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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第五章 旧転職神殿復興プロジェクト

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64 再開発事業

「以上が国際会議で決まったことになります。クリスお姉様はどうお考えでしょうか?」


なんだって!!

サマリス王子、ムリエル王女、アイリス王女、ライアット皇子に新しくやってくるビースタリアの王女様が協力して頑張れだって!!

こんなの丸投げじゃないか!!


旧転職神殿の復興については、何かしら役割が与えられるとは思っていたが、ここまで無茶ブリされるとは思わなかった。

ムリエル王女が言う。


「お父様から『勉強と思って、失敗してもいいから思い切ってやれ。若いうちの苦労は買ってでもしろ』と言われました。私もできる限り頑張ろうと思います」


ちょっと騙されてるよ!!

若い社員に仕事を押し付けるときに使う常套句だ。「勉強と思え」「失敗してもいい」「若いうちの苦労は・・・」は魔の3点セットと呼ばれ、これを言われると若い社員は断れない。これに加えて「私は君のためを思って」と言ってくる奴は本当に質が悪い。

パターンとして失敗して怒られないことは稀だ。だいたい「そこまでやれとは言っていない」「勉強不足だ」などと言ってくる。勉強でやるのに「勉強不足」って、矛盾していないか?


でも、愚痴を言っても始まらない。私はムリエル王女に質問する。


「ところで、どんなコンセプトで復興を?」


「コンセプト?なんですか、それは?」


それもないのか・・・・


「例えばだけど・・・農業の町にするとか、職人を集めて工芸都市として発展させていくとかかな?身近な例だとムリエリアやバーバリアは大陸間を横断する交易と観光産業で栄えているし、ポートシティは大陸屈指の港町ということで栄えてるよね」


「なるほど・・・私はみんなが笑顔に溢れる町にしたいと思ってます」


それはそうなんだけど、そういうことじゃないんだよ・・・


これを理解できるのはアイリスくらいだろうか?


「マジですか!!コンセプトも決まってないんですよね。旧転職神殿は転職神殿がなければ何もないのでしょうか?」


「そうね、転職神殿が中心だったというのは間違いないけど、それにしても交易の中継地として発展したのは不思議ね。どんな手を使ったのか・・・」


「だったらデブラスさんに聞いてみますか?前の神殿長でしたし」


「そうだね」


アイリスの言うことはもっともだ。

私とアイリスはデブラスを訪ね、話を聞いた。


感想は凄いの一言だった。


元々転職神殿があるので、訪れる人用の宿や飲食店もそれなりにあったそうだが、このときは誰も商業の中継都市として発展するとは予想だにしなかった。


しかし、デブラスが神殿長に就任して状況が一変する。


まずデブラスが行ったのは、法律の抜穴を巧みに利用した税制の優遇措置だ。マリシア神聖国は特殊な国で宗教国家だ。聖母教会の影響力が非常に強い。なので、聖母教会やそれに付随する施設(転職神殿もこれに当たる)に寄付すると大幅な税制優遇措置が受けられる。これを利用したのだ。


当時と今では税率は違っているので一概に言えないが例として挙げると、ある商会が100万ゴールド(日本円で1億円相当)の収益を上げたとしよう。普通なら30%の税金が取られるところ、教会に10万ゴールド(1000万円相当)寄付すると税率が3%まで下がるのだ。

つまり、前者は30万ゴールド(3000万円)の税金が掛かるが、後者は寄付金と税金を合わせても13万ゴールド(1300万円)で済んでしまう。実質、税金が半分以下になるので商会としては非常においしい。


更に教会に寄付し、社会貢献をしている優良商会というお墨付きが得られ、信用も高くなる。デブラスは言う。


「寄付金の額を町に張り出して、商会からの寄付金を吊り上げていたこともありましたが、これは止めました。流石にやり過ぎかなと思いまして・・・」


話を戻すと、大商会になればなるほど、この優遇措置の恩恵は大きい。そうなると、どんどん大商会が転職神殿に本店を構える。するといつしか、転職神殿に本店を出すことが商人の間でステータスになる。後は放っておいても商人が集まってくる。

土地自体は、すべて転職神殿の土地なので、デブラスからすれば、1日中寝ていても賃貸収入が入ってくるというわけだ。


その他にも高額の寄付をさせ、何らかの形でその何割かをキックバックするという、かなりあくどいこともやっていたみたいだが、儲けのカラクリはこんな感じだ。そのカラクリに気付かせないために発展した町に名前は付けず、あくまでも転職神殿に付随した施設ですと言い張り、更に高額の転職料を設定し、表向きは転職料で儲けているように偽装していたのだ。


そうか・・・だからデブラスは私がファースト・ファンタジー株式会社の出資の話をしたときに一発で理解したのか。だってファースト・ファンタジー株式会社の主な収入源は不動産業だからね。


デブラスは言う。


「ただ、今回はこの手法は使えません。だって転職神殿はもうありませんし、バーバリアやムリエリアにその役目は取って代わられています。それにやっていた私がいうのもおかしな話ですが、教会にかなり有利な制度はいずれ破綻します。マリシア神聖国の政権なんて、教会の言いなりですからね」


それはそうだろう。国に納めるより、教会に寄付したほうがいいという制度はかなり歪だ。


「デブラスさん、今日は本当にありがとうございました。勉強になりました」


「いえいえ、また何かありましたら遠慮なく言ってください」



★★★


「デブラスさんって見掛けによらず、凄い人だったんですね」


「そうね。旧転職神殿が発展した理由は分かったけど、これからどう復興していくかは、考えないといけないわね。ところでアイリスは何か案はないの?若い王族で協力して発展させるというのが、今回の目玉の政策なんでしょ?」


「それを言われると辛いですね。何か温泉とかあればいいんですけどね・・・・そこら辺を掘ってお湯が出てくれば・・・・」


「ああ、現実逃避しちゃったよ。私が若い時もそんな感じだったな。適当に土地を買って、穴を掘って、石油が出たら億万長者だ!!とかね。流石に「温泉を探すために地面を掘り返すことが復興だ」と提案はできないわね」


「そうですね。温泉って言ってたら温泉に入りたくなっちゃいましたよ」


「そうね。近くにあればいいのにね」


「ぞうですね。近くにあれば・・・・ありますよ!!ありました!!温泉ありましたよ!!」


アイリスが叫ぶ。


復興の目玉にするかどうかは別にして、温泉に行ってみることにした。

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