夢?~ディアナ・ルード~
わからない。
非常によくわからない。
ここ数日、熱で意識が朦朧としていた自分。
なんとなく、記憶に残っている残像を思い出すと、
顔に熱が上がってくる。
「ルード?」
あれは、本当にルードだったのだろうか。
声に出してみたところで、本人はいつも通り、ラトルワ帝国にはいなかった。
自分もいつにもない醜態をさらしていたとは思うが、
なによりも、疑問なのは、彼の口から出た1つの言葉。
「ディアナ」
ここ数年、いや、もしかしたら出会ってから
名前で呼ばれた記憶がない。
そして、異様に優しかったように思う。
どう考えてもおかしい。
熱が出たから優しくしてくれた?
そう考えられるほど楽観的に自分はできていない。
はぁ。
あれは、やっぱり夢・・・。
弱っていた自分の妄想なのだろう。
そう考えると悲しくなる。
はぁ。
どうしたら、どうしたらあの男の内側に入れてもらえるのだろうか。
自分はいつも外だ。
エリザに、ルヴィウスにアリスにアルト。
どう考えても自分とは態度が違っている現実。
どうして私はあの中に入れてもらえないの?
私は…
ルードに嫌われているから。
その答えが簡単にわかってしまうことが悲しかった。
それでも、
婚約者という立場を手放すことができない自分が悲しかった。
近いうちに、その立場すらなくなるのではないか。
「エリザの方がいいんじゃない?」
「なんでディアナ様なの?」
婚約者になったら、変わると思っていたのに。
侍女たちの噂におびえる自分が惨めだった。
ラトルワ帝国、第一皇子、ルードヴィヒ(21)、婚約者ディアナ(18)