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5 正義の味方クリス 1

孤児院でライラと面会し、帳簿や申請書類等を確認して分かった。組織的に補助金や寄付金を抜き取られているのだ。これはかなり大がかりな組織が関与しているに違いない。まず、ここまで大っぴらに補助金をかすめ取るなんて、役人が関与していると考えて間違いないだろう。それに物品の仕入れもすべて同じ業者から行っており、かなり割高だ。当然この孤児院の関係者にキックバックを受け取っている輩がいるはずだ。


「ところで、会計の担当者は誰なの?」


「元役人で好意で手伝ってもらってるバッドさんだよ。バッドさんのお陰で苦しいながらもなんとかやっていけてるんだけどね」


元役人?いよいよ怪しいではないか。


このとき、私はある案を思いついた。ヒントとなったのは、「クリスを救う会」のスレッドの「奴隷か収監をハッピーエンドと思うことにしました」との書き込みだ。


ヨシ!!この計画が成功すれば一石二鳥かもしれない。



★★★


ということで、まず私がやったのはレベリングだ。ロトリア王国で一番強い魔物が出現するダンジョン「始まりの洞窟」に籠り、魔物を倒しまくった。そこでの頑張りで何とかレベルが9から11に上がったのだ。特に新たなスキルや魔法を覚えなかったが、ステータスが上がったので、強くなった気がした。

そして、新たなスキル獲得のため、ルイーザの旦那さんであるラクーンさんを訪ねた。


「ルイーザから言われてたけど、本当に雰囲気が変わったな。素直に頭を下げて、スキルをの習得を頼むなんて・・・。それに教えてほしいスキルが「隠密」と「潜伏」、それに「解錠」だって?一体どういう風の吹き回しだよ?」


「いやあ・・・勇者パーティーに入ったらそっち方面でもパーティーを支えようかと思いまして・・・」


「パーティーを組んでいたときは『コソコソとした戦い方は私のプライドが許しません。正面突破で殲滅ですわ』とか言ってたのに、どの口が言ってんだよ。まあいいか、俺も勇者パーティーに推薦した立場だから教えてやるよ」


スキルの習得自体は3日でできた。ゲームではレベルアップでスキルポイントを割り振るシステムだったのだが、この世界ではスキル習得者に習うことでもスキルを習得できるようだ。実際に使ってみると思った以上に使い勝手がいい。これなら計画を達成できるだろう。念のためギルドカードを確認してみる。



名前  クリスティーナ・ロレーヌ

レベル 11

ジョブ レンジャー(上級職)

HP 80 MP 50

力 32 賢さ 32 素早さ 42 身の守り 22 

スキル 「敵感知」「罠解除」「採取」「初級魔法」「回復魔法小」「鞭使い」「両手攻撃」

「隠密」「潜伏」「解錠」



レベルアップによるステータスも上昇しているし、「隠密」「潜伏」「解錠」のスキルも習得されている。ただ、ライラに中級魔法を習ったのだが、こちらは習得できなかった。多分ジョブの「レンジャー」が影響しているのだと思う。「レンジャー」は斥候職の上級職で、特殊部隊の隊員に多いジョブで、一言で言えば器用貧乏のジョブだ。

ある程度一人でなんでもできるのだが、魔法や戦闘のスペシャリストとして活躍することはまずない。レベルの低い勇者を序盤で引っ張るには最適のジョブだが。


なぜクリスが「レンジャー」を選んだかというと斥候職のラクーンさんの影響もあったが、一番はすぐに上級職になれるからだ。駆け出しのクリスでもなれる上級職は「レンジャー」しかなかったみたいで、クリスの性格上、「私は貴方たちとは違って上級職なのよ」とイキりたかったのだろう。

因みに転職には転職神殿で転職させてもらうか、何年かに一度出張で転職神殿の神官が町にやって来て転職させてもらえるらしい。これはゲームでは設定されてないことだった。


まあ、話は逸れたが、必要なスキルは手に入れたので、私は計画を実行することにした。




★★★


私は孤児院の会計担当のバッドを尾行していた。

バッドは50過ぎのうだつの上がらなさそうな小太りの男だ。当然、私の尾行に気付くはずもない。


しばらく尾行を続けているとバッドは貴族街に入っていき、1件の高級レストランに入っていった。私はここで「隠密」と「潜伏」スキルをフル活用して、バッドが入ったレストランの個室に潜入することに成功した。ドアの前で聞き耳を立てる。


「これが今月分です。どうかお納めを」

「バッドよ、いつも悪いなあ」

「いえいえ、これも総務大臣たるアクラス様の力添えがあってこそですよ」


大臣だって・・・。ある程度力のある役人がバックにいることは想像していたが大臣クラスが関与しているとは思わなかった。


「それはそうと、あの計画は進んでいるのか?」

「ああ、獣人の孤児達を奴隷として他国に売り払う計画ですね。もちろんですよ。アクラス様にご紹介いただいたドーラ一家がよく働いてくれています。名ばかりの院長のライラはまだ気付いてませんしね」


ドーラ一家だって?

こちらはゲームにも登場する犯罪者集団だ。誘拐事件や王家の秘宝の窃盗事件を起こしていた。


「これは機密事項だが、半年後の勇者発表に合わせて、国の人事も一新する予定なのだ。今回の人事で宰相になれれば、より多くの利益が転がり込んでくる。今までばら撒いた金を回収するチャンスだ。だから、そろそろ裏稼業は一度清算しておこう。疑惑まみれの宰相では格好がつかんからな。ワハハハハ」


ここでバッドが何かに気付いたような表情になる。


「そういえば、最近ライラはしきりに帳簿や書類を見るようになりました。もしかしたら、何か気付いたのかもしれません」

「ならば、早急に始末してしまえ」

「分かりました。でも殺すのは惜しいですね。足は不自由ですが、なかなかいい女なので・・・」

「ならば殺す前に味見でもしてみるか?」


聞くに堪えない会話だ。

しばらく細かい打ち合わせをし、お決まりのセリフを吐いた後に会はお開きになった。


「バッドもなかなかの悪よのう?」

「いえいえ、未来の宰相閣下程ではございませんよ」



その後、バッドと大臣は馬車に乗り込み貧民街に向かった。こちらも尾行する。

着いた先はドーラ一家のアジトだった。なぜ一発で、ここがドーラ一家のアジトだと分かったかというとゲームの知識があったからだ。選択によっては、攫われた女性を助けるためにドーラ一家のアジトに乗り込むイベントが発生する。


アジトに潜入するとドーラを交えて、悪巧みをしている。ドーラは褐色の大柄な女性で、設定上は魔族と人間のハーフだ。そのことは隠しているのだが、ゲームの終盤で魔族と通じていたことが明らかになる。

度々登場するドーラだが、捕まっても何度も脱獄を繰り返し、主人公の邪魔ばかりする。小学生のときに一緒にプレイしていた兄と「この世界の警察や刑務所はどんな管理をしてるんだ」と話していたのを思い出す。


それは置いておいて、私は意を決してアジトに突入することにした。

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