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第14話 また会う日まで

 結界晶にも大鬼門と同様の呪印が浮かび上がり、無事に結界が張られたことが確認できた。

 一気に力が抜け、李は大きく息をつく。


「はぁ、何とか結界張れたわ……」

「俺こんなに集中したの初めて……」


 その場に座り込む桃也に、李は微笑む。


「な? うちが言った通り、出来たやろ」

「……うん」


 桃也は照れくさそうに口角をあげて小さく首肯した。


「さて、次は守護結界やな」

「げっ、まだあんの⁉」

「当たり前や。でも、封印結界よりまだマシな方やし、おんなじ要領でやればすぐ終わる。ほら、やるで!」

「ちょ、ちょっと休ませて……」

「しゃあないな。じゃあ五分だけ」

「五分だけかよ!」

「守護結界も張らな央殿こっちに鬼門が出続けるから、なるべく早くせんと」

「はぁ……」


 がっくりと肩を落とす桃也に、李は「あともうちょっとの辛抱や」と微苦笑を浮かべる。そして弟の隣に座り、身を休めた。


 


  *****




 四凶を撃破し、大鬼門にも封印結界が張られたことに気づいた四兄妹は安堵した。周囲の異形を片付けていた鎮守官たちも歓喜している。

 各々融体を解いて霊獣を具現化させた後、要梅は相棒である白虎にもたれかけた。


「はぁぁぁ~、やっと終わったぜ」


 他の三人もその場に座り込んで、四神に背を預けている。


「もう無理。しばらく動けない」

「でも、何とかやり遂げましたね私たち」

「ああ」


 柳義はそのまま上空を見上げる。

 視界は満天の星空で占拠され、その美しさに目を細めた。


「今日は夜空が一段と綺麗だ」





 その後、四兄妹と鎮守官たちは央殿に帰還した。

 無事に守護結界も構築した李と桃也は、荷風と天雷と共に彼らを出迎える。

 李は四兄妹たちに首を垂れて感謝と労いの言葉を送り、桃也も改めて謝罪した。

 四兄妹は各々いつもの口調で返した後、屋敷に入った。


「今日はここに泊まって、ゆっくり休んでください」


 総監のありがたい命により、社殿主たちは各々の客室で身体を休めて夜を明かした。

 


 翌日。

 屋敷の玄関には四兄妹、加えて彼らを見送る総監二人と龍麒一門の面々の姿があった。


「ほんまにもう帰らはるんですか? まだお体の調子が戻ってないんじゃ……」

「いえ。大きな怪我は負っていませんし、医療鎮守官の処置もあって完全に回復しましたから。お気遣いいただき、ありがとうございます」

「そうですか」

「でも、今年の五色会議まであと一週間やし、いっそのこと、ここにおったらええやん」


 五色会議は年に一度開催される、総監と社殿主の会合だ。

 言われてみればそうだったと思いつつ、柳義はかぶりを振る。


「いえ、そういうわけには。社殿主である以上、一刻も早く社殿に戻って現場の指揮を執らなければなりませんから」

「そっか」

「そっか、やないわ」


 李が桃也の頭を軽く叩く。


「痛った‼ 何すんの!」

「あんたもちょっとは四天王の皆さんを見習い!」

「そうやそうや見習いー」


 からかう要梅に、桃也は叩かれたところを摩りながら言い返す。


「要梅、京都弁ヘッタクソやな」

「あ゛? 何だとゴラ」


 仲睦まじいやり取りに、その場にいた全員が笑顔になる。


 央殿敷地の入口である正門まで移動し、四兄妹は李たちと別れる。


「それでは皆さん。お気をつけて」

「また会議の時に!」


 稚い総監と鎮守官たちの見送りに、四兄妹も手を振り返した。

 迎えの車に各々乗り込む前に、柳義は妹弟に声をかける。


「久しぶりに会えたうえに、肩を並べて戦えて嬉しかった。じゃあまた一週間後に」

「近いうちまた姉ちゃんに会えるのかー。はぁぁ、マジ最高! ていうか、もう一緒に姉ちゃんの南殿まで帰っていい? ちょうど央殿と一番距離が近いからさ」

「駄目ですよ要梅ちゃん。白虎一門の皆さんが要梅ちゃんを待ってるんですから。それに、一週間なんてすぐです」

「ええ~」

「ねえ、早くゲームしたいからもう帰りたいんだけど」

「お前たち、俺の話を聞いているのか?」


 相変わらず癖のある妹弟たちだ。特に次女と次男が。

 柳義は額に手を添えて溜息をつき、気を取り直して言う。


「じゃあ、一週間後またここで」


 桐玻は「はい。楽しみにしています」と花笑み、

 要梅は「テメエのツラをまた見ることになるのは胸糞わりいけど、仕方ねえ。姉ちゃんが来るんだからな」と鼻を鳴らし、

 槐斗は「うん。また」と抑揚の無い声音で端的に答えた。


 四人はそれぞれ車に乗り込み、各々の社殿へと帰っていく。


 



 再び会える日を、心待ちにしながら――。






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