73 旧転職神殿復興プロジェクト
旧転職神殿の復興プロジェクトの第一回会議が開催された。
メンバーは下記のとおりだ。
共同代表 サマリス王子、ムリエル王女、アイリス王女、ライアット皇子、キアラ王女
アドバイザー クリス、アントニオさん、デブラス副神殿長
専門スタッフ ライラ(錬金関係)、ポーシャさん(食品関係)、ドーラ(建築担当)、レナード(警備担当)、バーバラ(エンタメ担当)
まず、簡単な顔合わせをする。ほとんどのメンバーは「恐怖の2マス」での懇親会キャンプで顔見知りなのだが、アントニオさん、ポーシャさん、デブラス副神殿長を中心に簡単な自己紹介などをして、関係を深めていく。
次にアイリスから現在の状況説明が始まった。
「現在、旧転職神殿の北にある温泉地の開発は進んでいます。既に富裕層向けの宿泊施設は完成し、モニターとして泊まってもらった高位貴族や商人達は大変満足しています。一般利用者向けの宿泊施設も近々完成します。
それに併せて、転職神殿から温泉地までの街道も整備しています。完成すれば半日とかからずに到着することができます」
ここでムリエル王女が言う。
「問題は、その後ですね。今は街道の整備や宿泊施設の建設で多くの職人や商人、護衛依頼を受けた冒険者が集まっていますが、彼らを留め置くすべを考えなければなりませんね」
ムリエルも状況が分かってきたようだった。
そんなとき、アイリスが私に話を振る。打ち合わせ通りだ。
「ここでヤマダ商会のクリス会長より、ご提案がございます」
「分かりました。私が提案するのは・・・・・」
★★★
話は少し遡る。3日前、商会長室でアイリスと二人で案を出し合っていた。
「何かいい案はありますか?思い付かないんですよね。何もない場所なのに、凄く発展した都市とか日本にありましたっけ?」
「日本では思い付かないけど、アメリカのラスベガスとかはどう?カジノが有名だし、エンタメのメッカだし。元々はただの砂漠だったようだけど」
「それはいいですね。じゃあ、カジノとか作っちゃいますか?」
「どうだろうね。こっちの法律のことは分からないし、今は違うようだけど、ラスベガスも昔はマフィアが牛耳っていて大変だったらしいわ。発展するのはいいけど無駄に犯罪を増やしてもねえ・・・」
「そうですか・・・でもやるってことにしたら、どんな人材が必要なんですか?」
「そうね。まずはカジノとかを運営するから、それなりに裏社会の実情が分かる人が必要かな?あまり杓子定規にやっちゃうとお客がつかなかったり、逆に変な犯罪を犯したりする場合もあるから、元々裏社会の人間で、しっかりと更生した人とかがいいんじゃないかな?」
「いますよね・・・ウチに・・」
「そ、そうね・・・ラスベガスとかだと最初は有名な歌手とかを客寄せに使ったみたいね。今でもその伝統を引き継いで、華やかなショーが連日開催されているわね」
「そのショーができる幼女もいますね」
「後は美味しい料理とかかな。一般のお客さんから富裕層まで幅広く満足させられる料理人とかもいたらいいわね」
「一般庶民に愛される屋台料理から大国の王族を唸らせるコース料理まで、今でも作ってますよね」
「そうよね。後はラスベガスだと、ボクシングやプロレスみたいな格闘技イベントも盛んね」
「ウチもいい人材はいっぱいいますよね。流石に私達クラスは出ないほうがいいでしょうけど・・・」
「それはそうね。それにF1も開催されるわね。こっちにはないけど・・・」
「それなら、売り出し中の騎竜をレースに使うか、トルデコさんとライラさんが開発した新型の小型ホバークラフトレースとかで代用できませんかね?」
というか、普通にできるじゃん。
これなら、ラスベガスよりも凄いのが・・・・
「・・・・という感じです。法律的な問題、宗教的な問題、倫理的な問題もあるかもしれません。あくまでも一つの案ですので、賛成、反対、忌憚のない意見を聞かせてください」
最初に声を上げたのはデブラス副神殿長だった。
「私は賛成ですぞ!!「お金いっぱい、夢いっぱい」という教えもありますし、宗教的には何の問題もありません。私としては、ずっと旧転職神殿の都市開発に携わってきましたから、総合的なサポートをする役割をさせてください。それと夢破れた者に対するケアも必要ですね」
続いて発言したのはキアラ王女だった。
「闘技場は獣人が大好きですから、賛成です。個人的にはレナード先輩の活躍する姿を見たいですし、タッグマッチとかしたら面白いかもしれませんね」
「い、いや・・・私はそんなに強くないんですけど・・・それに警備関係を・・・・」
「警備もしながら試合もしましょうよ。1日中試合があるわけではないですしね」
レナードはキアラ王女に押し切られたようだ。
更にバーバラも続く。
「妾はステージに立てればどこでも構わんぞ。とりあえず人を集めればよいだけじゃし」
ライアット皇子が言う。
「僕も賛成ですね。ランカシア帝国で空前の騎竜ブームですから、本国からこぞって参加するでしょうね。それに小型ホバークラフトはサンクランド魔法国で大人気でしょ?
これなら両国ともメンツが保てると思いますが」
「そうじゃな。妾達が出れば勝負にならんじゃろうが、魔力が強い者が小型ホバークラフトレースでは有利じゃからな。優秀な魔導士のスカウトもできるぞ」
後は・・・
「私もポーシャも賛成ですよ。食品関係と各種物資の調達関係は任せてください。前に使っていた輸送経路と新たにできた輸送経路を併用すれば、必要物資はすぐに運べますよ」
流石は世界の流通を担うシャーロック商会の元会長だ。
最後はドーラだが・・・・
「どうなんだろうね・・・やってできないことはないと思うけど、アタイはまだ刑期を終えてないからね。サマリスが私を監視というかサポートしてくれるならいいんだけど」
これにムリエル王女が答える。
「だったら「謎の盗賊団」で運営したらどうでしょうか?一番収益率が高く、メインの事業で大変でしょうし。いいですわねお兄様?」
「もちろんだ。私達がドーラをしっかり支えるよ」
「そうですぜ親分!!」
「やりましょうお頭!!」
リルとリラは手下感が出てるね。
そんな感じで方針は決まった。
後は実行に移すのみだ。
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




