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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第六章 勇者と魔王

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78 新ビジネス

返事は明日ということになっていたが、その日の夜に回答を伝える使者が来た。


「ゲルダ会長からの伝言です。『勇者パーティーの雇用の話は受ける』とのことでした。こちらから提示する条件を書面にまとめましたので、確認ください。その条件を元に明日の交渉をお願いします」


使者を下がらせた後、使者が持ってきた書面を確認する。



1 勇者パーティーの雇用について


こちらが直接雇用することはせず、ヤマダ商会の子会社の警備会社からの派遣ということにする。


2 コバンザメ商法について


こちらが直接商売をするのではなく、ヤマダ商会から販売スタッフを出してもらう。そしてこちらは利益の3割をヤマダ商会から納めてもらう形態を取る。


3 勇者パーティーのマネジメントについて


勇者パーティーは事前に活動予定を提出し、活動終了後には次の予定を速やかに提出する。大幅に予定と異なる活動をした場合は違約金が発生する場合がある。



アイリスが尋ねる。


「これってどういう意図があるんですか?」


「そうね。全体的に言うとトラブルが起きたときにヤマダ商会の責任ってことになることかな。シャーロック商会としては、ヤマダ商会に護衛を依頼している立場だから、文句はヤマダ商会に言ってくれって言えるわね。

それにコバンザメに対する商売に関しても、もし上手くいかなかった場合はこちらが損失を被るようになるわね。リスクはゼロだし、上手くいけば、利益が入ってくる。売上ではなく利益にしているところはちょっと優しさを感じるけどね」


ここでマリアが意見を言う。


「大変申し上げにくいのですが、ヤマダ商会から私達のマネージメントスタッフも出していただけないでしょうか?

ここまで、冒険をしてみて感じたことなのですが、どうも行き当たりばったり過ぎるのです。私としては、もっと計画的に活動をしたいのですが、ダグラス様に意見する者はパーティーにおらず、私が少しダグラス様の意見に異を唱えようものなら、リンダが烈火のごとく怒るのです。なので、パーティーメンバーを増やすか、パーティーの活動方針をそれとなくアドバイスしてくれるスタッフをお願いしたいのです」


ここでパーティーが抱えている問題も浮上した。ゲームではクリスがトラブルメーカーだったのだが、リンダの「ダグラスファースト」とは違い、「自分ファースト」だった。だから、クリスの無茶苦茶な意見に対して、他のメンバーで協力して解決策を練っていたと考えると、意外にクリスは必要な人材だったのかもしれない。

今のメンバーを考えると脳筋のダグラス王子、ダグラス王子に絶対服従のリンダ、悪く言えば、運営に無関心のマッシュ、冷静に判断できる頭脳はあってもリンダに押し切られてしまうマリアでは上手くいくはずがない。


「分かりました。販売スタッフに勇者パーティーのマネジメントができる者を派遣しましょう」


「ありがとうございます。それと厚かましいついでに、マルチナさんを派遣していただけないでしょうか?もし、派遣していただけるなら、二人でいっぱい商品を売って、御恩は返させていただきます」


ああ、マルチナね。

私も真っ先に思い浮かんだ。本人が了承すればだけど。


「マルチナに確認を取ります。無理強いはできませんけど」


「ありがとうございます」


今回の作戦は、ゲームで考えると、ただNPCの言いなりの作業ゲームとなるので面白さは半減するが、私の人生が懸かっているから、これぐらいは勘弁してもらおう。後は細かい調整だが、すぐにマルチナを呼んで意思確認をした。当然危険をともなう任務であることは伝えている。でもマルチナは笑顔で言った。


「私はマリア様に評価してもらったことを嬉しく思っています。それにこれは大きなチャンスです。絶対にやらせてください!!」


まあ、そこまで覚悟があるのなら任せてみよう。


「マルチナ、早速で悪いけどマリア様と相談して明日までに勇者パーティーの活動予定を作成してくれる?それと併せて販売する商品、売り上げの見通し、販売戦略もまとめてくれるかな?これはアイリスも手伝ってあげて。

