プレゼント~ディアナ・ルード~
めずらしく、ルードがこの1週間ラトルワに滞在している。
ほんとにこれは珍しい。
「どうしたの?」
ほんとに、信じられなくて、つい疑問を口に出していた。
「別にどうもしない。何?」
しれっと返されたが、疑問はつきない。
「なんでアレギレアに行かないの?」
しかも、なんで毎日、毎日私の部屋にくるの?
意味わからない。ほんと。
「行って欲しいの?」
「そんなわけないじゃない。」
「だよね。じゃあいいだろ?」
人をなんだと思ってるんだ。そりゃ、私は昔からルードを追いかけまわして、
実家を説得して婚約者にしてもらって。
結婚するまでずうずうしくもラトルワにいるわけだけど。
「よくないっ。」
気持ち悪い。幸せを感じる自分が。
「なんで?」
「なんで・・・って。」
そう。怖い。怖いのだ。
これ以上、長居されると。次にいなくなった時精神的にくる。
そんなこと、伝えられないけれど。
「じゃあ行こっかなぁアレギレア。」
胸に鈍い痛みが走る。泣きそうになる自分が悔しい。
ニタリ。そういう笑い方も目の前の男は良く似合う。
やだ・・・そう出かかったのに。
「1週間。楽しかった?」
なんだろう。違和感。この1週間感じてた違和感。
「じゃあ、これでおしまいね。」
なにがおしまい?それをきくには唇が震えて音が出なかった。
「欲しかったんだろ?俺との時間。」
「なっ。」
そんなことないなんて、言えなかった。でも、そうとも素直にうなずけなかった。
「なに・・・。それ。」
頭では、言われた言葉を理解しているものの、感情が追いつかなかった。
「じゃあ。行ってきます。」
しばらく、その場から動けなかった。
「やだ」
ルードがいなくなってしばらくしてから。
「やだよ。」
小さく声を押し殺した泣き声とともにディアナの口から洩れていた。
それを影から満足そうにみている男に気付かずに。
ラトルワ帝国、第一皇子、ルードヴィヒ(21)、婚約者ディアナ(18)