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第6話 弟の真意

「す、李様……? どうされたんですか」


 訝しんでいる荷風に、李はすぐさま指示を下す。


「荷風! 今すぐ天雷たちに連絡して〈霊苑〉の方に向かうよう伝えて!」

「霊苑、ですか?」


 霊苑は殉職した鎮守官たちが眠る墓地であり、大鬼門の目と鼻の先にある。

 死後、鎮守官はパートナーだった霊獣と共に天界に召され、そのまま霊獣として輪廻転生すると信じられている。そして、天界から異形の進出を食い止めてくれるという言い伝えのもと、大鬼門と対峙する形で霊苑が配置されていた。


 荷風は、はっと何かを察して息を呑む。


「そうや。あの子は多分、お父さんとお母さんに会いに行ったんや」

 

 李たちの両親も、かつては鎮守官だった。しかし、父は高位異形との戦いで命を落とし、母は異形から受けた攻撃の後遺症によってみるみる衰弱し、やがて死を迎えた。


「……盲点でした。確かに、桃也様が唯一敷地外の場所で知っているのはそこだけです」

「それに、あの子はお父さんとお母さんが大好きやった。けど、同時に何で自分を総監として生んだんかってお母さんに八つ当たりしたりしてた。やから、会いたい気持ちと自分の生まれに対する鬱憤をぶつけたい気持ちが混ざって、あそこに行ったんやと思う」

「ですが、霊苑の近くには……」

「そう。大鬼門がある」

「承知しました。すぐ、兄上に連絡致します。柳義様たちにもこの旨をお伝えしておきましょう」

「頼むわ。うちはここを離れることが出来ひんから、あの子が戻って来るまでの間何とか結界を再構築できんか試してみる。要梅さん、桐玻さん!」


 荷風が早速広間を退出するのと同時に、李は縁側で戦い続けている要梅たちの方を向いた。

 刀を振るう手を止めないまま、要梅は応答する。


「全部聞いてた! 鬼門は封じたから、あとはコイツらを片すだけだ」


 桐玻も李を一瞥して言う。


「私はこのまま央殿に残って、また鬼門が発生した時の対処を……」

「いいえ、桐玻さんも大鬼門の方に行ってください!」

「えっ、でも……」

「自分の家くらい、自分で守らな示しが尽かんので」


 どうやら総監の覇気と威厳が戻ってきたようだ。

 桐玻は微笑んで頷く。


「分かりました」

「なるべく早うあの子を連れ戻して、結界を元通りにさせます!」


 要梅は振り返って李を一瞥し、また視線を異形に戻す。


「……出来る側の人間にも、それなりの苦労があるってことか」


 ぼそりと零して、再度視線を異形に戻した。


「うちは地下の祭壇にいるので、何かあれば連絡を」

「あー、その前に」

「え?」


 要梅の声に、部屋を後にしようとしていた李は立ち止まる。


「総監様。悪いけど、アタシらの靴取って来てくれねえか? 縁側じゃ戦いづらい」


 要梅同様、桐玻も柔和な笑みでこちらに向けており、李は喜悦を露にした。


「はい!」

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