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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第四章 転職神殿はじめました

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55 幕間 ある神官騎士の話 1

~神官騎士レナード視点~


「いやあ、今回の遠征は本当に大当たりだな。これなら退職まで遠征でもいいくらいだ」

「そうだな、前回の魔物討伐は酷かったな。あれは地獄だったし」

「ああ、それに比べたら天国だ。飯も旨いし、楽しいなあ」


俺は今、バーバリアという町に神官騎士団の任務で滞在している。今いるのは、バーバリアの商人に斡旋された宿だが、本当に質がいい。4人部屋だが、ベッドもしっかりしていて、朝食は無料だし、昼食も夕食も宿泊者割引で食べられるのだ。


「ところで、俺達はなんでここにいるんだっけ?」

「おいおい、しっかりしろよ。任務で来たんだろ」

「結局何の任務なんだ?なんか犯罪者を捕まえに行くとは聞いていたが・・・」


そうだ。ここに来てから全く仕事をしていないのだ。まず、町の外で2週間程野営した。そのときは、また、野営かよ!!と腹が立ったが、野営地に用意してくれたテントは快適だったし、俺達の為に商人達が屋台を出してくれたし、監視付きだけど町での観光や買い物もできた。

2週間が経ち、町に入るとすぐに宿を宛がわれて、今に至る。何か神殿長が交渉していたようだが、末端の俺達には何の話をしているのか全く分からなかった。

そこで、出された命令は指示があるまで待機とのことだった。


「何でも神殿長や団長達は最高級ホテルに泊まってるらしいぞ。腹が立つよな」

「まあ、いいんじゃないか、ここに泊まられても困るし」

「そうだな。ゆっくりできるし」

「俺達にはラーメンやカレーで十分だよ。作法も分からんしな」


楽しい遠征だが、困ったことがある。町に入って1週間が経った頃に滞在費を減らされた。これでは、1日2食、下手したら1食しか食べられないし、気軽にラーメンも食べられない。任務で来ているのだからそれくらいは我慢しろよと思うかもしれないが、ここまでの生活で、俺達は我慢できない体になっていた。


そんなとき、仲良くなった宿のスタッフさんから提案された。


「だったら日雇いの仕事をすればいいじゃないですか。バーバリアも対岸のムリエリアも仕事はいくらでもありますよ。単純な肉体労働から魔物討伐まで、選り取り見取りです。騎士団の方ですから体は丈夫でしょうしね。

それに宿としても、どんどん稼いでどんどん使ってもらいたいですから」


「商売上手だな。ありがとう。ちょっと考えてみるよ」


この話を同部屋の者にしたら、「すぐにやろう」ということになった。初日は建築現場で働いたし、魔物討伐や薬草採取、魔物の解体なんかもやった。

本当に働いてよかったと思う。給料は日雇いにしてはかなり高い。好きなだけ飲み食いしても多少は手元に残る。それに働いた後のビールは最高に旨い。


そんな俺達だが、一緒のホテルに泊まっている分隊長に日雇いの仕事をしていることがバレてしまった。羽振りのいい俺達に嫉妬して告げ口した者がいたらしい。分隊長に呼び出される。

隠し立てしても仕方ないので、正直にことの詳細を話した。


「つまり、お前達は任務として情報収集や訓練を行っていたということでいいんだな?」


「はい?」


「ところで、どの仕事がおすすめなんだ?」


なんのことはない。分隊長もお金に困っていたらしい。それに夜のお店に入り浸っているようだった。


「なるほど、俺は治療魔法が得意だから治療院で仕事をしよう。かなり日当がいいから、これでうさ耳のピーちゃんに好きなものを買ってあげられる」


俺達が分隊長をゴミを見るような目で見ているとこう言った。


「違うぞ!!神官騎士として、困っている人の役に立とうとするのは当たり前じゃないか。俺はお前達を誇りに思っているのだ。他の団員にも訓練や情報収集に励むように指示しておこう」


そんな、取ってつけたような理由を誰が信じるんだよ!!

とツッコミを入れることはしなかった。分隊長がバイトを認めてくれたのだから。


それから、末端の団員は全員バイトをするようになった。

結果として、分隊長の判断は正しかった。更に1週間経過したらホテルの宿泊費以外は支給されなくなったのだ。もしバイトしなければ、無料の朝食しか食べられなくなる。

このことを受けて、分隊長は団長に団員がバイトしている現状を報告し、黙認してくれることになったそうだ。普段は頼りない分隊長だけど、女が絡むと凄く心強くなる。



★★★


そこからまた1週間が経過したが、俺達は同じような生活をしていた。このころになると自分が神官騎士だということを忘れかけてしまう。最後に制服を着たのはいつだっただろうか?

そんなとき分隊長が声を掛けてきた。


「ちょっと遠出をして、ロトリア王国の王都アリレシアに観光に行かないか?お前達の費用は俺が出してやるからさ」


何か裏がありそうなので、事情を聞く。

また、女絡みだった。要はうさ耳ピーちゃんにアリレシアでプロポーズしたいから、その下見に付いてきて、意見を聞かせてほしいとのことだった。聞いたところによると対岸のムリエリアから早馬で半日もかからないらしい。


「分隊長が費用を持ってくれるなら、是非お願いします」


意外に楽しかった。高級レストランで食事を奢ってもらった。分隊長が言うには、騎士団の給料の倍くらい稼いでいるそうだ。どうりで、羽振りがいいはずだ。

その後、勇者ダグラスのゆかりのスポットを巡るのも面白かった。


「ここでプロポーズしようと思うんだけど、どう思う?」


「止めたほうがいいんじゃないでしょうか?お墓がありますしね」


「「希望の丘」て言うくらいだから、いいと思ったんだけどな。よし、次に行こう」


みんな、それぞれ楽しんでいるようだった。こんな日がいつまでも続けばいいのに・・・・。

しかし、そんな日は長く続かなかった。


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