第四話 再誕
第四話です。
2日目
琴音に案内され洞窟へと向かう二人。
不思議だ。本当に不思議だ。
何も戦闘音がしない。まるで図書館に来たような……そんな感じだ。――1つも――というわけではないが一日に比べて音がとてつもなく少ない。
洞窟まで距離があるが戦闘音はない。予想だが一日目に脱落していく数が多すぎたせいなのか?考えていると剣も何かを察した。
「拳、何かが変だと思わないか?」
「あぁ、そうだな。戦闘音が少ない……。」
「そうだ、音が少なすぎる。念のため戦闘態勢に入れる準備をしておいたほうがいい。助けに行くなら慎重に行こう。」
「確かに……」
すると草木を抜け洞窟が見えた。
「あそこで私たちが見つかって私だけ逃げ切れたんだよ、でそのあと一瞬振り返ったらあの洞窟の中に連れていかれる黒石暖を見たんだ。」
琴音は焦りながら俺たちにあの時の状況を伝えてくる。
俺たちはいざ、洞窟に入る。
剣は入る前に、腕を空へと掲げる。
「何をしているんだ?剣。腕なんかあげて」
すると剣は意外な回答をする。
「私の剣を呼んでいる。」
は?
よくわからないが、1分……2分……3分…………………………10分ほど待って退屈していると、「来た。」と剣が言った。
すると シュンッ! シュンッ! 空気を切る音が聞こえる。ヒュンッ ドオオン!
砂埃が舞う中、剣は立っている。そこにはシルバーと赤色の大剣を持っている剣が見える。
その大剣は人の平均身長の肩ぐらいの長さまであり、形は長方形と言ったら分かりやすいだろうか、無駄な装飾はなくシンプルだ。持ち手にはよくわからない古代文字のような文字と【十 剣】と書かれている。
「それがお前の言っていた剣か?」
「あぁ、そうだ!かっこいいだろう?」
剣は自慢げにあの重そうな大剣を『ほらほら』見せてくる。俺があの大剣を持つと多分腕が上がらないと思う、いや腕が折れるほどだ。そんな大剣を軽々持てる剣はすごいと思う。
「え!?なになに?その大剣!すっごいかっこいいね!cool!」
琴音が剣にワクワクしながら近寄って話す。それに応えるように剣もこの大剣について話し出した。
「coolだろう?この剣はな、私がこのキャスティロやファクタジアができてから、ずっと一緒にいてくれた、数少ない友人なんだ。物が友達?と言うやつもいるかもしれないがその物1つ1つを大事にしていると『なくしたくない』『ずっと一緒に居たい』という気持ちが出てくるんだ。だからこいつは、こいつだけは、誰にも渡さない!」
琴音は剣のこんな熱い姿をみてビックリしていたが、気持ちは伝わったらしい。
「剣さんの気持ち良く伝わったよ……その大剣は大事なものなんだね。把握!そういえば剣さんってそんな感じでしゃべるんだ……ニヤリ」
剣は熱くしゃべり過ぎたことを今、気づき俺に背中を剣で突き刺したように……とはいかなかったが顔が赤くなっていてフードで顔全体を隠した。
「そろそろ助けに行こうか。」
「そうだね!」
二人の声が揃い、いざ洞窟に入る。
――かすかに聞こえる通信音――
「2……洞窟に……ました。」
拳達には聞こえなかったようだ。
トコトコッ カッ……
今のところ俺らの足音と小石を蹴る音しかこの洞窟はしない。常時、戦闘態勢。少し明るいが暗い、奥まで進んでいく。
「まだなのか?この洞窟は奥深いな」
「そうだな、多分私の予想だがこの洞窟の一番奥に黒石暖がいるはずだ」
「ということは敵もいっぱいいるんだよね、任せて私、擦り傷ぐらいの怪我治せるから!」
「わかった!任せるよ!」
「うん、いつかね」
ビュンッ!
