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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第四章 転職神殿はじめました

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57 転職神殿をぶっ潰す 6

私は会長室で報告書を読んでいる。隣にはアイリスが居て、今後の対策を検討していた。


バーバリアにやって来た神官騎士団員50名の内、40名近くは退団する予定だそうだ。神官騎士団の弱体化工作を進めていたが、ここまで上手くいくとは思わなかった。ほとんどはヤマダ商会の系列かファースト・ファンタジー株式会社への就職予定だ。


「凄く上手くいきましたね。それに団長さんもケルビン先生に心酔して弟子入りするようですし、分隊長は結婚相手を見付けたそうで、治療院を開く予定みたいですね」


「優秀な治療術士が確保できてよかったわ。建築現場や訓練所では、どんなに気を付けていても怪我人は出るからね」


私は更に報告書を読む。

神官騎士団にバーバリアやムリエリアを好きになってもらおうとアルバイトを斡旋した。町の人と仲良くなれば手荒なことはしないだろうという考えからだ。ついでに情報を入手できればいいかと思っていたのだが、思わぬ効果を生み出した。団員達はそれぞれ天職を見付け、勝手に弟子入りしたり、結婚相手を見付けたりしていた。

そんな中、私は見覚えのある名前を見付ける。


「レナードがいる・・・えっ・・・ケルビンに弟子入り?」


「レナードさんですか?彼が何か?」


私はアイリスに説明する。

レナードはネームドキャラで、勇者パーティーに入れることができる。マリシア神聖国を訪れた際に牢屋の守衛をしていた彼が「勇者パーティーに入れてください」と言ってくるのだ。彼はリンダ以上に特徴のないキャラだった。本当に可もなく不可もなく、彼が入ったからといって特別なイベントが起こるわけではないし、面白いことを言うわけでもない。リンダはクリスとよく喧嘩をするという役割があったが、レナードはそれすらない。唯一、印象に残るセリフはこんな感じだった。


「どうしてこうなったんでしょうか?運命のいたずらですかね・・・上司に勇者様が来たらとりあえず、『勇者パーティーに入れてください』って言えって言われました。マリシア神聖国としても勇者に協力する姿勢を見せたかったらしくて。勇者様も空気を読んで断ってくれたらよかったのに」


レナードは印象に残らない仲間ランキングで常に上位に位置している。FFQ4に限って言えば、冒険者ギルドで募集を掛けたキャラ以下だ。特徴もない。クリス程害があるわけでないから、加入したらほとんどが馬車で待機だった。そして、不遇職を歴任する。特に何もしないので、ネタジョブの実験要員となることが多かった。救いと言えば、クリスと違ってレベルアップとともにステータスは上昇していく、レベルがカンストしてしまえば、弱くはないからね。


「そうなんですね。レナードさんは、いつも嫌そうに訓練してましたから。私が言うのもなんですが、彼も運命に導かれている感じですね。本人が拒否しても周囲がそうさせない。

勇者の元に集うことが宿命づけられている感じですね」


やはり、システムの修正力が働いているのだろう。運命に翻弄されている者がここにもいた。


そんなとき、会長室にライアットが訪ねて来た。

軽く雑談から入る。話題はレナードのことだった。


「レナードさんは、嫌々訓練に出ている感じですが、不思議と休んだことはないんです。多分、強くなりたいから我慢して出て来てるんだと思うんですよ。みんなそれが分かっているから、積極的に模擬戦をしてあげてるんですよ」


多分、本人にすれば本当に迷惑だろう。


「雑談はこれくらいにして、パーヨックをのらりくらり躱すのもそろそろ限界ですね」


「そうね。そろそろやろうかしら・・・」


パーヨックと神官騎士団は、町の外で2週間、町に入ってから2週間待たせている。そして、2週間が経過したときに「デブラス達の容疑が分かる資料を持ってきてほしい。それを見て判断する」と回答した。パーヨックが資料を持ってくるまでに1週間が経過した。

