かえでと蜂~アルト・モモ~
「メープルシロップと蜂蜜って何が違うの?」
問いかけるのは、10歳くらいの女の子。
「何が違うと思う?」
対するは、少女よりは少し上。14、15歳くらいの少年。
「むーーー。なんでアルトはいつも質問を質問で返すのーーー。」
むっとした顔の少女を気にせず、目の前の少年は笑顔で答える。
「考えてごらん?」
こうなったら無駄だと少女は理解していた。
「んーーーと。味が違う?」
「そうだね。どんなところが?」
「甘さかげん?」
「後は?」
「うーーん。色?」
「何色?」
「メープルシロップのが濃い蜂蜜色!ってあれ?あの色なんていうんだっけ。黄金?」
「じゃあ後は?」
「ぬーーー。なあにまだあるのー?」
だんだんイライラしてきた少女の頭にポンという音がなる。
「はい。」
渡されたのは、辞書。
「調べてごらん?」
「いぢわるーーー。」
「モモは頭がいいから大丈夫だよ。」
「うぅっ。いぢわるーーー。」
「そんなことないよ?僕もこうやって教育されてきたからね。姉様に。」
その陰りのある笑顔に、モモは何も言い返すことができなかった。
アレギレア王国のある日の日常
アレギレア王国第一王子、アルト(14)、侍女長の娘モモ(10歳)