「危ない!」
カッン! チリチリッ!チリチリッ!
剣と剣がこすれる音と同時に俺の背後には剣が大剣を持ち大男と張り合っていた。俺すぐに腕に力を籠め大男に放った。
大男は拳のパンチの反動で後ろに下がった。
「ありがとう。剣」
「拳、お礼はいらん。だがこれはどういうことだ、琴音!」
琴音は俺たちに背を向け、歩いて行く。笑って笑って最後に引き笑いをしてくるっとこちらを向いた。
「私はね、こんな世の中が嫌いなの。前の世界も嫌いだった。何だっけ?あぁ思い出した、日本っていう名前だったか。」
琴音は狂ったように話している。しっかりと立てていない。腕をぶらぶらとしている。
俺はつい聞いてしまった。「なんでこの世の中が嫌いなんだ」と。すると帰ってきた言葉は【殺意】だった。
『帰ってきた言葉は【殺意】だった。』というのは比喩だ。実際は顔をこちらに向けて人を憎むような殺したいような顔で見てきたのだ。
「やれ……」そう琴音は言ってさっきの大男が飛んで来た。俺は腕をクロスして守りの態勢にでた。
ドン!カン!ドン!大男のパンチに圧倒され俺は引きながら自身を守っていく。瞬間、大男が腰に腕を持っていき、さっき剣と戦っていた剣を持って俺に切りつける。
縦横斜め縦横斜め縦横斜め
『はやい!』
すると俺の腕と剣が摩擦をおこし火花が散った。その火花は床に落ち円を描くように燃え上がった。油のようなものでも敷いてあったのだろうか。周りがよく見えると思ったがふと燃え上がった先を見ると……!?――黒石暖――
二人の黒い服を着た人達に両腕を摑まれ、服は破られている。顔や太ももには赤黒い血、それは切り傷どころではない、黒石暖の身体から噴出した血は、皮膚の肉がめくれ、赤黒い血が地面に垂れ水溜りと化している。赤黒い血は完全に黒いところがある。これはある程度の時間が経っている。黒石暖はまだ命を手放したくないと訴えるように、こちらを見ている。
「…………て」
黒石暖は何かを言っているように口を動かしている。
「剣!!!!!!黒石暖を助けろ!!!!!!!」
俺は剣にこの洞窟全体へ聞こえるように叫んだ。喉が裂けるように叫んだ。
剣は明るくなったこの洞窟であの赤黒い黒石暖をみて絶望していたが拳の声が鼓膜を貫通するように、はっと我に戻り大剣を持ち、黒服の2人に、地面が揺れるぐらいに急いで戦いに行った。
『急げ!急げ!急げ!考えてを止めてはならない。戦いながらでも止めてはならない。』二人の考えていること第一位。
「邪魔だ!退け!」
シュウウウン――ガンン!
剣は黒服2人に大剣を左横から右に一直線に斬った。
ドカンッ! バキッ!
黒服二人は右へ一直線に骨が折れる音と一緒に吹っ飛んだ。剣は黒石暖に近寄り心配の声をかけた。
剣はじっと立っている。剣の周りは黒く(くらく)まるで自分だけの空気がある。誰も近づけない、そんな感じだ。
「何やってんだよ!剣、早く黒石暖を連れて逃げろ!」
剣はゆっくり語る。
「無駄だ」と……
「あ?早くしろよ!」
「だから無駄なんだよ!私は素人だけど分かる……………………死んでいる」
数年前、私はキャスティロという世界に来た。
そこは美しかった。理想の町。夢に見たファンタジーな生活。嬉しかった、この異常な事が起こるんだと二度見をした。
そして楽しい学園生活が始まるんだとドキドキした。
色々な人に出会えた。琴音さん、剣さん、拳さん。あなたたち三人に出会えて本当に嬉しかったです。私は不運なことに死んでしまうけれどこれからの余生を楽しんでください。
最後にわがままを言わせてください。
「私を助けて……」
「噓だろ……噓だと言ってくれ……だって、だってこれは学校のサバイバル検定だぞ?」
戦いながらでもその言葉を聞いた瞬間、体感的に時間が遅く感じた。これが瞬間的な哀しさなのだろうか。
俺は黒石暖に名を呼び続ける。
しかし返事はなかった。
大男を一度押し退け黒石暖と剣のもとへ走って向かう。
ダッダッダッ!