1週間後、「こちらで検討したが、判断がつかないので、再び本国に確認する」と回答して、2週間待たせている。

パーヨック以外は滞在には好意的だ。だってみんな楽しそうに仕事をしているからね。


「結論を出すのに時間がかかっていると引き延ばしても、後1週間が限度ですね」


「じゃあ、1週間延ばすと通知して、1週間後にやりましょうか?」


「分かりました」



★★★


私は別室でライアットとパーヨックの会談を盗み聞きする。

開口一番パーヨックが言う。


「そろそろ、決断していただかなければ、こちらも滞在費がかかって仕方ありません。早急な回答を求めます」


「本国とも検討した結果、デブラスが窃盗犯と断定することはできない。状況証拠しかないからな。なので、結論としては、貴殿に引き渡さないということになる」


「そ、そんな・・・せめて事情聴取だけでもさせてください」


「本国からこの件でこれ以上何もするなと言われている。それはそうだろう。拷問して無理やり「ランカシア帝国の指示でやりました」とか言わされたら、マリシア神聖国に我が帝国が屈することになる。よって、マリシア神聖国の要請を受けて、真摯に捜査したがそういった事実はなかったということだ」


ライアットはなかなか演技が上手くなった。連日バーバラに指導されていることはある。


「じゃあ、我々は何のために長期滞在していたんですか?」


「それはそちらの勝手だろう。こちらは時間を掛けて、綿密に捜査したのだ」


ライアットは部屋を出て行った。残ったのは打ちひしがれたパーヨックだけだった。


でも彼には更に過酷な運命が待っているのだけど。


★★★


~パーヨック視点~


くそ!!青二才が舐め腐りやがって!!

自分では何一つ決められないくせに、尊大な態度を取りおってから、腹が立つ!!


仕方ない。もうこれは私の手には負えない。本国を通じて、抗議してもらおう。それでどうにかなるわけではないが、他に手はない。少し私の評価が下がったところで、デブラスが悪いことにしてしまえばいいのだ。

私が神殿長として赴任する前にすべて計画されていたことにしよう。そうすれば、多少評価は上がるかもしれない。


「何!!そんなに騎士団を辞めるだと?団長お前もか?」


「はい、ただ、私は団長としての責がありますので、一端転職神殿に帰還し、現地で副団長に引継ぎを終えてからにします」


何とここに連れて来た50名中の42名が退職希望だった。本国から連れて来た神官騎士団は100名、そのうち非戦闘員が20名なので、実質戦力としてカウントできるのは30名しか残っていない。これも本国にどう報告しようか悩む案件だ。


転職神殿に帰還すると驚いた。全く転職希望者がいないのだ。


「これは一体・・・・」


私が立ち尽くしていると受付の巫女が言う。


「転職者も商人もこんな状況なので、デザイ神官は酒浸りで仕事にならず、アレックス神官が出張転職をして資金を得ております」


そんなに状況が悪化しているのか・・・


巫女と話しているとアレックス神官が帰還した。アレックスは30代の精悍な顔つきをした男で、がっしりした体格で神官騎士といっても通用するくらいだ。


「ご苦労だったなアレックス神官」


「お帰りなさい神殿長。私から少し話したいことが・・・やはり獣人達にも転職を・・・」


言いかけたアレックス神官の言葉を遮る。


「何を馬鹿なことを!!おまえまさか・・・「転職の水晶玉」を見せてみろ」


アレックス神官から「転職の水晶玉」をひったくるとすぐに履歴を確認した。かなりの数の獣人を転職させているようだった。


「どんな状況でも獣人を転職させるなど、あってはならんのだ。こんなことは止めろ、止めなければ、ここを辞めてもらう」


「分かりました。もう私も限界です。思い出のある職場だったので、ここまで頑張ってきたのですが・・・私はバーバリアで働くことにします。それでは失礼します」


「お、おい、ちょっと待て!!」


私の静止も聞かず、アレックス神官は立ち去ってしまった。更に追い打ちをかけるようにデザイ神官は公金を横領していた事実が発覚して、解雇した。


もうこの神殿で転職業務を行えるのは私しかいなくなってしまった。


それに不正蓄財していた現金と宝石類が根こそぎ盗まれていた。こちらは入手経路を明かせないので、大っぴらに捜査もできない。


もう私に残された手は少ない。だが、せめて一矢報いてやる。

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