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第4話 急変

「それから桃也はうちと一切口を利かんくなって、挙句修練場にも来んようになりました。四日後の今日、朝にはもうおらんようになってて……」

「なるほど。百パーそれが原因だね」

「しかも、アンタの方に非があるのは明白だな」


 槐斗と要梅の指摘に、李は居たたまれない様子で面伏せる。


「……やっぱり、うちが一番悪いんですね」

「そりゃそうだよ。話を聞く限り、君の持論を一方的に押し付けてるうえに、弟の気持ちに全く寄り添おうとしてなかったみたいだし」

「槐斗君、もう少し言い方ってものが……」


 姉がたしなめるも、弟は恬然てんぜんと言ってのける。


「事実でしょ。それに、僕はむしろ弟に同情するよ」

「アタシも」


 双子たちの忌憚きたんない意見に、李は少し不満そうに眉根を寄せた。


「でも、あの子もいい加減総監として自重してもらわんと……。いつまで経っても我儘言いたい放題の子供のままでおらせとくわけにはいきません」

「姉というより、もはや母親だな。ま、弟の気持ちに寄り添わないうえに自分らの立場を理由に抑圧しようとするんじゃ、桃也アイツが家出するのも無理ねえな」


 目を眇める要梅の痛烈な言葉に、李は虚を衝かれて唇を引き結んだ。

 そこで、柳義が耐えかねたように鋭い視線で要梅を見据える。


「要梅。流石に言葉が過ぎるぞ」

「うるせえ。堅物ナルシ野郎は黙ってろ」


 負けじと睥睨し返す要梅は、突き放すように語気を強める。


「お前らみたいな()()()側の人間に、()()()()奴らの気持ちが分かるはずがない」


 槐斗も姉に賛同するかのように、いつもより冷えた眼差しで柳義を見つめた。


「何だと?」


 一触即発の緊迫した空気に、桐玻が眉間に手を添えて嘆息する。

 李も剣呑な雰囲気に呑まれてすっかり萎縮してしまっていた。


 すると、突如禍々しい気配が室内を覆う。

 全員表情を一変させ、気配がする方向へ顔を向けた。


「まさか……!」


 柳義が咄嗟に縁側沿いの襖を開けると、眼前に広がっている小庭園の虚空に鬼門が三つ出現していた。


「鬼門⁉」

「結界が解けかけてるからか」


 視認した桐玻は焦燥を露にし、要梅は冷静に呟いた。

 鬼門が現れ始めたそもそもの原因は、桃也の不在による結界の弱小化だ。故に、責任を感じざるを得ない李はぐっと奥歯を噛み締め、華奢な両の拳を力強く握りしめていた。


 柳義はそんな李を一瞥し、鬼門から流れ出てくる異形に目を戻す。

 先ほど討伐した餓鬼、狂骨に加え、ぬえ牛鬼ぎゅうきなどの数多の魑魅魍魎(ちみもうりょう)が庭内に跋扈している。


「俺がここに来る前も一度鬼門が発生し、始末したばかりだ。相当結界が薄まっているとは思っていたが、まさか三つも同時に出現するとはな」

「結界が完全に消えてしまうのも時間の問題だね。それに、陽が暮れたら益々鬼門の出現率が高くなって異形の力も増す」


 槐斗に続き、桐玻と要梅も柳義の隣に立ち、鬼門と異形を見据える。

 対して李は、部屋の隅に控えていた荷風に庇われながら座布団に座ったままだ。


「もっとうちに力があれば、あの子がおらん分も役目をちゃんと果たせるのに……!」

「李様……」

「…………」


 己の力不足さえも悔いる李に、要梅は彼女の方を振り返って何かを感じ取ったように目を細めた。


「何にせよ、今は鬼門を封じて奴らを殲滅することが先決だ。美しい央殿の庭を奴らに穢させるわけにはいかない。青龍」


 柳義の声に反応し憑依を解いて出現したのは、東を守護する四神の青龍。

 かの霊獣と共に、柳義の片手には再び薙刀が具現化した。鎮守官が扱う武器は、全て霊獣の霊力によって生成されている。


 他の三人も同様に霊獣と武器を召喚した。

 要梅には白虎と打刀、桐玻には朱雀と狙撃銃ライフル、槐斗には玄武と和弓が備えられている。

 社殿主たちの臨戦態勢に、李も荷風の保護を振り切って参戦しようとする。


「うちも……!」


 そこで、柳義が入室した襖が突然開かれた。

 全員が何事かと襖の方に顔を向けると、そこには血相を変えて佇む若い男性鎮守官が。


「李様!」

「なに、どうしたん⁉」

「大鬼門の封印結界がっ……!」

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