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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第六章 勇者と魔王

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92 勇者と魔王

先代魔王ピエールの容態だが、以前よりはかなり症状は緩和されたものの、未だまともに体を動かすことはできない。ライラが付きっきりで診察や介護をしているが一向に良くならない。


「バーバラ様、手を尽くしているのですが、痛みなどの苦痛を緩和する治療しかできていないのです」


「そうじゃな・・・どうも呪いではないようじゃし。これはわらわにも分からん。全く未知の魔法のようじゃ。最初から宿命づけられたような感じもする」


バーバラでも分からないのなら、今のところ打つ手がない。


「とりあえず粘り強く治療を試みてくれる?最終的にはエジルを拘束して、真相を聞き出さないと駄目だろうけど・・・」


また、問題が増えた。

すぐに呪いが解けると思っていたんだけどな・・・・


ミザリーは言う。


「それでも、お兄様とお話できたり、短時間であれば外出もできるので、クリスさんに頼んで良かったと思っています」


「依頼を受けたからには、私達も精一杯やりますから」



魔王軍の面々だが、ミザリーとギーガは引き続き研修、セバスは魔王領の運営、新しくムリエリアにやってきたベビーサタンのベビタンは契約者となったバーバラが面倒を見ることになったのだが、みんな打ち解けている。ミザリーはアイリスとコンビで様々な業務を経験し、ギーガは魔物討伐や力仕事の現場で重宝されている。

心配していたベビタンもバーバラに懐いており、見た目が悪魔にしては小さく愛くるしいので、人気も出て来た。短い角と小さな羽が特徴的で、イベントの時にはバーバラもベビタンのコスプレを披露している。巷では「悪魔っ子バーちゃん」と呼ばれているもので、悪魔っ子セットも販売されているようだった。


「ベビタンよ。お主が頑張って悪魔っ子セットを売れば売るほど、金が入ってくるぞ。そうじゃなあ、3セット売れば、魔女っ子ランチが食べられるくらいにはなるぞ」


「魔女っ子ランチがですか・・・・やります!!頑張ります」


「お主の働きによっては悪魔っ子ランチも開発してやろう」


バーバラとは仲が良さそうで何よりだ。


魔王軍の関係はそんな感じだが、もう一つ厄介なことがあるのだ。

それは勇者パーティーがもうすぐ帰還するということだ。トラブルが起こらなければいいのだけど・・・


★★★


勇者パーティーが帰還した。

無事に水のクリスタルを手に入れたようだ。残りは風のクリスタルと土のクリスタルだ。


次は、風のクリスタルを入手する計画だ。

風のクリスタルの入手方法は少し特殊で、ロトリア王国からかなり西にある場所に開拓村ができているのだが、その開拓村を発展させる開拓責任者を派遣するのだ。ある程度村が発展したら伝説の存在であるハイエルフが訪ねて来る。そして、「様々な種族が仲良く暮らしている理想的な町だ。今後の発展を期待している」と言って、風のクリスタルを渡してくれるのである。


ゲームでは冒険者ギルドで募集したメンバーをこの開拓村に派遣する。詳しくは覚えていないが、「商人」、「薬師」、「調合師」などの生産職のジョブを持ったキャラをその開拓村に連れて行けば勝手に村が発展して町になるのだ。ある程度の時間は必要だが、苦労することはなかった。

ただ、この連れて行ったメンバーは独裁者になってしまい、住民の反乱で拘束されてしまう。

ゲームでは獄中で反省している姿が見られるのだが、これにも思い出がある。


恭子ちゃんといつもと同じようにFFQ4の話になったときに


「実は、牢屋に入れられる「商人」の名前を「ヒロシ」にしてやったのよ。ざまあみろって感じだわ」


と言ってきた。私は恭子ちゃんにこう返した。


「恭子ちゃん、残念だけど、お兄ちゃんも「キョウコ」にしてたわよ」


今考えるとこの頃から二人は気が合っていたのかもしれない。


因みにクリス以外のネームドキャラはこの開拓村の開拓責任者になることはできない。なぜかクリスだけが開拓責任者になれるのだが、いつもどおりの態度で上から目線で接し、町に発展する前のかなり早い段階で拘束されてしまう。

ここで、かわいそうになってクリスを牢屋から出すとなぜか闇落ちして、魔王軍に入ってしまい、勇者達と戦うことになるのだ。賛否が分かれるところではあるが、牢屋から出さずにここで余生を過ごすのが、ゲームのクリスの中では一番マシな人生だと言われているのだ。


