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一章 会

黒い髪をなびかせながら俺は剣を持って走っていた。

向かう先には2メートルと20センチほどもあるの鋭い爪を持ったゴツゴツしたゴリラのような生物がいた。2人の距離が3メートルほどになった時、その生物は大きな右腕を振り上げてすごい勢いで俺に向かって振り下ろしてきた。剣で受けようかと思ったがなんせ相手は馬鹿でかい。きっとそのパワーも相当なもので、剣で受けたら力負けしてしまうだろう。と、判断した俺は思いっきり左前に跳んだ。

間一髪で相手の右腕の下を潜って背後に回った俺は両足で踏ん張って少し砂埃を巻き上げつつブレーキをかけて振り返った。

相手の右腕はさっきまで俺がいた場所に振り下ろされ、音を立てて土の地面をえぐっていた。剣で受けてたらやばかったな、と思いつつ俺は相手の首もとに剣を突き刺した。

「そこまで!今日の訓練は終了とする。」

俺が訓練用の擬似魔物の頭と体を切断したとほぼ同時に中年の男がそう叫んだ。

俺は持っていた剣をおろして深く深呼吸をした。

今日も酷く疲れた。そして死にかけた。だがもうそんなことにすら慣れてしまった。

剣を担ぎ、俺はいつもと同じように寮へと帰っていった。


背後では先ほど切った擬似魔物の硬そうな皮膚に覆われた体と頭がポリゴンになって消えていった・・・



 この世界には魔物がいる。

当然魔物は食べ物を食べる。その食べ物は主に人間だ。

テオは何十、もしかしたら何百かもしれないほどの種類がいて、それぞれ差はあるが多分全てが普通の人間よりも強いだろう。何もしなければ人間はただ食われるだけだ。

だが人間は頭が良い。兵器や戦士を作り上げ魔物と戦った。いや、戦っている。

今俺がいるこの施設は魔物と戦う戦士を育てる場所、グライス育成所だ。



 俺が寮について自分の住んでいるの部屋のドアを開けると

「お帰り、ダルク。」と銀色の髪の少年が剣を磨きながら声をかけてきた。

こいつは俺と同じ部屋に住むジャンヌ・ブライトネス・セピアというやつで、俺と同じ剣士だ。

だがこいつの剣は全長2メートルを超えるほどでかい。なのにジャンヌの体は細い。

俺は最近こいつが実は人間ではなくロボットか何かじゃないかと疑い始めている。そうじゃなきゃこんな体でこんな剣を振り回すなんて不可能だ。あとジャンヌは男の俺が言うのもなんだが凄く美しいのだ。凛々しい眉の下にどこか怪しげなグレーの瞳、スッとした鼻の下に薄い唇。考えれば考えるほどこいつが人間から離れていくのでもう考えるのをやめた。


ちなみにこいつは俺のペアでもある。

俺がこいつとペアを組んでいる理由はこの学園の制度にある。

この学園は良い成績であればあるほど学園の待遇がかわる

例えばこの部屋。

通常なら2人で1部屋、ましてや個室、トイレ風呂付なんてありえない。

ひどいところは3,4ペアで一つの部屋に押し込まれてトイレ、風呂は共同のものだ。

だから俺はこいつとペアを組んだ。飛びぬけて強かったこいつと。

この学園の1番怖い制度が処刑と呼ばれる制度である

名前から予想できるかもしれないが殺されるのだ。成績の悪いものが見せしめに。

もちろんそう起こることではない

成績が悪いものは死に物狂いで努力するからだ。

頑張らなければ本当に死ぬのだから。


そんなことが起こらないよう俺はこいつとペアを組んだ。

そして俺たちは今この学園最高の設備の元、生活している。



「あぁ、ただいま。今日は早かったんだな」

「ここでだせる擬似魔物はたかが知れてるからな。

 どれだけやったって時間の無駄だって言って帰ってきたぜ」

すがすがしい笑顔でそう答えてくれたが、やっていることは物凄いことだ。

教官もこいつの世話は大変だろうなぁと頭の中で考える。もちろん口には出さない。

「流石、ここのトップは言うことが違うね。

俺はそのたかが知れない擬似魔物相手に毎日死にそうな思いしてんだけど。」

「合計20数キロの重りつけてここの最高レベルの擬似魔物相手に全力出してないお前が言うことじゃないと思うんだが?」

「本気じゃないだと?笑わせるな

 本気でやってなかったら今頃この世界にいないよ」

これは紛れも無い俺の本心だ。

「そうかい。じゃぁ本気になったときを楽しみにしているよ。ダルク。」

話しながら剣の手入れが終わっていたジャンヌは剣と道具を担いで自分の部屋へ戻っていった。

俺は本気で何を言っているのか分からない。

「お、おい。何だよそれ。」

「まぁ気にすんなって。そのうち分かるさ。」

気にするなと言われても無理な話だがこれ以上何か言っても無駄だろう。あいつの性格は一応理解しているつもりだ。謎は多い男だが。

「気にすんなって言われても無理だっつの。」

一応つぶやいておいた。

まぁ何の返事も返ってこなかったが。

「シャワーでも浴びて軽く寝るか。」

俺は自分の部屋へと歩いていった





 ジリリリリリリ!!

「1号室ジャンヌ・ブライトネス・セピア。同じく1号室ダルク・ホテプ・テオイ。以上2名は5分以内に第2会議室に来い!」

俺の今回の目覚ましはアナウンスを知らせるベルの音だった。

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