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10-1 探し物は宝箱ですか?


 あの時、何もできなかった場所に戻ってきた。

 入場に“紅蓮の宝玉”を必要とするダンジョンに初めて足を踏み入れたのは、もう随分と前になる。初めてこのダンジョンに訪れたのは、この世界へやってきた半年後のこと。当時は動く石像に紅蓮の宝玉を割られてしまい、入場すらできずに引き返す羽目になったけど、そのおかげでイサハヤさんと出会った。

 いま思い返してみると、あれはあれで運が良かったのかもしれない。


「はあああッ!」


 ダンジョン前、動く石像戦。

 先に突っ込んだ私の胸は高鳴り、全身の筋肉は緊張で固くなっていた。

 チェスピース型の近衛兵はドスドスと跳ねながら大突進。しかし、力自慢なら負けやしない。ガントレットに魔力を込めて引き絞り、腰を捻りながら力任せに殴って後ろへと押し返す。力の差としては五分五分――いや、こちらが上か。


「ユニハルコンよりも……ッ全ッ然マシ!」


 確実に、前よりも戦えている。その手応えに、無意識に口角を吊り上げながらも押し返し、指先にピリピリと走る魔力を辿り、辺りを見回す。

 多分、このあたりに罠がある。……少しずつ掴めてきたような気はするけど、どんなものがやってくるかは、まだ分からない。それでも、見つける事が成長の一歩なきがする。

 私は声を振り絞るようにして叫んだ。


「朝陽、燈夜! 千早の詠唱が終わるまで、その前を守って!」

「千早は、あの石像の前、あと二メートルまで接近してから動きを止めて!」

「ミズキは、石像の頭上……色の違うあの煉瓦!詠唱が終わったら、あそこに弓を放って!」


 朝陽と燈夜がすかさず前へと駆け出し、飛来してくる石像蝙蝠の翼を双剣で斬り払う。石像とだけあって硬さはあるが、前に戦ったユニハルコンよりはずっと柔らかい。その隙に、千早が魔法の詠唱に入る。


「……聖なる光をもって、悪しき物を捕らえよ――ホーリーバインド!」


 光の鎖が石像の足を絡め取った瞬間、ミズキが風の矢を引き絞る。狙いは――“あの煉瓦”だ。

 天井近くに埋め込まれた、わずかに他とは色が異なる一枚。注意していなければ見逃すような、そんな微細な違和感をミズキも確かに捉えていた。


「……ここだ…ッ!――ウインド・シューター!」


 弓を引いた瞬間、風が唸る。矢じりに宿る魔力が軌道を安定させ、迷いなく真っ直ぐに突き進んだそれは煉瓦を打ち砕くと、パカリと口を開いたそこから――槍のような、巨大な矢が足止めした石像へと容赦なく降り注ぐ。

 一拍の静寂の後、石像の上半身に直撃したそれは、容赦なく全体を貫通し、床ごと打ち砕いていた。石片が飛び散り、砂煙が舞う。砕けた石像の残骸が、音もなく崩れ落ちると、私たちはようやく息を吐き出した。


「お……っどろいたぁ……上にあるから何か降ってくる系かなとは思ったけど、まさか一撃必殺なトラップなんて……」

「此処、まだ入り口前の庭みたいな部分だろ?よくもまぁこれだけ凶悪なもんを作ったよな……」


 朝陽が確認で近づいて、剣先で崩れた石像をちょいちょいと突く。しかし、いくら突いても石が崩れるだけで、復活の兆しは見えない。


「……俺たち、すぐに此処に入らなくてよかったよな」


 多分、あの時にこのダンジョンに潜っていたら――多分というか、間違いなくトラップで死んでしまっていたと思う。運よくダンジョンに進めたとしても、最後までたどり着けるかどうか。

 彼らは背後で様子を見守るイサハヤさんを見て、それから気を取り直して言った。


「イサハヤさん、さっきの戦いはどうだった?」

「…………ああ、随分と前よりも良い動きになった」

「あれっ、それだけ?」

「ほかになにか言う必要が?」

「そうだ。この人そういう人だった」


 もっと褒めてくれてもいいと思うんだけどなぁ。そりゃあよーしよしよしって馬鹿みたいに褒められるのも逆に怖い気はするけど、飴と鞭って言葉がありますし。誉めてくれてもいいんだけどな。そんな気持ちを含めてイサハヤさんを見つめてみる。しかしイサハヤさんはにぶちんで、全然気づいてくれなかった。

 そうして、紅蓮の宝玉を使っていよいよダンジョンに入った私たちは、難なくダンジョンを進んでいた。これも修業成果という奴だろう。万が一うっかりで発動しないようトラップ全てを作動させる作業は骨が折れるが、一度作動させておけば安心して探索が出来るというもの。


 それに、作業が多く探索する時間が多い分いくつか宝箱や、補充したかったポーションや、クラフトアイテムも入手できた。欲を言えばなにか目を惹くようなお宝があれば嬉しかったけど……ゲームにならうのならそういった激レアアイテムは中ボスとか、ボス撃破のご褒美になるんだと思う。

 じゃあ、その中ボスは一体誰になるか……なんだけど、考える私の前には、明らかにモンスターが入っていそうな宝箱があった。目を惹く場所にあるのに、いまだ鍵が壊れずに残っている宝箱……怪しい。

 オールドの言っていた事を思い出す。


「さて、次はミミックの見分け方でも教えてやろうか。……宝箱なんてのは、基本、疑ってかかれ。叩け。揺らせ。……疑え!」


 それに倣い、蝶番のついた後ろから叩いてみる。ゴンゴンと叩くうちに「ようやく人間がきた!」と蓋を開けるのは宝箱型モンスターのミミックだが……まさか蓋を開けた先で鋏み太刀を構える人間ふたりと、光球を灯した杖を向ける人間に囲まれているとは思いもしなかったようだ。


 考える間もなく、ミミックは中へと引きこもる。――籠城だ。


「こら!開けなさい!!君がいると色々まだあけてない宝箱かな?ってなっちゃうでしょうが!」


 まるで借金取りみたいに、ゴンゴンと音を立てて叩く。

 ゴンゴンゴン!ゴンゴンゴン!

 しかし、反応は無い。


「……ちょっとぉ……引きこもりじゃないんだから……出て来ないと宝箱ごとに壊しちゃいますよー」


 ゴンゴンと叩く音が、段々と強くなる。ミミックからしても借金取りのそれだ。あまりの恐怖に宝箱自体がガタガタと震え出し、千早が気の毒そうに言った。


「め、芽衣ちゃん可哀そうです……」

「え?!私が悪人?!」


 こうやって震えてるけど、ミミックなんて人を丸のみするモンスターなんだけど?!


 色々言いたいけれど、あんまり目を離して話し続けるのも少し怖い。震えたままのミミックを見てオオイともう一度叩いてみる。すると、もう一度宝箱が勢いよく開いて前に立つ朝陽たちは身構えるものの……そこから放たれたのは財宝であった。

 ポイポイポイと財宝が投げ出される。

 多分、命乞い的なものなのだと思う。

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