熱~ルード・ディアナ~
「なんでいるのぉ?」
いつものような睨みつけるような視線ではなく、
トロンとした熱っぽい視線。
誘っているようにしか思えないのだが、
どうやら本当に熱があるらしい。
「ルードぉ?」
舌ったらずな言葉に思わず本音が出そうになるが、
いくら熱があるからといって、油断できない。
「自分の体調管理くらい自分でやれ」
トロンとした瞳にジワっと水滴が溜まるのがわかったが、
無視して続ける。
「これから1週間、誰とも会うこと禁止。」
「え・・・?」
不安を隠せない表情に内心微笑む。体調が悪い時ほど、
1人が心細いということを知った上での言葉。
ガタッ。
部屋から出ていこうと背を向け扉へ歩きだそうとしたとたん
あまり良くない音がした。
「ったく。バカめ。」
といいながらも、自分は嬉しさで顔が緩むのが止められない。
「いっちゃ、いやぁ。」
とはいえ、足元で、ベットから落ちたディアナが上を向くと、
刺すような冷たい視線をおくることは忘れない。
それでも、
かわいいなぁなんて思ってる自分は、屈折しているとは自覚している。
熱のせいで、普段だったらプライドが邪魔してできないだろう行動をしていることに、
本人は気づいているのかいないのか。
ずるずると歩いて足を離さないとしているディアナを、抱き上げてみる。
「俺がここにいないのはいつものことだろう?」
「いやぁ。」
涙でぐしょぐしょになった顔。
出てくる言葉と行動は、幼児のようだった。
ポンポンと、あやすように頭を撫でてみる。
「ひっく。」
少し落ち着いたのか、ぎゅーーっと抱きついたまま、
おとなしくなった。
「俺様は仕事あるんだけど?」
その言葉にビクっとなる体がかわいい。
「ご…めんなさい。」
上目使いで見上げられた顔には恐怖が浮かんでいた。
これは、婚約解消されるとでも思ったか?
「どうする?」
「・・・・」
「だまってちゃわからないよ?ディアナ?」
「?!」
ニッコリと微笑んだ俺様の笑顔に凍り付いてるディアナ。
あぁ可愛い。
「るーぅど・・・んっ?」
「おまえ熱い。」
「はぅ。。うつっちゃう…よ?」
「俺様が熱なんか出すわけないだろう?」
とりあえず、自分の欲望のままに動きたいのを抑え、
口づけだけですませたことに感謝してほしいところだ。
ラトルワ帝国、第一皇子、ルードヴィヒ(21)、婚約者ディアナ(18)