「黒石暖っ黒石暖っ!」
返事はない。
ただ、そこにあるのは、静かすぎる沈黙と、もう動かない身体。
現実が音を失い、頭の奥で何かがゆっくりと崩れ落ちていく。
理解より先に、心が泣いた。
目の前の「死」は、言葉よりも早く、胸の奥に鋭く突き刺さり、何もかもが一瞬で冷たくなった。
それが「終わり」なのだと、ただ、わかってしまった。
琴音に問い詰める。
なぜ黒石暖を殺したのか、なぜこんなことをするのか。
「殺した理由?簡単だよ、その笑顔が嫌いだったから。こんなことをする理由はあの人の命令だがら」
あの人?とはなんだ?
「あの人というのはいつか分かるさ、あ、はははははははhッ」
琴音はまた笑い出した。笑って笑って最後に引き笑いをする。
「そういえば、君たちも殺す予定だったんだった。さあ!お前らたち準備はできているか?」
そう言った琴音の背後からはとてつもない人数の黒服たちが大勢来た。殺意の塊だ。
「行け……」
そう言った琴音は大勢の黒服と一緒にファクタジアを使いながら襲ってきた。
炎・水・雷・超能力など……
俺は剣と一緒に戦闘態勢に入る。大剣を構え、俺は腕を構える。
右だ!剣、上から来るよ!拳。
いい連携だ。初めてにしては上出来だ。
大剣を構え右から来る敵をブンッ!と斬る。上から来る敵をアッパーで倒していく。そんな戦いが約50人ほど戦った。黒服は俺たちが軽く相手をできるほどの力だった。
だが黒服を倒した後にさっきの大男と今度は女性らしき人が俺たちの前に立ちはだかった。
俺らももう疲れているがこれを倒さないと外には出られない。戦うしかない。
俺と剣は背中を合わせて作戦を練る。
「俺らももうキツイ……だから本気を出すぞ……。」
「あぁそうだな。私は女性のほうをやる。だからお前は大男のほうを頼む……。」
「分かった。」
剣は俺の近くを離れ『こっちだ女性の黒服!』と違う場所で戦うことになった。
「さぁて……大男、決着をつけようぜ。」
「…………」
沈黙の中戦いは始まる。
さっきはとてつもないパワーだとわからされた。だがあの時はファクタジアを使っていなかったからまだパワーはでるはず……。
「行くぞ!」
最初に仕掛けたのは俺からだ。真正面に走る。それは人の形も見えないほどに速く大男の真下に行き、力を籠め放った。
グギュッ!
大男の腹に大きな一撃を食らわせた。
食らわせた瞬間、七色の火花が散った。大男が吹っ飛び、飛んだ一直線の線がよく分かる。炎の線が見える。
「……お前強いな。」
大男が言った初めての言葉だった。
「そうだろ?こっちはけっこう鍛えたんだよ。」
「そうか……ではこちらも本気で行こうか」
すると大男は腰から剣を出し、俺に向かって一直線に向かってくる。
キンッ!キンッ!ギギギッ
腕と刃がぶつかり合い、火花が散る。そのたびに手首が痺れ、腕が軋む。
激しい戦闘の中、大男は話しかけてくる。
「これは……殺し合いだ!殺してやる!」
何かに呪われたかのように殺意があふれ出ている。
プシャッッ
血だ……腕ももう限界だ。大男のスピードが速すぎて追いつけない。
息をする暇もない。睨み合い、読み合い、たぶん次の一手で俺が倒れるだろう。
血の匂いと砂埃が混じる戦場で、静かに、確かに命が削られていく――。
次で終わらせる!
