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1-3 タンドリザードは回復魔法で仕上げます♡

 

 さて、ここからは料理担当の出番である。

 まずは朝陽のスキル、マジックキッチンで目の前にキッチンを設置。これは元の世界に準拠したキッチンで、作業台、加熱調理機、流し台、収納庫はもちろん、調味料までを完備した優れもの。日本風に名付ける、どこでもドアならぬ“どこでもキッチン”なのだが――洞穴の奥深くにあるキッチンは、恐ろしく浮いていた。


「洞窟内に、現代のキッチンって、こんなにミスマッチなんだぁ……」


 なんというか、バグ感がある。それでも半年で使い慣れたキッチンがあるとホッとするもので、朝陽にはリザードマンの肉を解体するようお願いして、私は別に材料を揃えていく。

 小麦粉に、塩に、オリーブオイル。それからキャベツと人参、タマネギといったいっぱいの野菜たち。


「うーん……ラップチキンなら、やっぱりお野菜もいっぱい入れたいよねぇ」


 鶏肉と野菜をトルティーヤ生地でくるりと包んだメキシコ料理・ラップチキン。……別に野菜なんか入れなくても十分美味しいということは分かっている。でも、冒険者はついつい高カロリーなものばかりを食べて、健康が偏って太りやすかったり、病気になりやすいらしいので、しっかりと野菜はとっていきたい。

 キャベツと人参は千切りに。タマネギは薄く切って水にさらす。

 トルティーヤ生地は一から作るために小麦粉に少しの塩と、オリーブオイル、お湯を入れて優しくかき混ぜる。固まりが出来たらフッと空気を抜き、手の平で押し込むようにして粉気が無くなるまで混ぜたあと布巾を被せて三十分程度休んでもらうのだが――料理担当はまだまだやる事が残っているので休めない。


「芽衣、これでいいか?」

「お、ありがとー。いいお肉だねぇ」


 解体作業を終えた朝陽からリザードマンの肉を受け取る。鶏肉のように薄桃色で、臭みもないそのお肉。たんぱくで癖のないリザードマンはいつだって冒険者の味方だけど、二足歩行している生き物だっただけに、部位を聞くのは少し怖い。

 よって、なんとも浅い感想を返すと朝陽は「良い肉かわかってんのか?」とからかってきた。

「うるさいぁ、それよりも朝陽はこのあとも手伝ってよ」

「はいはい、元よりそのつもりだっての。それで、何をすればいい?料理長」

「今日はちょっとひと手間加えて、みんな大好きタンドリーチキン…じゃなくてタンドリーリザード……タンドリザードでも作ってみようかと」

「タンドリザード……名前は兎に角、うまそうだな」

「でしょ~!私の見立てでは、絶対に美味しく出来ると思うんだよねぇ」


 ラップチキンときましたら、中のお肉はタンドリーチキンなんてどうでしょう。

 まずは肉をいくつかに切り分けてフォークでぶすぶすと穴を開ける。朝陽には塩、カレーパウダーにケチャとマヨ。それからにんにくとしょうがで漬け込むための液を作ってもらう。

 本来タンドリーチキンはヨーグルトにも漬け込んで肉を柔らかくするのだが、ヨーグルトはさすがにご用意がないので、今回は別で代用しようとおもう。


「千早~、ちはちゃ~ん?」


 私は、たっぷりの猫撫で声で千早を呼び出した。


「は~い、芽衣ちゃんどうしました?」

「千早にお願いがあって……これに回復魔法かけて♡」

「…………またですか」


 その瞬間、ムウと表情が険しくなる千早と朝陽。まぁね、確かに言わんとすることは分かる。切り分けた肉に回復魔法をかけろだなんて、いくら相手がモンスターとはいえ死者を冒涜する行為だ。

 よって、倫理観をきちんと持っている二人は嫌がるが――


「でも、おいしくなるよ?」


 その言葉に「いや、それはそうだろうけど」と朝陽。

 彼の突っ込みは早い。


「いやぁ、不思議だよねぇ。前にネットで見たお肉にたくさんマッサージをしてあげたら筋肉が解れて柔らかくなったっていう記事があったけど、それがまさか回復魔法で代用できるなんて。……ほらほら千早っ、早くっ!」


 勿論、柔らかくする方法は蜂蜜であったり、ヨーグルトやマヨネーズでも出来る。でも、それら貴重な食材を使うよりも、休む間に回復する魔力を使った方が断然お得感がある。

 千早は特に聖職者として複雑そうではあったが、流石は日本人だ。美味しさを知っているだけにあらがえなかったらしい。彼女は最後まで「今回が最後ですからね!」とか「もうしませんよ!」と言っていたが、最後には回復魔法をかけてくれた。

 ……うん、また頼もう。


 そうして漬け込んだ肉と生地を休ませる間に洗い物を全て済ませて、しっかりと寝かせた生地は薄く伸ばして焼いていく。最後に漬けこんだ肉を焼くと一帯にはカレー風味な良い匂いが漂ってきた。


「う~……お腹すいたぁ……!カレーの匂いって本当に食欲そそるよねぇ……」


 香ばしくて、スパイシーで……匂いを嗅いでいるだけで口の中に涎が溜まる。

 くそう、ここに牛乳とヨーグルトがあればさっぱりとしたラッシーも用意できたのに……!後悔も半ばにトルティーヤの上に、野菜とタンドリザードを置く。くるりと巻いてみると結構なボリュームがあって、これって売れるのでは?とお金の匂いを察知したが、なんにせよ味見が必要だ。

 ひとまずは人数分を作って皿に並べると、芽衣は満足げに笑って声を掛けた。


「みんなごはんだよー!」


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