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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第六章 勇者と魔王

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81 マルチナレポート

勇者パーティーがロトリア王国に一時帰国している。無事、火のクリスタルを入手したようだ。勇者パーティーに帯同したマルチナに労いの言葉を掛ける。


「ご苦労様。報告書を読むかぎり、上々の出来ね。次回の勇者パーティーの出発前に対策会議をする予定だけど、とりあえず1週間はゆっくり休んで。それに臨時ボーナスも支給するから」


「ありがとうございます。ただ、休暇は3日で結構です。それ以上になると準備が間に合いませんので・・・」


マルチナは疲れてはいるが、次も頑張りたいとのことだった。今回の旅でマルチナは大きく成長したようだ。ジョブは「商人」でレベル25にもなっている。レベル30になればマスタースキルの「空間収納」が使えるようになるので、かなり重宝するのだけど。


そうなるにはレベル50推奨の「無慈悲の3マス」で無理やりレベル上げするか・・・・。流石にそこまで過酷なことは・・・


しかし3日後、マルチナは完全武装で現れた。理由を聞く。


「会長、すいません。どうかレベルを30まで上げるのに付き合ってください。そして「占師」に転職させてください。これはマリア様とも話したことなのですが・・・・」


「ちょっと待って、少し落ち着いて。とりあえず事情を話してもらいましょうか?ちょっと、アイリスにも一緒に聞いてもらうから、少し待ってて」


しばらくして、アイリスがやって来たので事情を説明する。


「分かりました。報告書に記載されてないことも話してください」


「分かりました」


マルチナは語り始めた。



★★★


~マルチナ視点~


孤児院出身で、ただの「商人」だった私はヤマダ商会に拾われ、大きく成長することができた。これもクリス会長のお陰だと感謝している。そして、クリス様と同じくらい感謝している方がいる。勇者パーティーのマリア様だ。当時私は、販売スタッフとして勤務していたのだが、自分では頑張っているつもりなのに営業成績が伸び悩んでいた。そんなときにマリア様に出会った。

マリア様は勇者パーティーのメンバーでありながら、私なんか比にならないくらいの売り上げを記録していた。どうしてもその秘密が知りたくて、思い切って質問してみた。これが私の運命を大きく変える。

今でもあのときのマリア様の言葉が頭から離れない。


「最初から売ろう売ろうとしてはいけません。まずは売りたい相手と友達になるんです。そして親身になって話を聞くんです」


目から鱗だった。

そうだ。ヤマダ商会の商品はどこにも負けないくらい品質がいい。私が焦って無理に売ろうとしすぎていたと気付かされた。マリア様は営業方法を隠すことなくすべて教えてくれた。それから私の営業成績は鰻登りで、とうとう販売担当の責任者にも抜擢された。


そして今回、勇者パーティーに帯同することになった。聞いた話によると、クリス会長が私の派遣は考えていたところにマリア様の推薦があったことで、派遣が決まったそうだ。


二人に恩返しできる。


そう思い、私は希望を胸に勇者パーティーと合流した。

バーバリアの南の船着場からシャーロック商会の船で出航したときは盛大に見送られた。なんだか自分も英雄の一人のような気がしてきて、誇らしい気分になる。ここから10日間、勇者パーティーは基本的にマードミスト地方の港町までは船に乗っているだけだ。


しかし、私とヤマダ商会のスタッフはそれなりに忙しかった。シャーロック商会の船に同船しているのは勇者パーティーだけではなかった。有力貴族が二組、大商会の関係者一組が同船していた。

彼らの接待をしなければならない。クリス会長が輸送のときも利益が出ると交渉していたので、私達は利益を出さなければならないのだ。今回はクリス会長の伝手で顧客を獲得することができたが、帰路では同船する顧客を私達で探さなければならないのだ。


慣れない船での活動に戸惑うことはあったが、マリア様のお陰で顧客も満足してくれた。勇者パーティーと一緒に船旅ができるというのがコンセプトなのだけど、マリア様以外は顧客の接待に無関心だ。これではマリア様一人に負担が掛かってしまう。もう少し、その辺りに気を配ってもらいたいとは思う。

結局、マリア様のお陰でビキニアーマー10着とダグラス鉄剣3本、マッシュの大楯一つを買ってもらうことができた。


マードミスト地方の玄関口の港町に着いた。既にシャーロック商会の関係者が火のクリスタルの情報を入手してくれており、火のクリスタルがあるとされる洞窟までの移動行程もある程度決められていた。その行程に合わせて私達商会のスタッフは商売の準備や街道を勇者パーティーと一緒に移動する者達を集めていた。勇者パーティーはというと町の有力者との会食やイベントに引っ張りだこだった。


港町で数日過ごした後、街道を進むことになり、私達に付いてくる者は300人を超えていた。単純に護衛料を浮かせるための者もいれば、暇な貴族のように勇者パーティーを一目見たいという者も多かった。ここまでの規模になれば、盗賊はまず襲ってこないし、魔物が出ても何とかなる。集団の中には貴族達の私兵もいるし、それなりのレベルの冒険者もいる。魔物の討伐は彼らを統率するだけでよかった。


幸い、ヤマダ商会が雇ってくれた護衛は手練れで、モンダリア騎馬王国の近衛騎士トール、ザーフトラ傭兵団のワグネル、レートランド王国のゴーダッグの三人だが、それぞれ力を発揮してくれていた。

トールは騎馬王国の出身だけあって、騎竜の管理や御者などを務めてくれたし、騎竜に乗って先行して偵察任務もしてくれていた。ワグネルは傭兵団の次期団長だけあって、寄せ集めの戦力を上手く統率してくくれていた。ゴーダッグは二人には戦闘力は劣るものの、斥候や集団のもめごとの仲裁などをこなしてくれていた。


一方勇者パーティーはマリア様が貴族などの接待をしている以外はほとんど何もしていない。マッシュ様は体が鈍るからということで、トール達と一緒に魔物を狩っていたが、ダグラス王子とリンダ様はほとんど馬車から降りてこなかった。


火のクリスタルがあるとされる洞窟の町に着くと領主自らが待機しており、この領主が冒険者や精鋭の私兵を集めて、すでに火のクリスタルを入手していたのだ。なので急遽、領主から勇者パーティーに火のクリスタルを譲渡するイベントになってしまった。少々拍子抜けな感じがするが、ヤマダ商会的には良かったと思っている。勇者パーティーの消耗品を用意する必要がないからだ。勇者パーティーはヤマダ商会の商会員扱いなので、ポーションなどは必要経費で落とさなければならない。その分が浮いたのは良かった。


帰路も順調だった。帰りの船の乗客についてはシャーロック商会が集めてくれていたのだ。というのもかなり収益が上がるらしく、ゲルダ会長の直々の命令で、有力貴族に声を掛けたようだ。


今回の活動は予定以上に収益を上げることができた。反省するならば、私が「空間収納」のスキルをマスターしていればもっと多くの収益が上げられたと思っている。

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