62 悪魔神官 4
「パ、パ、パ、パ、パーヨック!!」
雄たけびを上げた悪魔神官ことパーヨックと対峙する。何となくだが、パーヨックの面影があるように見える。
「許さんぞ!!世界なんか滅びろ。バーバリアを壊滅させてやる」
意味の分からないことを口走っている。
悪魔神官は私達に気付くとすぐに「マジックキャンセル」を発動してきた。すぐにサマリス王子とクリストフが対応し、補助魔法を掛けなおす。
更に悪魔神官は手下となるスケルトンソルジャーとグールソルジャーを召喚して来た。それぞれ、スケルトンとグールの上位種となる。
「アイリスは悪魔神官の相手をして!!私は雑魚を相手にするから」
アイリスが悪魔神官に攻撃を加え、私が雑魚を倒していく、ヒモコンビは補助魔法と回復魔法を掛け続けるだけだ。しかし、補助魔法と回復魔法は本当に効果的だ。まったくダメージを受けないし、かすり傷でもすぐに回復してくれる。ライラの強化薬も相まって、本当に戦いやすい。
この二人は本当にプロのヒモなのかもしれない。ヒモを持つ女性の気持ちは少しは理解できた。
でもそろそろ決めようか。
「アイリスどう?」
「そこまで強くはないですね。これなら大丈夫です」
「だったら一気に行くわよ」
私とアイリスはそれぞれの武器に火属性の魔法を付与する。そして、必殺技を繰り出す。
「剣の舞!!五月雨斬り!!」
「剣の舞、分身の術!!」
悪魔神官は滅多打ちにされた。
「魔王様!!どうか私の無念を晴らしてください!!」
そう叫んで悪魔神官は消滅した。ゲームでもこうだったように思う。
メンバーの無事を確認して、ライラやドーラ達と合流する。
「倒したんだね?こっちもアンデットは残っちゃいるが、新しく湧いて出ることはなくなったよ」
ゲームでは悪魔神官を倒したら、アンデットはすべて消滅したんだけど、この辺りは少し違う。
「そうね。帰還するにしても少しは残ったアンデットを討伐しないとね。ライラ、信号弾を撃って青青黄色でお願い」
「分かったわ」
この信号弾の意味は、「討伐成功。但しアンデットは消滅せず。引き続きアンデットの討伐に当たる」という意味だ。ムリエル王女達が無事ならすぐに増援部隊が来るだろう。
「とりあえず、この旧転職神殿を拠点にしましょう。リルとリラは町の様子を見てき・・・ってあれ?いない」
ドーラが言う。
「ああ、あいつらなら『お宝は早い者勝ちです』とか言って、神殿に入って行ったよ。どうしようもない奴らだ」
まあ、そうなるよね。
リルとリラは今回も活躍したし、少しは大目に見るか。
★★★
~ムリエル王女視点~
アンデットの大群が攻めて来て4日目のこと、信号弾が上がった。青、青、黄色
「討伐成功。但しアンデットは消滅せず。引き続きアンデットの討伐に当たる」
という意味だ。
私は拡声の魔道具を手にして叫ぶ。
「勇敢なる兵士達よ。そしてバーバリアの市民たちに告ぐ。悪は打倒されました。これより掃討作戦に移行します。隊長以上は領主館まで、集合しなさい。まだ、戦闘は終わっていないので、油断はしないように!!」
大歓声が上がる。
テンションの上がった魔導士達が一斉にアンデットの大群に向けて魔法を撃ち込む。アンデットは一瞬で消し飛んだ。もう敵は増えないんだから、シフトに関係なく、好きに撃たせても問題ないだろう。
私は領主館に戻り、早速増援部隊の編成に入る。
「それでは私とライアット皇子、ケルビンでクリスお姉様の応援に向かいます。バーバラ殿、後は頼みましたよ」
「そうじゃな。形だけでも討伐作戦にランカシア帝国の者が参加したことにせんといかんからな」
「すいませんね。面倒な事情で・・・・」
国際情勢を鑑みると三ヶ国の功績は同じにしなければならない。特にランカシア帝国とサンクランド魔法国はライバル関係にあるので、気を遣う。
ランカシア帝国は教会関係者が数人来ているだけなので、どうしても分が悪い。アイリス王女に加えてバーバラとクリストフがいるサンクランド魔法国に比べたら見劣りがする。なので、正式な鎮圧宣言を出すときにはライアット皇子は旧転職神殿にいなければならない。
バーバリアの防衛にはかなり貢献したのだが、やはり、元凶を討伐した功績のほうが注目されるので、そうすることになった。
「それでは私も参ります」
「ちょっと待てミレーユ、お前はここに残れ。妾に戦後処理や書類整理をさせる気か?」
領主なんだからやって当然なのだが、誰もツッコミを入れない。
「そ、そんな・・・ライアット殿下はどう思われますか?私に一緒に着いてきてほしいですよね?」
「僕に言われても・・・・」
結局バーバラが折れ、ミレーユは同行することになった。代わりと言ってはなんだが、狸宰相を呼び出して戦後処理に当たらせることにした。それくらいはやらせよう。
★★★
旧転職神殿に通じる街道はアンデットで溢れていた。ライアット皇子は言う。
「これならしばらく冒険者や騎士団に討伐任務や哨戒任務に就いてもらわないといけませんね。その分の予算は・・・」
「難しいところですが、冒険者は喜ぶでしょうね。稼ぎが良くなった冒険者に今度は町でお金を遣ってもらう。冒険者に売れるから仕入れを増やす。そうすればいずれ回収できるようになるでしょうね」
「流石はムリエル王女ですね。僕はまだその辺が疎くて・・・これからも勉強をさせてください」
「ほとんどがクリスお姉様の受け売りですけど・・・」
そんな会話をしていたらミレーユが遮ってくる。
「ムリエル王女、油断するなと言った貴方がそんなんでは示しがつきません。もっと緊張感を持ってください。ライアット皇子、向こうの部隊が少し苦戦しているので応援をお願いします。こっちです、付いてきてください」
ミレーユはライアット皇子に近付くと急に不安定になる。これが恋なのでしょうか?
それにしても、ミレーユ、貴方はロトリア王国の宮廷魔導士団の所属なのに・・・これは女子会で吊るし上げなければ。
そんなことを思いながら進軍し、無事に旧転職神殿にたどり着いた。すでに旧転職神殿はクリスお姉様の手によって、活動拠点になっていた。
「クリスお姉様、それにサマリスお兄様、本当にご苦労様でした。ゆっくりとお休みください。食事も準備してきていますよ」
「エル、そうも言ってられないのよね。この荒れ放題の状態は流石に拙いわ。ここをどうするか、考えないとね」
それは私も思う。
ここをどう統治し、どのように復興させていくか。
また、もめそうな予感しかない。
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