誕生日~アリス・ルヴィウス~
「ルヴィウス知ってたでしょう。」
巨大な庭園。色鮮やかな花々が咲き誇る
アレギレア王国の誇る王宮庭園。
その一画にある柔らかそうなクッションの上。
少し眠そうにビッシリと何やら書かれた紙を読んでる男に声がかかる。
「知ってたけど、関係ないだろ。」
その文面は、自分の兄からの帰ってこいというラブコール。
「ふふ。そうね。ルヴィウスには関係ないけれど、
あのバカを追いだす良い口実になったんじゃないのかしら?」
その横にいた銀色の髪と紫の瞳を持つ美少女は、
ルヴィウスが持っていた手紙を奪うと、一目もくれず破り捨てた。
笑顔が凄まじく綺麗なだけ怖い。
バカで通じるのは、もちろんラトルワ帝国の第一皇子。
ルヴィウスに異様に執着しているブラコン皇子ルードヴィヒのことだ。
手紙では飽き足らず、やつは1ヵ月に1度はアレギレアに訪れる。
エリザも連れて。下手をするとアレギレアにいる期間の方が長い。
「知ってただろ。あのバカも。」
自分の婚約者の誕生日くらい。
というより、やつは、ディアナについてほとんどのことを把握してるだろう。
知った上で知らないと、関係ないと突き放す。
それをみて楽しんでいるんだろう。
「苦痛に歪む顔が好きとかほざいてたからな。あのバカ。」
「相変わらず、性格歪んでるわね。」
「まぁ、歪んでなきゃ、ラトルワの皇太子なんてやってられないか。」
この世界の半数は占める大地を支配する大帝国ラトルワ。
その頂点を治めるには、たいそうな精神が必要だ。
「俺は、あの空気が嫌で逃げてんだから。俺は平和にまったり過ごしたいわけ。」
「誰よりも支配者向きの人間に言われても説得力ないわ。」
アレギレアにくる前まで、ラトルワの影の支配者は誰だったか。
「アリスが言っても説得力ないよ?まぁ、アリスが創った世界でまったり過ごすのも良いけどね。」
「まぁ、そうよね。いずれ、世界すべて私たちの手の内に。ラトルワ帝国なんて小さいわね。」
ふふふ。とたいそう綺麗な笑顔を創り出しているには、言葉がちぐはぐだった。
「そういう自信持ってるところに惚れ直すよ。」
「何?今更。私を誰だと思ってるわけ?」
「俺の愛しのアリス。」
アレギレアの王宮庭園は、数年前から、この2人専用となっている。
アレギレア王国第一王女、アリス(15)、ラトルワ帝国第二皇子、ルヴィウス(15)