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下山救世録 (Gesan Kyūsei Roku)  作者: Daophong
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第六章:怪師断情湖

**下山救度人げざんきゅうどじん**


物語は、大学生 **呂天陽りょてんよう** を主人公とする。

彼は師命に従い**下山**し、

昼は凡俗の学徒として学び舎に通い、

夜は\*\*道士どうし**として真の姿を現し、

**人間界にんげんかい**に潜む数多の**妖異ようい**、**邪祟じゃすい**、

そして**怪変かいへん\*\*へと立ち向かってゆく。


やがて、幾多の試練を経て友を得、

共に世を乱す闇を打ち破らんと誓う。


---


**陰陽両界いんようりょうかい ことごとく収め**

**邪物じゃぶつ現れし時 如何いかに破らん?**

**判官はんがんすらも 人間界に見えず!**


---


呂天陽は一路**下山**し、

天地を震わせる数百の戦いを経て、

**鬼侯きこう**、**仙妖せんよう**、**凶霊きょうれい**、\*\*邪神じゃしん\*\*と渡り合う。


友と共に\*\*六道三界ろくどうさんがい\*\*を突き破り、

\*\*歴劫れきごう**を乗り越えて**証道しょうどう\*\*へ至らんとす。


挿絵(By みてみん)

---

翌朝、呂天陽はいつものように早めに教室へと足を運んだ。

手にはあらかじめ用意していた水のボトルを持ち、のんびり歩いていく。

ただ、いつもと違ったのは――今日は教室にすでに一人の先客がいたことだ。


朝日が窓の隙間から差し込み、白いシャツに光を落とす。

その姿はまるで言葉では言い表せない美しさを放っていた。

呂天陽はしばし呆然と立ち尽くし、その光景に見惚れてしまう。


数分後、ようやく深呼吸をして気を取り直し、にこやかに声をかけた。


「今日は随分早いな。」


しかし、葉懐安は答えなかった。

手にしている一冊の本に集中し、一行一行を食い入るように読んでいる。


呂天陽は我慢できず、本の表紙を覗き込む。

そこには「人之在天 人在地之母」といった奇妙な文字が並んでいた。


「なーんだ、幻想小説か。

もっと大層なものかと思ったのに、くだらないな。」


そう吐き捨てたが、葉懐安は一瞥すらせず、本に没頭したまま。

その態度に呂天陽は少し苛立ちを覚える。


――そんなに高慢なのか?


痺れを切らした呂天陽は、彼女の手から本をひったくった。


驚いたように顔を上げる葉懐安。

冷たい視線を向けられると、呂天陽は豚鼻を作って舌を出すというふざけた仕草を見せ、言った。


「まだ分からんのだ。お前、いったい何者だ? どこの門派の出身だ?

それとも、俺たちはどこかで会ったことがあるのか?」


「知らない。お前に関係ない。」


葉懐安は冷ややかに言い放つ。

言葉を失った呂天陽は開き直り、卑怯な手を使うことにした。


「言わないなら、この本はもらうぞ。」


本を手にして得意げに振り回す呂天陽。

葉懐安は腕を組み、彼の様子を眺めながら、珍しく口元に笑みを浮かべた。


呂天陽はそのまま本を自分の鞄にしまい、得意げに言った。


「当ててやろう。俗家出身の自牙派の弟子だろ? 尼僧ってわけだ。」


「尼僧はお前だろ!」


葉懐安は顔を険しくし、鋭い視線を投げた。

その圧に押されつつも、呂天陽はへらへら笑いながら続ける。


「いやいや、ただの当てずっぽうだ。

本当はな、真面目な話があって来たんだ。」


そこで彼は図書館で遭遇した出来事を一通り語った。


葉懐安は顎に手を当て、真剣に思案した後、口を開く。


「死霊大王……その手の妖怪は、妖法を使って悪さを働く。

あれはナマズの精が千年修行して成った存在。実力は推して知るべし。

そして肝心なのは――水の命を持つということ。」


「はぁ? 水の命じゃなきゃ火なのか?」


「最後まで聞け!」


葉懐安が鋭く言い放ち、呂天陽は慌てて口を閉じた。


「この妖怪については聞いたことがある。

だが、棲処がどこにあるのかは知らない。

厄介で狡猾だから、正面から力押しで挑むのは得策ではない。」


「狡猾? その程度なら俺でも対応できる。

それに、奴の巣は断情湖にあるんだぞ。」


「断情湖……?」


葉懐安の目に一瞬、重苦しい色が宿った。

そして小声で呟く。


「まさか、あの場所とは……。」


「なぜだ? 情報は確かだぞ。」


葉懐安は小さくため息をつき、少し思案した後、静かに言った。


「授業が終わったら、一緒に行くぞ。」


「知ってるのか?」


頷く葉懐安。

呂天陽は承諾の声を上げた。


――授業を終えると、呂天陽はうんざりした様子で背伸びをした。

その隣で資料を片付け終えた葉懐安が立ち上がり、声をかける。


「行くぞ。」


「今すぐ? 準備くらいさせろよ。」


「準備はいらない。」


「万が一何かあったらどうする。」


「私がいれば何も起きない。」


自信か、それとも傲慢か。

呂天陽は鼻を鳴らし、机に突っ伏す。


「行かん。」


呂天陽の怠惰な態度に、葉懐安は呆れたように手を伸ばし、彼の襟首を掴んで引きずった。


雪のように白い腕が彼の首をがっしりと捕らえる。

呂天陽は窒息しそうになり、必死に叫んだ。


「ぐえっ! 死ぬ死ぬ……ちょ、待て!」


そのまま二人は教室を後にする。

クラスメイトたちは呆気にとられ、口を開けて見送った。


「呂の変人が、あの葉美人とそんなに親しいなんて……。」


「いつからそんな仲に? 李哥の好きな人を横取りするとは、ぶっ飛ばしてやる!」


後方の席で、ニワトリ頭に亀の刺青を入れた不良が、拳を握り締めながら不敵に笑っていた。


――校庭を並んで歩く二人。

周囲から無数の視線が注がれ、ざわめきが起こる。


呂天陽も囁き声を耳にし、顔を赤らめた。

こっそり葉懐安の様子を伺うが、彼女は相変わらず無表情で気にも留めていない。


最初は気恥ずかしかった呂天陽だが、次第に優越感が湧き上がる。

――少なくとも、他の学生より近くにいられるのだから。


地下駐車場。

様々な車が並ぶ中、葉懐安は赤い高級スポーツカーの前に立った。


車に疎い呂天陽でも、一目で高価なものだと分かる。


「乗れ。」


葉懐安が車に乗り込む。

呂天陽はドアハンドルを掴むが、なぜか開けられない。


困惑していると、中からじっと見つめてくる視線に気づく。


――この男、いったいどんな時代から来たのやら。


小さく頭を振り、葉懐安は諦めたように内側からドアを開けてやった。


乗り込んだ呂天陽は、好奇心を抑えられず尋ねた。


「この車、いくらするんだ?」


「二百八十万。」


「に……二百八十万!? なんてこった……。」


車は轟音を立て、一直線に断情湖へと走り出した。



---


挿絵(By みてみん)

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