多分徹夜になると思うけど・・・」


「大丈夫ですよ」


「もちろんです」


私達はほとんど寝ないまま、ゲルダさんとの交渉に臨むことになった。



★★★


ゲルダさんは私達が徹夜で作成した資料を熟読している。


「一晩でこれを?流石としか言えませんね」


上々の出来のようだった。


「これで私どもは問題ありません。それにロトリア王国の宰相さんのお陰で私達が権力による脅しに屈した商会ということにはならなくなりました」


「それはどういうことですか?」


ゲルダさんは説明を始める。

バーバリアで痴漢を働いたシャーロック商会の船員が逮捕されららしいのだが、その男が魔族と通じている疑いがあったということにした。実際はただの言いがかりらしい。

それを発見したのがリンダということになったそうだ。ワザと騒ぎを起こし、逮捕する証拠(実際は痴漢の容疑のみ)を掴んだことにしてしまった。そして、この男を逮捕するためにゲルダさんは、秘密で協力していたことになったそうだ。


「なるほど、その男も疑いがあるだけで、ほとぼりが冷めたら嫌疑不十分で釈放するということですね。本当にあの狸が考えそうなことですね。それに疑うだけならタダですから」


「まあ、報奨金という名目の口止め料をたっぷりいただきましたから・・・・」


ということで、魔族とつながりが噂される商会員の逮捕に協力した勇者パーティーにどうしてもお礼がしたいということで、勇者パーティーの移動に全面協力するという話になってしまった。


だったら、最初からそれをやれよ!!


まあ、こちらとゲルダさんとの交渉が上手くまとまりそうになった絶妙のタイミングで仕掛けたのだろう。ある意味、本当に優秀な宰相だと思う。まあ、好きにはなれないけど。


ゲルダさんは笑顔で言う。


「それで悪いんですけど、大々的に出発式を船着場でやろうと思っているんですよ。それを踏まえた上で、計画書や販売計画を練り直してほしいんですけど。それに販売スタッフを護衛する人員も出してくださいね」


マルチナ、マリア、アイリスが揃って椅子から転げ落ちそうになる。

商社時代にはよくあることだった。経験のない三人にはショックは大きいだろう。




「ごめん山田さん、急遽条件が変わったからね。資料作り直してくれる?」


最初の頃は殺意を覚えたものだ。だったら早く言えよ!!



★★★


1週間後、無事に出発式が開かれ、勇者パーティーとマルチナは出発することになった。火のクリスタルを手に入れたら一端ムリエリアに帰還して、今後の活動方針を決めることになっている。帰ってきたらレベルが20を超えているだろうから、転職のアドバイスもしなければならない。


販売スタッフの護衛だが、モンダリア騎馬王国の近衛騎士トール、ザーフトラ傭兵団のワグネル、レートランド王国のゴーダッグになってしまった。当初はレナードを予定していたのだが、キアラ王女が大反対してこの三人になった。この三人は一時的に勇者パーティーに加入するのだが、一度に加入することはなかった。

これはゲームの設定的にどのような扱いになるのか、正直予想できない。三人が揃ってこの任務に選ばれること自体がシステムの修正力に導かれている気がしないでもない。


船を見送る人だかりの中にアントニオさんを見付けた。アントニオさんも私に気付いたようで私に声を掛けてきた。


「いい商談になったそうですね」


「お陰様で。それはそうと、狸宰相が動いたのもアントニオさんが裏で動いてくれたのですか?」


いかにあの強かな狸宰相といえど、ここまでタイミングがいいと勘ぐってしまう。誰かが情報を漏らしたとね。


「さあ、どうでしょう。今回の件でみんなが得をしました。勇者パーティーは船を手に入れ、ヤマダ商会とシャーロック商会は大きな収益が見込める。ロトリア王国としてもメンツが保てましたしね。強いて言えば、痴漢を働いた船乗りの拘束期間が多少延びたくらいでしょうかね。

ゲルダや貴方の成長する姿も見れて、私も嬉しいですよ」


「御冗談を。まだまだアントニオさんや狸宰相にはかないませんよ」


「まあ、これでも何十年とこの稼業をやってますからね」


まだまだ、商人としては未熟者だと知らされた事件だった。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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