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54 転職神殿をぶっ潰す 5

「とうとう来ましたね。予想通りというか・・・」


「まあ、それを見越した上での対策だったからね」


50名規模の神官騎士が来て、城壁の前で「デブラスとその一味を拘束するから、引き渡せ」と喚いている。

神殿長のパーヨックなる人物も来ていた。


神殿長自ら来るなんて、アンタら暇なのか?

多分、暇なんだろう。そうしたのは私達だけど。


「バーバラ、手筈通りにお願い」


「分かった」


拡声の魔道具を手にしたバーバラが話始める。


わらわは、「氷結の魔女」サンクランド魔法国筆頭魔導士のバーバラじゃ!!ここはわらわの領地であるとともにサンクランド魔法国の領土じゃ!!お主らはサンクランド魔法国に侵攻するつもりか?」


これには神殿長のパーヨックが狼狽えている。

えっ、知らなかったの?情報収集能力の無さに呆れてしまう。

しばらくして、デブラスや転職神殿を辞めてこちらで働いているスタッフに逮捕状が出ていることを伝えてきて、引き渡しを要求していた。


「流石にこれはわらわだけでは判断できん。本国に伺いを立てるから1週間程待ってくれ!!」


これも予め計画していたことだ。サンクランド魔法国からは「お好きにどうぞ」と言われている。なぜそのようなことをするかというと、嫌がらせと資金の浪費、そして、神官騎士団の弱体化工作をするためだ。


「1週間そこでじっとしてもらうのは、可愛そうじゃから、必要最低限の町への立ち入りは認めよう」


ここからは商売の時間だ。神官騎士団のために屋台を設置したり、テントも貸し出した。もちろん正規の値段でだが。

さらに3日目からは5人ずつ3組のみ、町で買い物をしてもらうことを承諾した。パーヨックはどんどんと資金が減っていくことに青ざめていたが、神官騎士団の団員は楽しそうにしていた。町の住民と打ち解けた騎士団員は言う。


「いい仕事だよ。何か犯罪者を逮捕しに行くから来いと言われて来たけど、やってることは屋台で飲み食いして、町を観光するだけだからな」

「そうだな、1週間と言わず、2週間でも3週間でもこちらは構わんがな」


「気に入ってもらってよかったです。もし、1週間を過ぎてもいきなり攻めてくるようなことはしないでくださいね」


「そんな事は俺達がさせないから心配するな」



結局、2週間後に町への立ち入りを許可した。

バーバラとミレーユ、従者達がパーヨックと神官騎士団をバーバリア転職神殿まで案内した。


わらわが案内できるのはここまでじゃ。後は神殿の者と話をしてくれ」


「どういうことでしょうか?早く引き渡しを・・・・」


「お主分かっておらんのか?」


バーバラはパーヨックに説明する。バーバリア転職神殿はランカシア聖教会の支部としての位置付けで、土地や建物、周辺施設は独立国扱いだと伝える。


「そ、そんな・・・だったら最初から・・・」


「それができたら苦労はせんじゃろ。本国に聞いたところ、『絶対にどちらの味方もするな』と釘を刺されたのじゃ。あくまでわらわはお主らの滞在を許可しただけじゃ。現在の国際情勢を考えればわかるはずじゃ。わらわやお主達のせいで戦争にでもなったらかなわんからな」


一応、表向きはランカシア帝国、マリシア神聖国、サンクランド魔法国の三大国は仲が悪いことになっている。ランカシア帝国とサンクランド魔法国がロトリア王国と急接近し、裏でつながっていることは、情報収集能力のないパーヨックには分からないだろうけど。


「それは十分承知しております」


「ならば、神殿長に顔つなぎだけはしてやろう。それとあくまでわらわは滞在を許可しただけじゃからな。金を払えば宿泊所や食堂を利用することは止めたりはせん。こちらが資金提供をしたりすることはないからそのつもりでな。確認するが、わらわはここに()()()()()()じゃからな」


バーバラは神殿の門番に事情を説明する。すぐに神殿長のライアットが出て来た。こちらも事前に打ち合わせ済みだ。


「我はランカシア帝国第三皇子ライアット・ランカシアである。皇帝陛下より転職神殿長の任を預かっておる。バーバラ殿より話は聞いた。用件を申せ」


ライアットは尊大に言った。緊張しているようだが、威厳があってよかったと思う。昨日、バーバラやサマリス王子から指導されていたのだが、そのことを思い出すと笑いが込み上げてくる。最初は緊張で何を言っているのか分からないくらいだったのだから。

パーヨックはバーバラにしたように一から説明を始めた。


「なるほど、用件は理解した。本国とランカシア聖教会本部に伺いを立てるので2週間程待ってもらいたい」


「そんな、デブラス達は犯罪者なんですよ。それを2週間も待てだなんて、あまりにも・・・・」


「やかましいわ!!バーバラ殿の命令には大人しく2週間待ったのに、こちらにはすぐに引き渡せとは、お前達はランカシア帝国をサンクランド魔法国よりも下に見ているのか?それはマリシア神聖国の総意としてとらえてもいいんだな?」


「い、いえ、それは・・・待ちます。失礼しました」


「結果が出れば、使者を出す。滞在先を教えよ」


私はすかさずマルチナに合図をする。

余談だが、マルチナの販売成績が良すぎるので営業販売部門の責任者に抜擢している。

マルチナはすぐにパーヨックに声を掛けた。


「宿をお探しですか?お話を聞くかぎり、高位の聖職者様とお見受けします。そのクラスの方ですと、これ位のグレードのホテルでないと示しがつかないといいますか・・・」


「何、こんなにもするのか・・・」


「ここだけの話ですが、騎士団の一般団員の方には別の格安の宿をご紹介いたします。格安と言ってもそこらへんの宿よりはかなりいいですし、格安で食事も提供しますよ」


「よし、仕方がない。それで頼む」


「ありがとうございます。早速ご案内を!!」


流石、マルチナだ。あっという間に大口客をゲットしていた。パーヨックはというと滞在先をライアットに伝えている。


「そうか、あの宿は我が父も絶賛していたぞ。そこら辺の安宿に泊まるようであれば、即刻帰らせていたところだがな」


ライアットの一言で、パーヨックはバーバリアに滞在する限りは、最高級ホテル以外で泊ることはできなくなってしまった。破産への道まっしぐらだ。

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