちっ、忘れ物取りに店へ帰ってみれば……」
「て、店長。これは、その」
「うるせえ!」
右頬に衝撃が走り、そのままテーブルを巻き込んで僕は倒れた。
「奴隷のお前に口答えする権利なんかねえよ。まして、女なんぞ連れ込みやがって」
店長は、彼女の方を見る。
彼女もまた何も言わずに店長を見返す。
「ほぅ、なかなかカワイイじゃねーか」
そう言って、彼女の顔に手を添えながら品定めする店長。
「どうだい、こんな奴隷と遊ぶぐらいなら俺の女にならねーか? ハッハッハ」
悪ふざけ半分の言葉で彼女を遊ぶ。
しかし、彼女の反応は冷ややかだった。
「……で……い?」
「あ?」
「死んでくれない?」
「なっ!? なんだとコラ!」
逆上した店長は、彼女を殴ろうと腕を振りかざす。
しかし、彼女の鋭い視線が店長に突き刺さる。
氷のように冷ややかで、ナイフのように鋭利な眼。
直感的に――人を殺す眼、という文字が僕の頭をよぎった。
怒って赤くなった店長の表情が、一瞬で底冷えするように白くなった。
「う、うちは乞食に出す料理は置いてねえんだよ。あ、遊んでねーでとっとと出て行け」
そう言うと、倒れたままの僕に蹴りを見舞う。
「おい奴隷、次にこんな気味の悪い女連れ込んだら承知しねーからな。くそっ」
ようやく店長は店を出て行った。