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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第六章 勇者と魔王

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91 先代魔王奪還作戦 2

先代魔王ピエールの部屋に入ると魔族の男性が一人ベッドに横たわっていた。荒い息をしており、苦しそうだ。褐色の肌で銀髪、シュッとした感じのイケメン。間違いない。ゲームのとおりのピエールだった。


「お兄様!!大丈夫でしょうか?」


「すまんな。体が言うことを聞かなくて・・・・ところでそちらの者達は?」


「それが・・・・」


ミザリーがここまで来た事情を説明する。


「そちらが噂のリルとリラか・・・人間に飼われていたとはな・・・・そしてそちらがクリス殿か・・・なるほど、すべては貴殿の手の平の上で転がされていたということだな・・・・まあ、言いたいことは山ほどあるが、我をこのような状態にした四天王よりは信頼できるようだが・・・・」


ピエールは苦しそうに話す。

私は、ピエールに言った。


「私はヤマダ商会の会長でクリスと申します。ピエール様、現魔王であるミザリー様より、魔王軍の立て直しとピエール様の治療という依頼を受けております。診察をさせていただいてもよろしいでしょうか?」


「好きにしろ。断ったところでやるのだろうし・・・恥ずかしい話、魔族領の治療術士でも治療ができんからな。藁をもすがるような気持ちだ。治せたのなら褒美を取らせよう」


「ありがとうございます。バーバラ、クリストフさん、ライラ、お願い」


バーバラ、クリストフ、ライラがそれぞれ診察を開始する。


「何じゃこれは?何重にも呪い掛けられておるし、呪いでもないような、得体の知れんものまで掛かっておる。応急措置はできるが、すぐに完治とはいかんぞ」


「バーバラ殿、私も同意見です。酷い症状をもたらしている主な呪いだけでも解呪してはどうでしょうか?」


「そうじゃな・・・そうするか・・・」


「錬金術師の立場から言うと、毒も盛られているわ。多分食事に混ぜてとかかな?流石の魔王様でも、毒と呪いの合わせ技なら、こうなっても不思議じゃないわね」


ミザリーはショックを受けている。私は一つの提案をする。


「つまり、ここにいては危険ということですね?ムリエリアに連れて帰りましょう。動かせるぐらいには何とかできそう?」


「本当に応急措置だぞ。それでいいのなら、できんことはないがな」


「対症療法だけど、この薬を飲めば、大分症状は楽になると思う。後はクリストフさんの回復魔法を少し掛ければムリエリアまで移動させることはできるわ」


私はミザリーに言う。


「ここでは応急措置だけして、ムリエリアに連れて帰ろうと思うのですが、どう思われますか?」


「そうしてください。ここにいても症状が良くなるどころか、悪化するだけですからね」


「分かりました。それでは」


私は「空間収納」のスキルを発動し、小型ホバークラフトを改良した移動式ベッドを取り出した。ギーガとセバスにピエールをベッドに乗せてもらう。治療も上手くいったようで、ピエールの表情も少し柔らかくなった。


「礼を言うぞ」


「まだ、完治したわけではありません。あくまで対症療法ですから」


ピエールを乗せたベッドをギーガが丁寧に押して運んでいる。部屋から出ようといしたとき、ミレーユに声を掛けられた。


「こちらの悪魔さんに掛かっている呪いなんですが、解呪しようとするとかなり時間が掛かります。頑張ればできないことはないのでしょうが・・・・半日はほしいですね」


これにバーバラが答える。


「その悪魔も扉から離れんかぎりは問題ないのじゃから、このまま置いて帰るぞ。そこの悪魔、契約者が来るまでそこで大人しくしておけ」


ベービーサタンは絶望の表情を浮かべて言う。


「そ、そんな・・・任務に失敗したのですから、何をされるか・・・・どうか、どうかお助けを・・・」


流石に可愛そうだ。酷い目に遭わされるのは目に見えている。エジルに「私は扉を守ってました。しかし壁を壊されてピエール様は連れて行かれました」とは言えないだろうし・・・

少し、可愛そうになってきた。


「バーバラ、何とかならないの?」


「そうじゃのう、多少強引ではあるが、契約ごと解除してしまえば可能じゃろう。下級悪魔で簡易契約じゃから、そっちの契約を破棄したほうが早く済むな。ただ、契約者とのつながりも失われるから、その辺を考慮・・・」


ベビーサタンはバーバラの説明を聞く前に慌てて言ってきた。


「それでお願いします。すぐに契約を解除してください。騙されて契約したようなもんなんです」


「分かった。それではやるのじゃ」


バーバラは何やら呪文を詠唱し始めると、ベビーサタンに光が差して、その光がベビーサタンの中に入っていった。


「これで大丈夫じゃ。これからは好きにすればいいのだが、悪さはするなよ」


私達が部屋から立ち去ろうとしたとき、ベビーサタンが追いかけて来た。


「ありがとうございました。できれば一緒に連れて行ってくれませんか?事情があって魔界にも帰れませんし・・・それにエジルに見付かったら酷い目に遭わされますし・・・・」


ゲームでもこのベビーサタンは可哀そうな目に遭ってきた。理不尽に殴られたり、いじめられたりしていた。クリスに続いて不幸なキャラかもしれない。

まあ、戦闘力はほぼゼロだし、悪さをするわけではないから連れて行ってあげてもいいかな・・・


「ちゃんと言うことを聞くなら連れて行ってあげるわ。ところでお名前は?」


「名前はありません。種族名がベビーサタンなので、エジル様には『おい!!そこのベビーサタン』とか呼ばれていました」


ここまでぞんざいに扱われるなんて、ますます可哀そうだ。


そんなとき、バーバラが唐突に言い出した。


「ベビーサタンか・・・・だったら「ベビタン」ではどうじゃ?」


すると魔力の光がバーバラからベビーサタンに流れ始めた。


「えっと・・・バーバラ様の使い魔になってしまいました。名付けをすると契約されるのです」


「なんと!!これは迂闊じゃったなあ・・・まあよい。これからお主はわらわの秘書となって働くがよいぞ。どこかの馬鹿弟子は男に現を抜かして、師匠を師匠とも思わんからな」


これにミレーユが反論する。


「バーバラ師匠!!それはあんまりです!!」


わらわは何もお主のことを言ったわけではなかったのだがな。それとも心当たりがあるのか?」


ミレーユは顔を真っ赤にして俯いてしまった。


「ふざけるのはそれぐらいにして早く帰りましょう。病人を連れてるからね」


こうして、私達は先代魔王ピエールとベビーサタンのベビタンを連れてムリエリアに帰還することとなった。


因みにエジルについては、魔王城の衛兵にミザリーが見付け次第、すぐに報告するように命令していた。エジルはかなり戦闘力もあるので、絶対無理に拘束しようとはしないようにとも注意していた。


そういえば、ダグラス達勇者パーティーもそろそろ水のクリスタルを入手して一端帰還する予定だし、変な形で遭遇しなければいいのだが・・・・

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