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次の晩。
同じように椅子と机をセッティングして厨房で待っていると、やはり彼女は現れた。
もっとも、今日は手ぶらじゃなかったが。
「はい、バターに牛乳、羊肉、野菜、調味料」
「こ、これどうしたの?」
「……拾った」
「そんなわけないでしょ」
どうやって入手したのか教えてはくれなかったが、
彼女は大量の食材が入った袋を持って厨房に現れたのだ。そして、
「はい……これ」
錆びて茶色の刃に変色していたはずの包丁が、
新品のように綺麗な銀色の刃に換わって返ってきた。
「これ、どうやって?」
「砥いだ。他の包丁はまだ時間がかかる」
確かに方法として砥いだのかもしれないが、
あのボロボロだった包丁をここまで見事な状態にするのは至難の業だ。
鍛冶屋にでも頼まないと難しいだろう。
食材といい、包丁といい、一体どうやったのか不可思議な状況だったのだが、
「……お礼だから」
と、彼女に何を聞いてもそれしか言ってくれなかった。