俺は瞬間的に閃いた技で大男を倒すと決めた。
大男から一度離れ交渉を持ちかけた。
「おい!お前、今から俺の全力の技を撃つ。」
「……殺す」
大男は話も聞かず俺に向かってくる。
一か八かの一発……
腕を大きく後ろに引き力を籠める……こめる……
大男が近くに来た。
「死ね!」
今だ!――赫焉拳!
ドカンッ!
大男の腹には大きな穴が空いていた。その穴はきれいな円型で赫色の炎がパチパチ、メラメラと燃えている。
赫焉拳は「赫」は赤く輝く、「焉」は終わりや燃え尽きる意味を含む。燃え尽きるほどの決定打である。
プシュウ――蒸気音
腕が熱い……流石に初めての技となると疲れる。
大男は立ったまま死んでいた。
「勝ったんだ……」
俺は喜ぶ前に剣のもとへ向かう。腕と足を引きずりながら……
――俺は驚きを隠せず叫んでしまった――
――あまりも残酷だ――
剣は無数の剣に貫かれていた。
背中から腹へ、肩から腿へ、斜めに、まっすぐに、あらゆる角度から突き立てられた刃……
血は止めどなく流れ、地面を真紅に染め上げていた。鉄の匂いが空気を満たし、足元には濃く重たい湖のような血溜まりができていた。
だが剣はまだ立っていた。誰かを待つように……諦めずに戦っていた。
俺は、大剣を杖のように使っている剣をギュッと抱きしめ「もういいんだ、あとは俺がやる」といい、剣を壁に座らせて女性に立ち向かおうと思った瞬間。
グサッ!
振り返ると琴音が最後のとどめを剣に剣を刺した。
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
「まぁ?最後までとどめを刺しとかないとわからないじゃん?」
サイコパスだ……
琴音がとどめをさした瞬間ヒョイッと逃げ出すかのように女性の後ろへと隠れた。
俺はとっさに剣のもとへ駆け出し呼びかける。
「剣!剣!剣!十剣!」
ハア……ア……
「まだ息はある……え?」
かすかに聞こえた剣の声……
私を……立たせて。
俺はすぐに大剣と一緒に剣を立たせた。
そして剣にこう言われた。
「この大剣に手を……かざして」
言われるがままに手をかざした。するとこの大剣の今までの歴史、剣とこの大剣の出会いなどすべてわかった。そして俺の人生のすべてがここに刻まれたような気がする。
「いい?……来世にこの大剣に手をかざすと記憶が戻るから……」
「え?どういうことだ……来世っていうのは?」
「とりあえず……来世でまた会えたら仲良くしてね……」
赤黒い血ではなく透明な輝くしずくが地面に落ちた。
――ポトンッ――
彼女の眼は永遠に消えない輝きを持ち続け大剣を頼りに立ち、こう言うのだ。
再誕魔法――パグルスイットグランド――
辺りのエネルギーを吸収し視界が白で埋まった一瞬後、地獄のような紅蓮が全てを飲み込んだ。
この爆発は大規模とまではいかなかったらしい。
爆発したのはサバイバル検定の範囲全体とあの洞窟だけだった。
後々この事件は【検定爆発未解決事件】として歴史に残っている。
そこの事件には一本の大剣が事件現場に突き刺さっておりその剣の手持ちには古代文字と【十剣】と【十拳】という文字が書かれている。
人はその大剣を【十のけん】と呼んでいる。
再誕……もう一度生まれ変わる。生まれ変わってやり直す強い意思。
――ファクタジアの最悪とはなんなのか……それがあるのだとしたら誰が最悪を終わらすのか……――
まだまだ続きますよ!