そんな話をアイリスとしていたところ、またまたロトリア王から呼び出しがあった。

嫌な予感がする。


アリレシア城を訪ねるとすぐに謁見の間に通された。謁見の間には勇者パーティーも待機していたのだ。ロトリア王が言う。


「実はまた、貴殿に頼みたいことがあってな。これは貴殿にとっても悪い話しではないのだが・・・・詳しくはダグラスが話せ」


「クリス、遥か西の大陸で開拓村が発見されたことは聞いていると思う。そこで、俺はお前にその開拓村の開拓責任者になってもらおうと思っているんだ。開拓が成功すればすぐに陞爵して男爵に・・・いずれその領地も・・・・」


あまりの衝撃的な内容に途中から話が入ってこなかった。システムの修正力は私をここまでバッドエンドに追い込みたいのか?

ここまで頑張って来たのは何だったんだ!!

ここで断ったら?

多分、私とダグラスとの関係はこじれてしまうだろう。ムリエリアも発展したし、ここらで姿をくらますのもいいかもしれない。ひっそりと旅立つのも・・・・


そんなことを考えていたら、予想外の人物が声を上げた。マリアだ。


「その役目、私にさせてください。しっかりとやり遂げて見せます」


これにダグラスが反論する。


「ちょっと待て、お前は回復役として魔王討伐にはなくてはならない人物だ。お前にパーティーを抜けられると・・・」


「ダグラス王子、私は自分の実力の無さを痛感しております。私よりも優秀な治療術士なんてゴロゴロいます。ムリエリアでは、その辺の治療院の治療術士のほうが私よりも技能は高いのですよ。新しく治療術士をパーティーに加えたほうが・・・・」


多分マリアが言っているのは、元マリシア神聖国の神官騎士団の分隊長さんのことだ。比べる相手が悪すぎる。決してマリアに実力がないわけではないのだ。

しかし、私にとっては僥倖かもしれない。マリアが私の代わりに投獄されるのだから。でも、マリアはいい娘だし、そうはさせたくない。それにネームドキャラは開拓責任者になれなかったはずでは?


そうなると本来のストーリーとズレが生じている。となれば、こっちもそんなストーリーを無視してやればいいんだ!!


「ダグラス王子、マリア様、私に提案がございます。今のところ、魔王軍は敵対行動を取っておりません。なのでこの機会にダグラス王子以下の勇者パーティーが協力して開拓をすればいいのではないでしょうか?

もちろん、ダグラス王子が責任者となってです。そこで、しっかりと実力をつけながら来たるべき魔王との戦いに備えるのです。引き続きクルエラさんも派遣してもらえるように手配します。そうすれば向こうで転職することも可能なのですから。魔王と戦うのならせめて全員が上級職のジョブではないと厳しいですからね」


一同が私を怪訝な顔で見ていた。


どうしてお前がそんなことを知っているんだ?


といった感じだろう。私も自分の人生が懸かっているので、余計なことを言ってしまった。

しかし、諸手を上げて賛成する人物がいた。リンダだ。


「クリス殿、貴殿と意見が合ったのはこれが初めてかもしれんな。私は賛成だ。

殿下、私達で開拓をしましょう。もちろん新居は・・・・」


まあ、コイツの理由は想像がつく。どうせ、ダグラス王子と一緒に居たいだけなんだろう。気分はもう領主婦人にでもなった気でいるのだろう。


そして、リンダが賛成したところで、ロトリア王が言った。


「我が決めてもよいのだが、勇者パーティーの他のメンバーの意見を聞いてはどうだろうか?これまで、苦楽を共にしてきた仲間の意見を聞いてもいいと思うのだが?」


「父上、分かりました。それでは、それぞれ意見を順番に言ってくれ。まずはマッシュからだ」


マッシュは軍人らしく、「すべて、ダグラス王子の決定に従う」と言い、マルチナは「マリア様と一緒に開拓がしたい」と言った。この二人は予想通りの回答だった。続いて、トール、ワグネル、バーダッグの三人だが、意外にも開拓村での活動は賛成だった。


「母国で燻っている奴らを呼んでやりたいですね」

「今なら、仲間達を村の自警団にでもねじ込める。稼業が傭兵だから、正規雇用ってのは憧れるな」

「開拓の初期メンバーはゆくゆくは幹部になれますからね」


結果として、私の案に反対する者はいなかった。

ダグラス王子が言う。


「それでは勇者パーティー全員で開拓村で活動をする。ただし、いつ魔王軍が動き出すか分からないから、その準備だけは怠るなよ」


これで、何とか私のバッドエンドは回避できた。

ダグラス王子が心配している魔王軍だが、魔王以下四天王の面々はすべてムリエリアに居るのは内緒にしておこう。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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