本質は?~アルト・ルード・アリス~
「あなた、またここにきて。帝国の皇太子がすることじゃないでしょう。」
「アルトも言うようになったね。帝国の皇太子に。」
アレギレアの図書室。馴染んではいるものの、不法侵入にほかならない人物をみかけて声をかける。
「嫌でも鍛えられるんですよ。環境でね。」
脳裏には、イワユル天才の部類の姉の顔が浮かぶ。
「昔は、あんなにまじめないいこだったのになぁ。」
「あんたみたいなMには負けないと昔から思ってたんだよ。」
いつの話だ。昔って。
「くくっ。Mねぇ。俺ってMにみえる?」
「罵られて追い返されても、罠かけられても、諦めないでここにくる男がMじゃなかったらなんだ。変態。」
ブラコン過ぎるのも変態の要因だ。
「ひどいなぁ。アルト。でも、もうちょっと人をみる目を養った方がいいね。」
「その通りよ。アルト。」
「げっ姉さま。」
コツンと結構分厚い本を頭に直撃させられ、痛みで涙が出そうになる。
「アリス。いいかげん。ルヴィウスをべリルに返さないかい?」
「何度も言ってますけど。絶対返さないから諦めなさい。それに、今のアルトじゃこの国任せられないもの。」
「ひ・・・ひどい。」
好き放題言われ続ける。
「まぁそれはそうだな。騙されやすそうだしな。」
「そうね。あなたの本質も見破れないようじゃ。まだまだね。」
「姉さま?」
「大丈夫。死ぬまでには良い王になるよう鍛えてあげるから。」
「いい。大丈夫だから。」
「遠慮はいらないのよ。ルヴィウスも手伝ってくれるし。」
「いやだーーーー。」
「あ、こら。逃げるな。」
去ろうとしたのに羽交い絞めにされて逃げるに逃げれなくなった。
「この国はアリスがいればとりあえずは問題ないな。」
「何?ランクつけてまわってんの?私が知らないとでも思ってるわけ?」
「何を?」
2人はアルトを無視して会話を続ける。
「エリザをこの国において、部屋に籠ってるふりして各国巡ってるでしょ。偵察?」
「どこからきいた?エリザか?」
「ふん。私とエリザの友情を甘くみないことね。ほんと。エリザもなんでこの男に仕える気になるのか不思議だわ。」
「俺様だからだろ?」
「なんかたまにあんたとルヴィウスが兄弟なのを実感して寒気がするのなんとかしてくれない?」
「俺のせいじゃないだろ。」
「ったく。いいわよ。それよりアルトね。」
視線がまた俺に集まる。2人で会話してくれててかまわないのに。
「これとこれと、あとこれ。明日までに読んでレポート。」
「・・・・今ある課題は。」
「それも含めて。」
「鬼。」
「ふふ。期待してるわ。ってルード。どこいくの。ルヴィウスは仕事中よ。」
ポツンと取り残された図書室で、深く安堵と後悔のため息をつく。
なんでルードに声をかけてしまったんだろう。
それが問題でないことに気付かないアルトは、
毎日、姉の課題に追われる。
アレギレア王国、第一王子、アルト(12)、第一王女、アリス(15)、ラトルワ帝国、第一皇子、ルードヴィヒ(21)